医療関係者の皆様へ

こんなときには漢方

働く女性の味方! 柴胡桂枝乾姜湯さいこけいしかんきょうとう当帰芍薬散とうきしゃくやくさんの併用療法

実際の症例

 ある時、当院の病棟の看護師(48歳女性)が月経前の頭痛と肩凝りを主訴に漢方外来を受診しました。ぽっちゃり体型ですが全体的に柔らかな水太りです。顔色が青白く、目の下の隈があり、寒がりで疲れやすく、脈やお腹の力が弱いので体が弱った状態と考えて、柴胡桂枝乾姜湯と当帰芍薬散を処方しました。1週間後、「薬を飲んだその日から右目の痛みが消え、首や肩の凝りがなくなった」とびっくりしていました。月経前の頭痛や肩凝りも消失し、疲れにくくなったと喜ばれました。

それぞれの特徴

ストレス
 柴胡桂枝乾姜湯は、体が弱い人向きの処方ですが、職場では体がきつい素振りを見せず、確実に仕事もこなし、元気に振る舞い、家に帰ってぐったりする「青菜に塩」タイプであると思います。また1年のうちで春は木の芽立ちの季節であり、植物も人も発揚し、些細なことで言い争い、イライラしやすい状態になります。この時期(春先)は、精神安定作用のある牡蛎ぼれいが入り、ストレスを軽減させる柴胡の含有量が多い柴胡桂枝乾姜湯の適応になる方が増えます。また頭痛や目の奥が痛むという症状が出やすいようです。

 当帰芍薬散は、やはり体が弱った人向きの処方で、顔色が悪く、めまい感があり、足がむくみやすく、歯痕や胃の辺りで水分が動く音を聞くことが多いです。体型は華奢なことが多く、ぽっちゃり体型でも水太りの傾向のある方に効果があります。月経痛や月経不順、妊娠中の異常が出現しやすいという特徴があります。

症状に応じた併用も

 柴胡桂枝乾姜湯と当帰芍薬散の併用は、どちらも体が弱った人向きで、相性は大変良いと考えます。柴胡桂枝乾姜湯(柴胡さいこ黄芩おうごん栝樓根かろうこん桂皮けいひ牡蛎ぼれい乾姜かんきょう甘草かんぞう)と当帰芍薬散(当帰とうき芍薬しゃくやく川芎せんきゅうじゅつ茯苓ぶくりょう沢瀉たくしゃ)は全く構成生薬が異なり、柴胡桂枝乾姜湯は主に気の異常に、当帰芍薬散は血と水に対応し、気・血・水のすべてに対応しています。柴胡桂枝乾姜と当帰芍薬散の併用は、厳密な冷え症ではないが冷えっぽい人、ストレスをうちにためる人、神経質で真面目な性格の人などにおすすめです。

 柴胡桂枝乾姜湯と当帰芍薬散の併用と最も鑑別を要するのは加味逍遥散だと思います。加味逍遥散は、当帰芍薬散と当帰、芍薬、朮、茯苓と構成生薬が同じで、血と水を裁き、山梔子さんししで熱を冷まし、柴胡、薄荷はっかで気をめぐらし、気血水に対応しています。加味逍遥散の適応となる方はストレスを受け流すことが得意ではないが、他人を攻撃するタイプが多いようです。また、人の言うことを聞かない、オーバーな愁訴で医師や看護師を翻弄して我が道を行く印象です。

まとめ

柴胡桂枝乾姜湯と当帰芍薬散は、冷える傾向があってストレスを発散できず、うちにためこむタイプの働く女性の味方です。特に女性の看護師さんにおすすめの漢方薬です。