お悩み別漢方
気力がない・疲れやすい
中国の古典『荘子』には、「気が集まれば、すなわち生。気が散ずれば、すなわち死」というくだりがあります。これは人体を哲学的に小宇宙としてとらえており、漢方医学はこうした考え方に影響を受けています。
生命活動を支えるエネルギーである気(き)が、全身を十分巡っていれば、まず健康と言って良いでしょう。気は父母から受け継いで蓄えられた先天の気と、呼吸や食事によって後から充てんされる後天の気があります。
この気がさまざまな原因によって消耗、あるいは呼吸や食事の障害により産生が低下すると、身体がだるい、疲れやすい、日中眠い、風邪をひきやすいなどの、「気力がない」状態を呈します。これを漢方では気虚(ききょ)と呼んでいます。
90代の男性が寝たきりの状態で来院しました。会話は可能ですが、意欲が低く、認知症の兆候も見られました。また、関節の拘縮が進行している状態でした。気の不足が原因と考えられ、消化吸収能力を改善する「黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)」が処方されました。その結果、リハビリに対する意欲が向上し、2年後には歩行器での歩行が可能となりました。寝たきりでも、気を蓄えていくことが効果的であると考えられます。