当科について

部長よりご挨拶

田原 英一

 高齢化が進む一方、西洋医学が発達して新薬などが開発されたにもかかわらず、それでも治らない病気や治療結果に十分な満足の得られないことも多く経験するようになりました。その一つの解決法として、近年ではエキス製剤を主とする漢方治療が増えており、さまざまな診療の場面で漢方薬に出会う機会が増えました。ただ、多くの場面では漢方医学の立場で用いられているというより西洋医学的な考えで用いられることが多いようです。

 飯塚病院 漢方診療科は平成4年4月に診療を開始し、保険診療内で本来の漢方薬、すなわち煎じ薬などを用いて、外来診療から入院診療まで行っている日本でも稀な診療部門です。飯塚病院は元々、総合病院ですので必要に応じて他科と協力し、検査や西洋医学的な治療なども併用して、東西の医療を融和させた診療を行って参りました。
 また、これまでに経験した漢方の有効性・有用性を全国に発信し、医学部、薬学部、看護学部などで教育、実習を担当するとともに、研修医や他科の医師への教育も行い、さらに多くの漢方専門医、指導医の育成にも力を注いでいます。日本東洋医学会の教育病院に指定され、指導医を有する数でも全国で5本の指に入る規模になりました。

 西洋医学はどちらかというと分析的で「悪いものを取り去る」医療と感じられる一方、漢方医学は病的状態の人のバランスを整えて健康な方にシフトさせる、自然治癒力を最大限に発揮させる医療と考えています。そのことは心の問題も身体の問題も分けて考えず、心身一如あるいは全人的な医療を体現していると思います。もちろん漢方が万能であるとは申しませんが、我々は両者の長所を生かしつつ、東西が融和した診療を実践し、より満足度の高い医療を目指しています。

2017年12月18日
漢方診療科 部長 田原 英一