主な病気・疾患について
- 不整脈
不整脈とは
不整脈といえば漠然とした不安や恐怖感を抱きがちですが、不整脈とは不規則な脈の総称であり、その重症度は不整脈の種類により大きく異なります。その種類によっては特定の治療を行う必要のない不整脈も数多く存在する一方で、動悸など不整脈を疑わせる自覚症状がないにも関わらず、重症度の高い、発作性の危険な不整脈を有しているという場合もあります。
健診での異常や動悸・めまい症状がある場合には心電図波形の特徴から不整脈の種類の診断を行うことが重要です。
主な原因・症状
不整脈は生活習慣病の一種であるという側面もあるため、リスク要因として喫煙や過度な飲酒、高血圧や肥満、糖尿病などのコントロールが重要です。また、不整脈発作は自律神経と密接に関連しており、過労やストレス、睡眠不足、心身の状態なども発作を誘発させます。
しかし時に心ポンプ機能低下など心疾患(心筋梗塞や心筋症など)が潜在し原因となっている場合がありますので、病院で調べて診断を受けるようにしましょう。
不整脈の症状は多彩です。動悸、脈が飛ぶ、息切れ、めまい、咳など、様々な症状がありますが、無症状であることも多くあります。不整脈で最も多い症状は動悸、最も危険な症状はめまい、失神です。不整脈の種類と重症度を診断し治療の必要性があるかどうかを検討することが重要です。
当院での治療法
不整脈の治療は薬物療法と非薬物療法(カテーテル治療・デバイス植え込み術・手術治療)があります。不整脈の種類や重症度により、より適切な治療が選択されます。
非薬物療法にはカテーテルを用いたカテーテルアブレーション治療、ペースメーカ、植え込み型除細動器(ICD)といった不整脈デバイスを植え込む手術と、心臓そのものにメスを入れて不整脈(特に心房細動)を治癒、あるいは発作を抑えるメイズ手術があります。
- カテーテル治療(カテーテルアブレーション)
- 不整脈の種類によっては根治的な治療となり得る治療法です。当センターは筑豊地域唯一のアブレーション施行施設です。
- 不整脈デバイス手術
主に以下の3種類があります。
- おもに脈が減ったり、一時的に止まったりする徐脈性不整脈に対するペースメーカ
- 極端に心拍数が早くなる頻脈発作のうち、心室細動など危険性の高い頻脈性不整脈の治療のためのICD(体内に植え込むAEDのようなもの)
さらに心不全/不整脈に対して、 - 心臓に植え込んだ複数箇所のリード線からの刺激で治療する心室再同期療法(CRT)があります。
いずれも局所麻酔下に肩口の傷から心臓に電線(リード線)を挿入、心臓の脈を感知、解析しリード線に電気を流します。装置本体は肩口の筋膜の下に植え込む手術となります。
手術時間や侵襲度はそこまで大きな手術ではなく、一般には循環器内科で手術を行う場合も多いのですが、術後いったん細菌感染を合併すると一転、死にいたる危険性も低くはない手術です。
当センターでは植え込んだ傷の感染を徹底的に予防すること、傷をきれいに仕上げることにこだわり、30年前の循環器病センター創設時より心臓血管外科での手術を行ってきました。近年は循環器内科と合同で手術を行うことも増えてきましたが、感染を予防する手技のトレーニングシステムで対策を持続し、現在でも術後の感染は1,000人に1人程度と全国平均の1/10程度に維持できています。術後のフォローについて
不整脈デバイスで重要なのは植え込み後の定期フォローです。当院ではペースメーカ専門外来は心臓血管外科が担当しています。現在600名以上の患者さんをフォロー中ですが担当の福村看護師を中心に電話での受診案内、極力待ち時間を減らす予約制の工夫、データベースの整備を行い、『一度植え込みをさせていただいたら一生のお付き合い』をモットーに現在99%以上のフォロー率を維持しています。ICD/CRT専門外来は循環器内科が担当しており、機器のフォローと不整脈への対応に努めています。
また近年MRIの撮れるペースメーカが増加しましたが、MRI撮影時には慎重な準備、対応が必須です。
この点についても当院では臨床工学技師との連携で脳血管といった緊急性の高い疾患に対しては24時間365日MRI撮影可能体制をしいて術後QOL(Quality of life:生活の質)の向上を図っています。
リード線のない小型のMICRA(リドレスペースメーカ)や、sICD (皮下植え込み型除細動器)が最近使用可能となり、当センターでも内科と外科が協力して治療させていただいております。- 手術(心房細動)
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不整脈の中でも心房細動はその頻度も高く、脳梗塞の原因としても重要です。近年カテーテルアブレーション治療が普及してきましたが、心臓手術(開心術)の際に発生源となる心臓の部位を直接焼灼、隔離して正常のリズムへの復帰を目指すメイズ手術といわれる手術があります。手術ではカテーテル以上にもっと徹底的に心臓のいろいろな場所を焼灼します。通常は弁膜症手術、冠動脈バイパス手術などの際、心房細動を合併する場合に併施することになります。
心臓血管外科ではほかの心臓手術の際に不整脈手術も積極的に併施することで、極力術後の投薬を減らし、QOLを向上させるように努めています。
専門医師
心不全ケアについて
不整脈は心不全と密接に関連している病態です。不整脈の早期治療により将来の心不全発症を予防したり、心不全治療そのものになる場合があります。心機能が低下した心不全患者さんには、心不全の治療でもある不整脈治療を積極的に行っております。
地域の医療機関の皆様へ
無症候性心房細動も予後に対する治療効果が示されつつあります。症状の有無に関わらず、特に若年であればより治療の恩恵を受けるのではないかと考えています。積極的なご紹介をいただけますと幸いです。