医療関係者の皆様へ

こんなときには漢方

カサカサ肌のかゆみにお勧めの漢方薬

かゆい
 春が待ち遠しい季節になりました。今の時期は、空気が乾燥してお肌も髪の毛もパサパサします。お年寄りは、皮疹などはなくても乾燥性の瘙痒感を訴えることが多いようです。

症例

 まずは症例を提示します。84歳の女性で、療養型病院に入院している方です。冬になり、腹部や背部を中心に全般的な痒みを訴え、細かい掻破痕を多数認めました。保湿剤や抗ヒスタミン剤の外用や内服治療を行いましたが効果がありませんでした。皮膚は乾燥が強いのですがいわゆる湿疹ではないので、皮脂欠乏性の痒みと考え、12月より当帰飲子とうきいんしエキス3包分3を毎食前で開始しました。約3~4週間の経過で痒みや掻破痕はなくなりました。当帰飲子は、老人性瘙痒症に使用することが多い漢方薬です。皮膚枯燥(枯れたようなカサカサの皮膚)で特に夜間に瘙痒感が激しい場合に効果があることが多いです。

漢方医の視点からみた対処法

 皮膚の栄養は赤色の液体であるけつが司るといわれ(全身をめぐる血液によって栄養されていると考えられ、漢方では単に「血」と呼んでいます)、皮膚の乾燥やシミなどの多くは血の機能的不足(血虚)けっきょによって出現すると考えられています。養毛剤のコマーシャルではありませんが「髪は長い友達」ではなくて「髪は血餘けつよ」(漢方では、髪は血が原料で出来ていると考える)」ですから、貧血や栄養不良が高度になると皮膚と共に毛髪の艶もなくなってきます。こんなお肌のピンチには、外からのパックや高級化粧品も良いのですが、血虚の治療薬である補血剤で体の中から健康な肌を取り戻すことがお勧めです。補血剤の代表は四物湯しもつとうで、当帰とうき地黄じおう芍薬しゃくやく川芎せんきゅうの4つの生薬からなります。提示した症例の当帰飲子は10の生薬で出来ていますが、この当帰飲子とうきいんしには四物湯と止痒作用のある生薬が入っています。

皮膚瘙痒症に用いる漢方薬を下記に挙げます

桂枝加黄耆湯けいしかおうぎとう
● 特 徴
疲れやすく、寝汗など汗ばむ傾向
皮膚乾燥・皮膚疾患の基本的な漢方薬
軽症の湿疹や皮膚瘙痒症
● 保険病名
体力が衰えているものの寝汗・あせも
黄耆建中湯おうぎけんちゅうとう
● 特 徴
小児や虚弱者の湿疹や皮膚瘙痒症
腹力が弱く腹直筋が薄く張っている
● 保険病名
身体虚弱で疲労しやすいものの次の諸症、虚弱体質・病後の衰弱・寝汗
温清飲うんせいいん
● 特 徴
皮膚表面は発赤・乾燥がある皮膚の色は渋紙色(浅黒い、または赤黒い)が典型的
尋常性乾癬など
● 保険病名
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症(男性の皮疹、皮膚瘙痒症にももちろん有効です)
当帰飲子とうきいんし
● 特 徴
皮膚がカサカサ乾燥する
夜間特に瘙痒が激しい
老人性皮膚瘙痒症
● 保険病名
慢性湿疹・かゆみ