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漢方の基礎知識

 ここでは、漢方に関する基礎知識や概念などをご紹介します。

目次

漢方診療の適応

  1. 複数の病態が混在し、多剤服用を余儀なくされている場合
  2. 副作用などで西洋医学の治療方法が適応困難な場合
  3. 原因の分からない疾患や病態が明らかでない場合
  4. 原因の病態が分かっていても治療方法が確立していない場合

 具体的には次の疾患に対して漢方薬単独で効果のある場合や、西洋医学と併用することにより相乗効果や補完的効果が期待されます。

漢方的診察法・四診

 漢方では、治療方針を決定する4つの診察方法 「望診(ぼうしん)・聞診(ぶんしん)・問診(もんしん)・切診(せっしん)」 によって、全身のバランスを判断し、治療します。診察室に入室したときから診察は始まっています。

漢方薬について

 漢方薬は、大きく2種類に分けられます。
 一つ目は「煎じ薬」といい、生薬を水から煮出したものです(写真左)。
 二つ目は「エキス剤」といい、煮出した液をインスタントコーヒーのように乾燥させた粉末です。煎じ薬より効果はやや劣りますが、手軽に飲むことができ、携帯にも便利です(写真右)。
 それぞれ保存方法が異なり、エキス剤はそのまま室温で保管して構いませんが、煎じ薬は煎じあがったら、できるだけ速やかに滓(かす)を濾(こ)して取り分けてください。長く放置すると有効成分が滓に吸着されてしまいます。また、すぐに飲まない分は、冷蔵庫で保管して2日以内に飲んでください。また、煎じる前の生薬は、ビニール袋に入れて冷蔵庫で保管してください。

漢方薬

陰証・陽証(いんしょう・ようしょう)…身体のバランス

 陰陽という言葉は、私たちの日常生活のあらゆるところで使われています。例えば「陽気な性格」とか「陰気な場所」など言いますよね。活動的で熱性・積極性のものを「陽」、非活動的で寒性・消極性のものを「陰」として捉えています。漢方において、身体が健康な状態にあるということは、身体の内部で陰陽のバランスがうまく保たれ、自然の変化に伴って、そのバランスが最適の状態に調節されていることです。漢方治療は、そのバランスの崩れを把握し、回復させることが基本です。

  • 陰証
  • 陽証

虚実(きょじつ)…医学的病態の充満度を測るものさし

 身体に病的因子が加わった際の生体反応パターンを把握するものさしとして、漢方では「虚実(きょじつ)」を用います。「虚実」は、漢方医学的病態の充実度をさしています。

「虚」 …
病気に対する力が低下して、身体が虚弱な反応(脈や腹壁の緊張が弱い)をします。
一般的には体力のない人がこの状態になりやすく、補う(元気をつける、温めるなど)ことが治療になります。
「実」 …
身体が病気に対して力強く反応し、患部に強い痛みや腫れなどの充実した反応を表します。
一般的に体力のある人がこの状態になりやすく、瀉する(しゃする:下痢をさせる、冷ますなど)ことが治療になります。

気・血・水…不調の原因をはかるものさし

 漢方では、身体を巡る要素を「気(き)」、「血(けつ)」、「水(すい)」と言います。これら3つの要素が体内をうまく巡ることによって健康が維持されていると言われています。

気(き)…生命活動を支えるエネルギー
気
 「気」は、目に見えない循環要素で生命活動を支えるエネルギーと考えています。
その「気」が、全身を十分に巡っていれば、まず健康と言って良いでしょう。
血(けつ)…全身を巡って栄養を与える
血
 漢方医学で病気を捉えると、熱性であったり寒性であったり、充実した反応だったり、あるいは弱々しい反応であったりしますが、漢方医は身体が呈するさまざまな反応形式を重要視します。漢方で身体を巡る要素のうち目に見えるものに「血(けつ)」があります。血は赤色の液体、概ね現代医学でいう「血液」のことです。
水(すい)…水分代謝や免疫システムに関わる体液
水
 ヒトの身体の6、7割は水分から構成されていると言われています。水分があるべきところに必要量存在していれば良いのですが、水田に囲まれ、梅雨や台風などで多湿の日本では、体内の水の偏在が生じやすいのです。

六経分類…病期の分類

 漢方では、病の進行を6つの病期に分類して考えます。

太陽病(たいようびょう)   …病気の初期段階 陽明病(ようめいびょう)…全身が熱で満ちた状態、少陽病(しょうようびょう)…病気の停滞 太陰病(たいいんびょう)…症状が長引いて冷えた状態、少陰病(しょういんびょう)…全身に倦怠感・冷えが生じた状態、厥陰病(けっちんびょう)…冷えと熱感のWパンチで危険な状態