医療関係者の皆様へ

こんなときには漢方

気弱な学生さんの味方『桂枝加竜骨牡蛎湯』けいしかりゅうこつぼれいとう

 新学期がはじまりますね。今回は緊張しやすい、どちらかと言うと気が弱い学生さんの心強い味方、桂枝加竜骨牡蛎湯を紹介します。※COVID-19蔓延前の症例です。

実際の症例

動悸
 Mさんは女子高生です。中学のときは不登校でした。14歳のときに息苦しくなり、動悸がしたため循環器内科を受診しましたが異常はなく、自律神経失調症と診断され当科を紹介されました。月経痛に対して当帰芍薬散と緊張しやすい思春期の子どもに頻用される四逆散エキスを服用して高校からは通学できていました。前主治医の転勤に伴い4月から私が担当しました。7月の診察で、夜なかなか寝付けない、寝る前に色々と考える、明日は学校があるなと考えて緊張する、以前嫌だったことを思い出す、嫌な夢を見るとのことでした。腹部の診察ではくすぐったがりですが、腹部大動脈の拍動を心窩部からお臍の上までよく触れました。漢方では腹部大動脈の拍動をよく触れる人は精神的に過敏で不安定な状態にあると考えます。そこで過敏な精神状態を鎮める枝加竜骨牡蛎湯エキスを処方しました。2週間後、「すごくよく眠れるようになった、薬が効いていて寝付きがよくなって考え事をする暇がない。」と笑顔で話してくれました。その後は試験期間中などに嫌な夢を見ることがたまにありましたが、経過は順調です。10月には学校の老人施設研修、11月には海外の修学旅行にも楽しく参加することが出来ました。そして1月には嫌な夢も見ないと話しました。

桂枝加竜骨牡蛎湯とは

 桂枝加竜骨牡蛎湯は、桂枝湯に竜骨と牡蛎が加わった漢方薬です。竜骨は哺乳類の化石、牡蛎はカキの殻です。山と海のカルシウムがプラスされています。竜骨と牡蛎の組み合わせは、驚きやすい、オドオドビクビクしている、緊張しやすい場合に適応になります。また何となく疲れるという方で嫌な夢や怖い夢を見ると言う患者さんにも良いと思います。
 若者だけでなく、ストレスを受けやすい世代や高齢の方でも年齢を問わずお試しください。

処方のポイント

桂枝加竜骨牡蛎湯のまとめ
●ヤセ型で心気症、神経症傾向が強い
●神経過敏や精神不安、動悸がある
●疲れやすく、寝汗や手足の冷えがある
●腹部を按圧したときの反発力は弱く、腹部大動脈の拍動がよく触れる

緊張しやすい人向けの漢方薬
柴胡加竜骨牡蛎湯:
竜骨と牡蛎を含む。便秘の傾向があり、普通かややがっちりした体型のことが多い。
柴胡桂枝乾姜湯 :
職場では、てきぱき仕事をこなして元気に見えるが、家に帰るとグッタリするタイプ。足は冷えるが顔は少しのぼせて唇が乾燥することが多い。