地域医療を支える医療設備
飯塚病院では、365日・24時間体制で地域を守る救急医療や、あらゆる病状に対応できる総合診療、専門医療を地域の皆さまへ提供するために、さまざまな医療設備を導入しています。
ROSA Kneeシステム
ROSA Kneeシステムとは
ROSA Kneeシステムとは RObotic Surgical Assistantの略で人工膝関節置換術にて執刀医のサポートを行う手術支援ロボットになります。
六軸多関節ロボットアームと光学カメラユニットに分かれており、患者さんの膝の位置を正確に把握し人工膝関節を置換するための骨切り量を0.5㎜単位、角度を0.5°単位で設定することが可能となります。
ロボット手術の位置づけ
手術支援ロボットを用いた手術は、ロボットが自動的に動いて手術を行うのではなく、あくまで「医師の執刀を補助する道具」という位置づけとなります。
「人工膝関節全置換術」は、骨を削る量や人工関節をどのように設置するかにおいて執刀医の経験・技術や感覚が担うところが大きいと言われています。この人間の感覚によって行われている重要な部分を、術中にロボットが評価計測を補助し、執刀医の骨切りや人工関節の設置位置をガイドすることで、より正確に精度の高い安定した手術を可能にするのが手術支援ロボットの役割です。
治療対象
変形性膝関節症(関節鏡手術全般に加え、人工膝関節置換手術、単顆型人工膝関節置換術、高位脛骨骨切り術を提供しています)
患者さんが受けるメリット
- 手術支援ロボットの活用によって、手術の精度が担保されることにより、人工膝関節の長期耐用性が期待されます。更には、微小なズレなく的確な骨切除ができるので、より少ない侵襲で患者さんの負担軽減につながる手術も可能となります。
- 2020年7月から保険適用となり、高額療養費制度の対象となります。患者さんの希望と適用条件が合えば高齢の方でも手術を受けて頂くことが可能です。
サイバーナイフ
サイバーナイフとは
サイバーナイフとはアメリカで開発された定位放射線治療(ピンポイント照射)専用機です。従来の放射線治療装置がロボットアームの先端に取り付けられており、この装置が横になっている患者さんの体の周りを自由自在に動いて、照射します。これにより、病変に対して多方向から集中的に照射できるようになり、正常な組織への影響を最小限に抑えることが可能となります。
また、天井に設置されたカメラで患者さんの呼吸を監視し、数秒ごとに撮影するX線画像で病変位置の確認を行うことで、呼吸によって移動する病変を追尾しながら放射線を照射することもできます。
治療対象
頭蓋内、頭頚部
原発性・転移性脳腫瘍、動静脈奇形
体幹部
原発性・転移性肺がん、原発性・転移性肝がん、膵がん、腎がん、前立腺がん、脊髄動静脈奇形
その他
転移性脊椎腫瘍、少数の転移腫瘍
※それぞれ腫瘍の位置やサイズ、個数によって治療方法は異なります。
患者さんが受けるメリット
- 多方向からX線を照射することで、正常組織への影響を最小限に抑えることができます。
- 呼吸によって移動する病変を追尾して照射できるため、呼吸を止めずに治療を受けられます。
- 痛みを伴う頭蓋骨への金属フレームの固定は不要です。
- 治療期間は1日〜数日間で済む場合がほとんどです。
手術支援ロボット(ダビンチXi)
手術支援ロボット「ダビンチ Xi」とは
「ダビンチ Xi」は、内視鏡を使用した腹腔鏡や胸腔鏡の手術に使用する手術支援ロボットです。
ダビンチはアメリカで2000年代に手術支援ロボットとして開発されており、この度、当院が導入した「ダビンチXi」はその最新機種となります。
「ダビンチ Xi」の特徴の一つは、高画質、高精細の3Dカメラが捉えた映像を、同じく高画質、高精細な3Dディスプレイに映し出せることです。「ダビンチ Xi」を使用することで、執刀医師は、従来の手術では直接見ることのできなかった映像を、見ることが可能になります。
手術支援ロボット「ダビンチXi」は、3つの機器で構成されています。
- サージョンコンソール
