医療関係者の皆様へ

こんなときには漢方

真武湯しんぶとうの活用法

 みなさん、葛根湯かっこんとうはよくご存知のことと思います。葛根湯は、風邪の初期だけではなく、主に頭部の炎症(中耳炎、鼻炎、結膜炎)や肩こり、乳腺炎、蕁麻疹にも効果があり、応用範囲の広い漢方薬です。
 真武湯は陰証(冷えが主体の病態)の漢方薬で、陽証(熱が主体の病態)の葛根湯と同じように応用範囲が広いことと、高齢者や虚弱者の風邪薬として使われることから「陰証の葛根湯」と言われています。

真武湯の適応

膝の痛み
 真武湯が適応になる人は、冷え性で顔色が悪く体全体が冷え、診察でも手足が冷たく、めまいやめまい感を伴う傾向があります。このめまい感はふらっとしたり、くらっとする感じや雲の上を歩くようにフワフワするという感じです。また倦怠感を伴い、「座れるところがあったら座りたい、横になれるのであれば横になりたいですか?」と質問すると「はい」と答えます。

 前述しましたが、高齢者や虚弱者の風邪、神経痛、胃腸虚弱、下痢にも効果があります。また浮腫にも効果があります。例えば、心不全が増悪して入院し利尿剤で治療している高齢の患者さんで、元気がなく手足が冷たく四肢に浮腫がある状態にも応用できます。

症例

 真武湯の症例を提示します。40代の女性です。この方は、下痢しやすいと言う主訴で来院されました。4、5年前から下痢をするようになり、1年前から2週間に1度下痢をし、下痢の後は軟便が続きます。水様性の下痢で便臭はありません。下痢の時は腹痛もあります。普段は便秘もありません。気温が下がると肩こりや頭痛があるため、以前、脳外科を受診しましたが異常は認められませんでした。10年以上前から下腹部が冷たいことを自覚しており、急に振り向くとくらっとする症状も見られます。小柄で華奢な体型で、顔色はやや青白い方です。尿の回数は5~6回/日と少なめ、寒がり、立ちくらみ、よく鼻水が出る、足がむくむことがあります。また、月経は順調ですが月経痛があります。倦怠感があり、横になれたら横になりたいかと質問すると「はい」とのことでした。足首は冷たく、橈骨動脈は細く弱い脈で、舌は湿った薄い白苔、腹部は上腹部を軽く叩くとチャポチャポと音がしました。
 そこで、真武湯エキスを3包分3で処方しました。その後、下痢は2ヶ月間全くありませんでした。また、月経痛も軽くなり、くらっとするめまいも見られなくなりました。しかし、雪の降る寒い日に下痢をし、その後軟便が続いているとのことで、さらに温めるために、真武湯エキスに加工ブシ末を併用しました。1ヶ月後の受診では下痢は見られませんでした。

真武湯のまとめ

 冷え性で手足が冷たく、めまいやめまい感があり、座るところがあったら座りたい・横になれたら横になりたいという倦怠感や、浮腫が認められる場合、ぜひ真武湯をご活用ください。

真武湯のまとめ
●強い冷えと浮腫傾向がある
●くらっとする、あるいはフワフワするようなめまい感がある
●横になりたいような強い倦怠感がある