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漢方の基礎知識

気・血・水…不調の原因をはかるものさし

 漢方では、身体を巡る要素を「気(き)」、「血(けつ)」、「水(すい)」と言います。これら3つの要素が体内をうまく巡ることによって健康が維持されていると言われています。

気(き)…生命活動を支えるエネルギー
気

 「気」は、目に見えない循環要素で生命活動を支えるエネルギーと考えています。
その「気」が、全身を十分に巡っていれば、まず健康と言って良いでしょう。

  1. 気虚(ききょ)
    この「気」がさまざまな原因によって消耗、あるいはご飯が食べられないなどによって産生が低下すると、身体がだるい、疲れやすい、日中眠い、風邪をひきやすいなどの、「気力がない」状態を呈します。これを漢方では「気虚(ききょ)」と呼んでいます。
  2. 気欝(きうつ)
    また、生体を循環するエネルギーである「気」が局所で停滞すると、その場所に違和感を覚えます。頭に停滞した場合、帽子をかぶったような感じ、咽のつまり感、胸や腹が張った感じなど、気分が沈んで優れない等です。昔は全身的な気の停滞を「気欝(きうつ)の病」などと言いましたが、現代では広く「気欝(きうつ)」または「気滞(きたい)」と呼んでいます。
  3. 気逆(きぎゃく)
    「気」は、上に昇りやすい性質を持っています。緊張すると顔が火照ることがありますが、自律神経やホルモンバランスが崩れやすい更年期障害などでも、のぼせ、動悸、発汗などが見られます。漢方では、これらの症状は「気」の働きが不安定になって、上の方に突き上げるのに伴って起きると考え、「気逆(きぎゃく)」と呼んでいます。同様に発作性の頭痛や、こみ上げてくるような咳や嘔吐も、「気逆(きぎゃく)」による場合があります。
血(けつ)…全身を巡って栄養を与える
血

 漢方医学で病気を捉えると、熱性であったり寒性であったり、充実した反応だったり、あるいは弱々しい反応であったりしますが、漢方医は身体が呈するさまざまな反応形式を重要視します。漢方で身体を巡る要素のうち目に見えるものに「血(けつ)」があります。血は赤色の液体、概ね現代医学でいう「血液」のことです。

  1. 瘀血(おけつ)
    漢方医学でいう「血」は、睡眠不足や便秘、ストレス、ご馳走の食べすぎ、運動不足などにより、本来スラスラと流れるべきところがスムーズに流れなくなり、局所に滞るようになることで病的状態を呈します。暗赤色の唇や目の周りのクマ、皮膚に見られる毛細血管拡張は実際に目に見ることのできる血の滞りであり、「瘀血(おけつ)」と呼ばれます。「瘀血(おけつ)」はさまざまな症状を呈します。身体各所の血の滞りにより不眠、精神症状、腰痛・筋肉痛、痔(じ)、女性の月経異常などが生じると考えています。診察をすると、しばしばおへその周りに圧痛が認められます。
  2. 血虚(けっきょ)
    身体をめぐる要素のうち、身体の構造に栄養を送り込む「血」が、いわゆる出血で失われたり(女性の月経時の出血や胃潰瘍、痔などによる場合があります)、慢性の病気の影響で十分作られなくなると不足します。身体の物質的側面を支える血が不足した状態を、漢方では「血虚(けっきょ)」と呼びます。年齢とともに乾燥症状が目立つようになり、入浴後などでも肌がカサカサしたり、爪が割れやすい、髪が抜けやすいなどと感じることがあります。「血虚(けっきょ)」は表面的な症状だけでなく、局所での血の不足により集中力がない、こむら返り、目のかすみ、動悸、不眠などの原因となることもあります。
水(すい)…水分代謝や免疫システムに関わる体液
水

 ヒトの身体の6、7割は水分から構成されていると言われています。水分があるべきところに必要量存在していれば良いのですが、水田に囲まれ、梅雨や台風などで多湿の日本では、体内の水の偏在が生じやすいのです。

  1. 水毒
    全身・四肢の浮腫み症状、尿や汗、鼻水といった排出関係、めまいなどの内耳関連症状、水様性喀痰などの呼吸器症状、悪心(おしん)・嘔吐といった消化器症状などに分けられます。昔の人は、さまざまな症状を呈する「水毒(すいどく)」に対して、「怪病は水毒を治すべし」とも言っています。水毒体質の方は、飲んだ水が胃の辺りでチャプチャプ鳴ることがしばしばあります。また気圧、気候の変化により症状が消長するのも特徴的です。