- ペーシェントカート コンソールで操作する、医師の手の動きを、正確かつ繊細に再現します。人の手は2つしかありませんが、カートには、医師の手の代わりに動作する、3つのロボットアームがついています。アームには独自の機能(手ブレ補正や360度回転など)がついており、人の手よりも正確で繊細な動きができます。医師は、人の手よりも自由に動作する、3つのアームを操作することが可能になります。
- ビジョンカート
コンソールへ着座した医師は、3Dディスプレイの画像を見ながら、コントローラーを使用して手術を行います。3Dディスプレイは、医師が操作するために、重要な情報である、「奥行き」を確認することができます。このことにより、医師は、安全で正確に手術を行うことができます。
高度な機械である「ダビンチXi」を使用した手術だからこそ、より高い安全性が必要となります。当院では「ダビンチXi」の導入にあわせ、医師や看護師だけでなく臨床工学技士など多職種が一体となるチームを編成しております。
手術においては、チームの各担当者は、「ビジョンカート」のモニターに映し出される手術の映像に合わせ、次の準備を進めて行きます。
患者さんが受けるメリット
- 患者さんの体に負担の少ない手術です 「ダビンチXi」は、内視鏡を使用した腹腔鏡や胸腔鏡の手術に使用する手術支援ロボットです。手術支援ロボットを使用した手術は、お腹や胸の体の皮膚へ、小さな穴を開けて行うため、患者さんの体に負担の少ない手術として、日本でも2018年に保険診療の適応が広がるなど、その効果が認められています。手術によってそのメリットは様々ですが、前立腺摘出術では、開腹手術に比べ、正確な切除、よりよい神経温存手術(排尿機能、勃起機能の回復)、出血の抑制と輸血の低減、入院期間の短縮と日常活動への復帰、カテーテル留置期間の短縮等の利点があります。
- 手術をより正確に行うことができます 手術を行う医師はこの小さな穴へ、「細長い内視鏡」や「柄の長い鉗子やメス」を入れて手術を行うことになります。医師は、多くの知識や経験と高い技術を持ち執刀しますが、「細長い内視鏡」「柄の長い鉗子やメス」の操作を、「ダビンチXi」を使用することで、これまでより正確に行うことが可能になります。「ダビンチXi」を使うことで、これまでの内視鏡手術では困難であった手術を可能にします。
ハイブリッド手術室
ハイブリッド手術室とは
手術台と心・脳血管X線撮影装置を組み合わせた治療室のことで、手術室と同等の空気清浄度の環境下で、カテーテルによる血管内治療が可能です。
この組み合わせにより最新の医療技術への対応が可能となりました。すなわち外科的に最小限の切開を加えた後、そこから低侵襲治療を代表するカテーテル治療(内科的治療)を行うことが可能となります。
当院では、2018年9月に筑豊地域で唯一となるハイブリッド手術室の稼働、TAVI治療の施行を開始し、心臓血管外科、循環器内科、麻酔科、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、理学療法士、看護師などからなるハートチームでの十分な検討の上、治療決定・施行します。
治療対象
- 胸部大動脈瘤や腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療
- 閉塞性動脈硬化証に対するバイパスとバルーン拡張の同時施行
- 大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁置換術
- 全身麻酔下における脳血管コイル塞栓術
患者さんが受けるメリット
- 手術時間の短縮、出血量の減少など体の負担が少なくなりました
- 入院期間が短縮されます
256列MDCT(Dual Energy搭載)
MDCTとは
CTとは、Computed Tomography(コンピュータ断層撮影)の略で、放射線の一種であるエックス線を利用し、身体の断面像を撮影する検査です。1回転で1枚の断層像が得られますが、近年は、多列検出器型エックス線CT 装置(Multi Detector row Computed Tomography : MDCT)が登場し、1回転で多数枚の画像が得られます。
