和漢食とは
体を冷やさないように工夫
現代はクーラーや冷蔵庫などの影響で冷えて体調を崩している人が多いようです。運動不足も冷えの原因になります。また、病気や加齢により、体力が落ちて体温を産生する力が衰え、体が冷えやすくなってきます。逆に、冷えは体の抵抗力を低下させ、万病のもととなるとも言えます。この冷えについて食事の面から考えてみましょう。
食べ物は摂取することで身体を冷やす『陰性食品』と、身体を温める『陽性食品』に分けられます。体を冷やさないためには陰性食品を避け陽性食品をとるように心がけましょう。
陰性食品
- 生もの(生野菜、果物、刺身など)
- 冷たいもの(牛乳、ジュース類、アイスクリーム、氷菓子、氷水など)
- 砂糖(ケーキ、あんこ、飴玉など)
- 酢(酢の物、健康食品としての酢など)
そのほか一般に陰性に傾きやすい食品として、温暖な土地や気候の時に採れるもの、早く育つもの、地面の上に育つもの、大きくてやわらかく水分の多いもの、などがあげられています。
例えば、ジュースについて考えてみましょう。ジュースは冷たく、果物や野菜などの生ものが原料で、砂糖を含みます。陰性食品の要素が3つも含まれています。
陽性食品
- 火を通した食べ物(煮物)
- 天日に干したもの(干物、昆布、干ししいたけ、きくらげ、かんぴょう)
- 漬物(古漬)
- 温かいもの
そのほか一般に陽性食品と考えられる食品として、寒冷な土地や気候の時に採れるもの、ゆっくり育つもの、根菜類(玉葱、大根、人参、牛蒡)、小さくて硬くて水分の少ないものなどがあげられます。長時間煮る、乾燥させる、もしくは長く漬け込むと陰性食品も陽性食品に変化します。 肉類は陽性食品ですが、次の2)の理由で和漢食では避けます。
動物性食品を避ける
栄養学的にも『一日350g野菜をとりましょう』と提唱されています。野菜はビタミン、ミネラルが豊富に含まれ、これらの補給には欠かせない食材です。また、野菜は食物繊維が多く、腸の中をよく通過します。(繊維の少ない食事を摂っている人には、大腸癌、大腸憩室炎等の腸の病気が多いとされています)
海藻類も和漢食では野菜と同様に大事な食材です。難治性の病気の方を治療していると、肉食は炎症をひどくし、皮膚疾患を悪化させるなどの害が経験されています。たんぱく質は体に必要な栄養ですが、経験的に肉より魚、魚より植物性タンパクの方がこういった病気の悪化は少ないと思われます。その理由はまだ不明の点も多いのですが、和漢食では動物性食品(肉、魚、乳製品、卵など)は控えます。漢方医学的には、動物性食品を摂りつづけていると瘀血(血液がサラサラ流れにくい状態)が進み、あらゆる病気になりやすい体質を作ってしまうと考えられています。
たんぱく質は、大豆で摂ります。大豆は良質たんぱく質を多く含んでいます。丸のままの大豆がよいです。まいて芽の出るものが栄養的なバランスのとれたものと考えます。大豆でも加工食品の豆腐や納豆などは、栄養的にバランスが悪いようですので、料理に変化をつける上で時々メニューに加える程度の使い方をおすすめします。
精製抽出油、動物性脂肪は使わない
日本人の主食として一番合っているのは、米だと思います。調和のとれた食べ物は、まけば芽の出るもの、必要以外の加工をしていないものです。まいて芽の出る米といえばもみをとった玄米です。玄米は白米にないビタミン、アミノ酸が豊富に含まれており、それ自体が調和のとれた食品で生命を養うのに必要なものがそろっています。また、自然に満腹感が得られ、過食を防ぐ働きもあり、糖尿病などの生活習慣病を予防する働きがあります。
抽出した油脂や過剰な脂質は経験的に炎症を悪化させます。油炒め、揚げ物などの摂取によりアトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー性疾患が悪化することは、日常診療の中でよく経験します。脂質は三大栄養素のひとつで必要な要素ですが、油脂の摂り過ぎは、現代医学的にも肥満や脂質異常を招きます。
加工食品は避ける
自然界に存在しない、抽出した純水な食品や精白した食物は体のバランスを崩すと考えられています。 加工食品には人工の香料、甘味料、着色料、酸化防止剤、化学調味料など様々な添加物(精製された物質)も含まれ、身体に悪影響を及ぼすようです。
米はもみに近い外側のぬかの部分にビタミンやアミノ酸を豊富に含みますが、白米ではこの部分を除去しますので、糖質が主な成分となります。白米は加工した食品と考えます。また同様に精白した小麦粉も加工食品と考えます。
小食が基本
過食の害は皆様もよくご存知と思いますが、生活習慣病(肥満、高血圧症、脂質異常、糖尿病、高尿酸血症)を引き起こします。
メタボリック症候群も過食と運動不足が原因です。生活習慣病やメタボリック症候群は血管の病気(脳卒中、心筋梗塞、胸腹部大動脈瘤など)を起こし、命を落とすこともあります。気管支喘息の方は、過食のあとに発作が出現しやすいことも経験しています。
『無病息災の食べ方』の著者 小倉 重成氏は一日一食を提唱しました。しかし、一日一食だと栄養のバランスがとりにくくなるので、当院の和漢食では二食を基本にしています。(一日1000キロカロリー)
たいていの人は、肉・魚・卵・油を用いないと、食べるものがなくなり、栄養失調になると思い込みがちです。良質たんぱく(必須アミノ酸)は大豆と緑菜を摂れば十分含まれています。脂質も玄米・大豆・ゴマに含まれています。
その土地でその季節に自然に採れる旬(しゅん)のものを食べる
季節外れにビニールハウスや温室で採れるもの(冬のキュウリ、トマト、ナスなど)は、旬の露地物に比べ、一般に味も薄く、含まれる栄養素にも違いがあります。
また、本来暑い夏に採れるトマトなどは陰性食品で、季節外れの冬に食べれば体を冷やしすので、避けた方が良いでしょう。
和漢食の食べ方
咀嚼玩味(そしゃくがんみ) よく噛んで食べる
噛むという行為は物をおいしく味わえるということだけではなく、少量で満腹になり、食べ過ぎを防ぎます。
玄米ご飯とおかずは別々に食べる
玄米は硬くて味もあり、白米のように口に含みながらおかずを食べるのに適していません。玄米にはゴマ塩をふりかけています。しっかり噛んで玄米だけを味わってください。おかずは、単独で食べて丁度良いように少量の塩味などで味付けしていますので、食材そのもののうまみ、甘味を賞味してください。
お汁まで飲む
煮汁にはカリウムなどの成分が含まれていますので、お汁までのむようにして下さい。薄味ですので、塩分の取り過ぎの心配はありません。
現代の味付けは、白米などの主食と一緒に口に入れてちょうど味がよくなるように濃く味付けするのが一般的です。そこで、汁まで吸うと塩分が多すぎるなどの害があります。単独で素材の味がよくわかるような薄味であれば、汁まで飲んだ方が、栄養が逃げずに良いのです。