漢方の基礎知識
漢方診療の適応
- 複数の病態が混在し、多剤服用を余儀なくされている場合
- 副作用などで西洋医学の治療方法が適応困難な場合
- 原因の分からない疾患や病態が明らかでない場合
- 原因の病態が分かっていても治療方法が確立していない場合
具体的には次の疾患に対して漢方薬単独で効果のある場合や、西洋医学と併用することにより相乗効果や補完的効果が期待されます。
- 頭痛、倦怠感、冷え性、月経困難症 etc…
- 関節リウマチ、強皮症、皮膚筋炎、リウマチ性多発筋痛症など
- 慢性胃腸炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病など
- 慢性肝炎、肝硬変、慢性膵炎など
- 糖尿病とその合併症、甲状腺機能亢進症、肥満など
- 慢性腎炎、ネフローゼ症候群、慢性腎不全など
- 気管支喘息、慢性気管支炎など
- 心臓神経症、一部の不整脈など
- 脳血管障害後遺症、末梢神経障害、めまいなど
- 神経症、てんかん、自律神経失調症など
- アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、慢性湿疹、乾癬、脱毛など
- 慢性膀胱炎、排尿障害、失禁など
- 更年期障害、不妊症など
- 変形性関節症、肩こり、こむらがえり、腰痛、坐骨神経痛など
- アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、メニエール氏病など
- 白内障、一部の緑内障など
- 風邪、微熱、食欲不振、虚弱体質など
ただし、現代医学的治療が優先されるべき時は専門医療機関に紹介する場合もあります。
漢方的診察法・四診
漢方では、治療方針を決定する4つの診察方法 「望診(ぼうしん)・聞診(ぶんしん)・問診(もんしん)・切診(せっしん)」 によって、全身のバランスを判断し、治療します。診察室に入室したときから診察は始まっています。
- 望診(ぼうしん)
- 視診、つまり肉眼で見る診察法で、歩き方や顏色、皮膚、爪、頭髪、舌など、全てが診断の参考となります。なるべく化粧をせずに受診してください。また、舌につきましては、舌の色、厚み、舌質など、漢方的な情報を得られる部分が多いので、舌の苔を歯ブラシで落としたりせず、自然のままを診せてください。
- 問診(もんしん)
- 自覚症状は大変重要です。問題の病気と関係ないと思われることでも、全身のバランス状態を知る上で大切なことがあります。もれなくお聞きするために、初診の際、健康調査表を1冊お渡しして記入していただきます。主な内容は、寒(冷え)、熱、汗、食欲、便通、排尿、頭痛、肩こり、腰痛などです。現在の症状やこれまでにかかられた病気などにつきましては、診療の際に詳しくお聞きいたします。
- 聞診(ぶんしん)
- 話し方や、声の大小、腹鳴、呼吸状態などを聴覚で、口臭、体臭などを嗅覚で診断します。
※受診時は、コロンや香水は付けないようご注意ください。 - 切診(せっしん)
- 医師が直接患者さんの身体に触れて診察する方法のことで、「脈診」と「腹診」があります。
- 脈診…脈の速さや強さ、リズムなどで診断します。これらは患者さんの状態により微妙に変化します。急性感染症(風邪など)の場合は脈だけで診断することもあります。
- 腹診…漢方では、お腹は全身のバランス状態をよく反映すると考えます。そこで、病気によらず腹部の緊張度、発汗、皮膚の温度、しこりがあるかないか、お腹を叩いてみてチャポチャポいわないかなどを観察します。そのため、着脱しやすい服装でお越しください(女性の方はボディースーツやワンピースなどは避けてください)。診察の際は、おへその周りが出るようにしてベッドに横になり、両手・両足を伸ばし、全身の力を抜いてください。
- ※診察直前の食事はご遠慮ください。
- ※脚の診察があるため、膝までまくれるようなズボンをお履きください