こんなときには漢方
胃切除後の食物の停滞に茯苓飲
日本人の2人に1人は癌にかかると言われています。胃癌のために胃切除術を受ける患者さんも多く、その後、食物が停滞して、もたれや嘔気・嘔吐などの症状があるようです。今回は腹腔鏡による胃の部分切除に茯苓飲が奏効した症例を提示します。
茯苓飲の処方
胃の部分切除術では、胃の蠕動運動を司る神経を切断することで、蠕動運動が低下し、長時間、食物が胃に停滞します。茯苓飲は手術により自律神経機能が遮断されたものを治療すると考えます。また茯苓飲は構成生薬に甘草が含まれておらず、副作用の偽アルドステロン症を心配せずに処方することが出来ます。
胃切除後早期吻合部狭窄症状を改善する目的で茯苓飲を投与した文献では、85.7%の方に1週間以内で症状の消失を認めています。
茯苓飲は、胃切除後のもたれなどの症状のほか、逆流性食道炎にも有効です。
- 茯苓飲
- 噯気(ゲップ)、逆流症状を目標に胸焼け、嘔気・嘔吐、つかえ感など上腹部だけではなく胸部まで及ぶ症状に。
- 茯苓飲合半夏厚朴湯
- 茯苓飲に半夏厚朴湯を加えた処方。のどから上腹部にかけてつかえる場合に。
- 六君子湯
- 食欲がなく、上腹部でチャプチャプ水の音がする場合に。
- 人参湯
- もともと冷え症で胃腸虚弱な場合に。上腹部がつかえて、上腹部を触ると冷たい感じがする場合に。
文献 服部和伸他、胃切除後早期吻合部狭窄に対する茯苓飲の効果、日本消化器外科学会雑誌28(4)966-970、1995年