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お悩み別漢方

消化管の働き低下

消化管の働き低下
 普段から観察するのが仕事ですから、例えば、電車に乗ると、前のめりで寝ている会社員の方は気虚(ききょ)だなぁとか、ついジロジロ見てしまいます。現代医学では視覚による診察を視診と言いますが、漢方では望診(ぼうしん)と言います。局所の所見も大切ですが、この方は元気があるのか、熱性かどうかなど、全体像をとらえることを私たちは重要視しています。
 宮本 武蔵の『五輪書』によれば「観の目つよく、見の目よわく見るべし」とあり、これは注視することより気配をうかがう、あるいは心の目で見るということを述べており、望診のことを言っているようです。私たちは局所の所見や皮膚の乾湿・色調はもちろん、患者さんの顔つきや眼に力があるか、姿勢、歩いている様子などから、陰陽虚実気・血・水の異常を察知します。

 50代の女性が原因不明の肝機能異常に対する漢方治療を希望して来院しました。診察では、顔の筋肉が弛緩し、眼に力がないことから、気虚と判断されました。消化管の働きを高め、元気を補う「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」が処方され、2ヶ月後には肝機能の異常が半減しました。

 顔の表情筋は発生学的に消化管に由来します。表情筋の緊張、すなわち表情や眼光を見ることで消化管の働きをある程度推測しています。