2018年2月には、福岡県内で3台目、筑豊地区では初となるGE社製最新型256列CT装置「Revolution CT」を導入し、れにより、当院のCT撮影体制は、外来患者専用2台、病棟患者専用1台、救命救急センター1台の計4台体制となり、緊急検査にもスムーズに対応・待ち時間短縮に繋がっています。
また、術前・術後支援の一環として、診療放射線技師がCT撮影全般を担当しており、医師の指示のもと、最小限の被ばく量で、最適な画像を撮影しています。また、CT検査の質と安全を担保する診療放射線技師として認定を受けた「X線CT認定技師」も在籍しています。
Dual Energyとは
管電圧の異なる2種類のX線でCTを撮影する技術のことを言います。
2種類のX線データを用いると、病変の質的診断や、造影剤の使用量を減らすことが可能となります。造影剤の使用には腎機能による制限があり、腎機能が低下した患者さんには適量の造影剤が使用できない場合もあります。しかし、Dual Energy が搭載されたRevolution CTを使用した場合、腎臓に負荷がかからないように造影剤量を減量しても、通常投与した検査と同等な画像が提供できます。
患者さんが受けるメリット
- 頭部・心臓検査が1回転の撮影で可能になりました
- 息止め時間が1-5秒と大幅に短縮され、息止めが難しい患者さんでも静止画像が得られる
- X線被ばくを最大50%の低減が可能になりました
- dual energy技術では物質解析画像ができるようになり、腎機能が悪い方でも少量の造影剤で撮影が可能になりました
リニアック(放射線治療装置)
リニアック(放射線治療装置)とは
リニアックとは、がんのかたまりとその周囲のがん細胞を死滅させるため、体外から皮膚を通して放射線を照射する外部放射線治療を行う装置で、がんの治療に必要な高エネルギーのX線や電子線を発生させます。
当院では、2017年6月にエレクタ社最上位機種「Versa HD」を九州で初めて導入しました。また、「放射線治療専門放射線技師」「放射線治療品質管理士」の認定資格を有するスタッフが在籍し、効果的で安全かつ効率的な放射線治療の実施を可能にしています。
治療対象
乳がん、肺がん、前立腺がん、食道がん、肝がん、膵臓がん、頭頸部がん、直腸がん
悪性リンパ腫、転移性腫瘍(脳・骨等)、婦人科腫瘍(子宮がん等)、その他悪性腫瘍等
患者さんが受けるメリット
- X-ray Volume Imaging 装置(XVI)、高精度マルチリーフ(Agility)、Flattening Filter Free(FFF)等の機能を有しており、より効果的で安全かつ効率的な放射線治療の施行が可能になりました
- 強度変調放射線治療(IMRT):専用のコンピュータを用いて照射野の形状を変化させたビームを複数用いて、腫瘍の形に適した放射線治療を行う新しい照射方法が可能になりました
- 回転型強度変調放射線治療(VMAT):IMRTのひとつであり、病変部に高い線量を集中させ、周囲の正常組織への影響を少なくするための高度な放射線治療技術が可能になりました
心臓カテーテル装置
心臓カテーテル装置とは
心臓疾患の確定診断や重症度診断を行うために、カテーテルを用いて心臓内腔の心圧測定や心拍出量測定、心臓の血管造影を行う装置です。
冠状動脈カテーテル治療(PCI)、上肢動脈や下肢動脈の末梢血管治療(EVT)、頻脈性不整脈を治療するカテーテルアブレーション、ペースメーカー植込み術等が行われており、急性心筋梗塞等、緊急検査・緊急治療も行われるため、スタッフは、24時間待機し検査・治療に対応しています。
2016年6月には、「低被ばく・高画質」をコンセプトとした装置へのリニューアルを実施し、
- 低残像・低ノイズが実現し、画像がより鮮明に
- 画質の向上により治療部位のより正確な位置決めが可能に
- 不要なX線だけを的確に除去することが可能
などのメリットが生まれました。
患者さんが受けるメリット
- 電源を入れてから2分以内(リニューアル前は5~10分)に検査を開始することができ、緊急患者さんにもすぐに対応することが可能になりました
- 造影剤の使用量が減少しました
