医療関係者の皆様へ

こんなときには漢方

ストレスによるめまいに柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

(かん)」という考え方

 漢方医学では、めまいは水分代謝が悪い状態(水毒(すいどく))と考えることが多く、五苓散(ごれいさん)苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)真武湯(しんぶとう)などが頻用されます。今回は、ストレスが関与するめまいについて概説します。
 漢方医学の考えで「(かん)」というものがあります。肝は現代西洋医学でいう肝臓とは異なり、自律神経を調整する働きがあると考えるため、ストレスや不眠、アルコール多飲などで肝の正常な働きが阻害されると自律神経が乱れ、めまいが生じます。治療は、「柴胡(さいこ)」を含む漢方薬で行いますが、体格が中等度以上の人であれば男女を問わず柴胡加竜骨牡蛎湯、体格が華奢な人であれば男性には柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、女性には加味逍遥散(かみしょうようさん)を用いることが多いです。さらに、めまいが起こるのではないかと不安になっている場合は、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)が有効なことが多く、単独で用いたり、半夏厚朴湯+柴胡加竜骨牡蛎湯というように、柴胡加竜骨牡蛎湯や柴胡桂枝乾姜湯、加味逍遥散と併用したりします。
 めまいを訴えて来院されても、検査で異常を認めない方がいらっしゃいます。そのような方で、強いストレスがかかっている場合は、上記の方剤を試してみてはいかがでしょうか?

柴胡加竜骨牡蛎湯
体格は中等度以上で、動悸や睡眠障害(不眠、悪夢など)、神経過敏などの精神症状を伴う。右肋骨弓下を上に向かって指で押し込むと抵抗と圧痛がある「胸脇苦満」や臍の頭側での腹部大動脈の拍動亢進(臍上悸)を認めることが多い。
柴胡桂枝乾姜湯
体格は華奢で、動悸や睡眠障害(不眠、悪夢など)などの精神症状を伴う。軽度の胸脇苦満や臍上悸を認める。
加味逍遥散
体格は華奢で、不定愁訴(ホットフラッシュ、頭痛、肩凝り、動悸、不眠、不安など)を伴う。月経周期・更年期に関連して症状を訴えることもある。胸脇苦満や臍上悸に加え、臍の周りに圧痛を認めることが多い。