3.0テスラMRI診断装置
3.0テスラMRI診断装置とは
MRIは、磁気と電磁波、水素原子の共鳴現象を利用して、体の断面を画像化する機器です。磁場をつくる装置の中で体に電磁波を当てると、体内の水素が磁気に反応して信号を発します。その信号を捉えて、コンピュータで解析し画像にします。機器が発する磁界が強いほど、鮮明な画像を得ることができます。
当院では、1.5テスラMRI 2台と、2016年に導入した3.0テスラMRIの3台体制で診療にあたっています。
3.0テスラMRI(Philips社製)の機種は、臨床レベルでの最新かつ最高級装置であり、より高度・高画質のMR画像を迅速に提供できるようになりました。
診断対象
脳梗塞や脳出血、動脈瘤、脳腫瘍、頭部外傷などの頭部疾患、そして頭部以外の全身の臓器の腫瘍や結石のほか、脊髄や関節、ヘルニアなどの疾患の診断が可能です。
また、胆管や膵管などの管、心臓や血管を画像化して診断することもできます。さらに、靭帯損傷、肉離れ、骨軟部腫瘍、変性脱髄疾患などの診断にも有用です。
患者さんへのメリット
- 撮影画像の精度向上により、診断の質が向上しました
- 息止めが難しい患者さんにも高精度な呼吸同期が実現されました
- より広い内径で、さまざまな体型の患者さんに対して圧迫感のない検査が可能になりました
- 新しい内装空間で、ヘッドフォンから流れるBGMを聞きながらの検査が可能になりました
アンギオCT(血管造影装置+CT)
アンギオCT(血管造影装置+CT)とは
血管造影装置は、頭部、胸部、腹部、その他色々な部位の血管を撮影する造影検査や、それを活用した血管内治療を行う装置です。
アンギオCT装置とは、この血管撮影装置にCTを組み合わせることで造影検査や血管内治療中にCT撮影を行うことが出来るシステムとなっています。
血管造影装置を使用した検査や治療はもちろん、CT装置の単独使用も可能で、生検、穿刺部位の確認等にも利用することができます。
また、緊急を要する治療に対応するため、スタッフは24時間待機しています。
患者さんが受けるメリット
- フラットパネルの導入により以前の機器より透視画質が向上、撮影条件の詳細な設定が出来るようになり、被曝線量も抑えることが可能となりました
- 16列CTの導入(以前は2列)により、撮影時間の短縮が可能となり、撮影時に息をとめていただく時間が短縮され、患者さんの負担が軽減されます
PET-CT
PET-CTとは
PET-CTは、がんの検査や診断に用いられる医療機器です(PET=Positron Emission Tomographyの略で、「陽電子放射断層撮影」という意味)。
従来のCTやMRIなどの形態を探る検査とは異なり、細胞の活動状態を画像で判断する検査で、検査薬(FDG:ブドウ糖に放射線を出す成分を組み込んだもの)を人体に投与します。
ブドウ糖は全身の細胞内に取り込まれるため、がんの広がりや転移の発見が期待でき、またPETとCTの融合により高い精度の診断が可能となります。全身の検査を行い、原発巣や転移、予想外の部位での発見も期待できます。
飯塚病院では、2013年より筑豊地域で唯一導入しており、各診療科での診療に使用しているほか、がんの早期発見のために検診にも使用しています。
PET検診の有用性
- 一連の検査で全身をチェック
薬剤は血流により全身に行きわたり、PET装置が全身を検査しますので、一度の検査で全身のがん検索ができます。
- 苦痛が少なく、2時間程度で検査が終了
薬剤を注射して、約1時間の安静後に、約20分間検査ベッドに横になって全身検査を行います。検査の精度を上げるため、PET専門医の指示の下2時間後に10分程度の検査を追加する場合もあります。投与から約2時間PET施設内に待機いただければ検査は終了します。
- がんの早期診断、転移または再発の診断に有用
がん原発巣の検出以外に、進行例では転移巣、治療後では再発診断にも有用。
関連情報
当院 予防医学センターでは、「がんPET検診」を実施しています。専門のスタッフによる安全で迅速な検査と精度の高い診断を行い、筑豊地域のがんの早期発見と治療へ貢献していきます。