当センターについて

部長あいさつ

心臓血管外科 部長 内田孝之

内田 孝之

 当科は、1988年に現在の名誉院長 田中二郎を初代部長として開設以来30年間、心臓・血管に関する外科治療全般を行って参りました。その間、現在の特任副院長 安藤廣美が第2代部長、そして現在、私、内田孝之が循環器病センター長と兼任して第3代部長を努めさせていただいております。
 当科での治療領域は、心臓・大血管・末梢血管にわたります。心臓では①弁膜症に対する弁形成術、弁置換術、②虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)に対する冠動脈バイパス術、左室破裂など心筋梗塞合併症の修復、③不整脈に対するペースメーカや植込型除細動器の植込み、また心房細動の外科的心筋焼灼術が主な手術となります。また、大血管では腹部胸部の大動脈瘤に対する人工血管置換術あるいは大動脈ステント内挿術、大動脈解離に対する緊急人工血管置換術を行っております。さらに、末梢血管では下肢静脈瘤に対するレーザー治療(日帰りも積極的に行っております)、静脈抜去術、閉塞性動脈硬化症に対するバイパス術、末梢動脈の動脈瘤に対する瘤切除、人工血管置換術などの手術を行っております。
 最近の特徴としては症例の高齢化、合併手術(バイパス+弁膜症、大動脈+弁膜症など)の増加、さらにより低侵襲な治療手技の増加があげられます。もちろん当科でもこれらの傾向に対応し、治療成績の向上を図るべく、より低侵襲な大動脈ステント治療の導入を2007年より開始し、その症例数は現在500例強となっています。また、静脈瘤に対しての日帰りレーザー治療、小切開低侵襲心臓手術(MICS)も導入、さらに2018年9月よりハイブリッド手術室が稼動開始し、カテーテル大動脈弁置換術導入も準備中です。
 また不整脈デバイス(ペースメーカ、植込型除細動器)植込み、下肢閉塞性動脈硬化症の治療では循環器内科との内科外科合同治療を多く行っており、現在準備中のカテーテル大動脈弁治療も内科外科合同でのチーム医療として取り組んでいます。
 しかし、治療として低侵襲化も重要ですが、75歳以下の若年症例では遠隔期QOLまで見据えたより根治性の高い治療法の選択も重要と考えています。標準的治療と低侵襲治療の適切な選択に加え、現在は①心房細動合併症例に対する積極的な外科的焼灼術併施による心房細動治療(脳血栓予防のための左心耳閉鎖術も含む)、②自己弁温存弁形成術、動脈グラフト使用による術後抗凝固剤、抗血小板剤の減量、不要化などの取り組みを行っております。
 心臓血管外科手術においては、手術そのものに加えて周術期の多職種連携でのチーム医療、遠隔期の患者さんのフォローも非常に重要となります。幸い当院では周術期の365日毎日リハビリテーションの施行、医師や看護師に加えて理学療法士、管理栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカーを交えた多職種回診・ミーティングを行い、最大限の術後回復サポートを行える体制となっております。
 また、当科外来は電話トリアージと完全予約制で、一人ひとりの患者さんに適した予約枠の設定、待ち時間の極力短縮に心がけています。また心臓ペースメーカ外来では受診案内、データベース整備の徹底により延べ600人以上の患者さんのフォロー率95%以上を維持しています。
 さらに大動脈瘤治療の一層のアクセス向上、治療成績向上のため、当科には大動脈治療センターも併設しています。大動脈瘤治療のお問い合わせ、受診予約などをすべて電話一本のアクセスでお受けして、適切な対応・治療を目指しています。
 ①常に技術を磨き続ける強い意志、②患者さんや周囲のスタッフへの優しさ、③困難な状況を乗り越える強い心と身体、の3つを常に大事にして、今後も筑豊地域の心臓血管病の外科治療に取り組んでいきたいと思います。

血管外科 部長 松元 崇

松元 崇

 我が国においては、今後超高齢化社会への伸展さらに食生活や生活様式などの欧米化に伴い脳梗塞、狭心症・心筋梗塞などの動脈硬化性疾患は今後さらに増加すると言われております。下肢の血管の動脈硬化に起因する末梢動脈疾患も同様であり、患者数は年々増加しており、このことは当院のある筑豊地域においても例外ではありません。この病気の怖いところは、症状のない無症候性の患者様が比較的多くおられ、症状があらわれた時には病状が進行されている方が多い事と、高率に多部位(脳、冠動脈、腎臓など)の動脈硬化性病変を合併する事です。病気を見逃されてしまったり、適切なタイミングで適切な治療を行わなければ大切な足を失うかもしれない危険な病気です。特に、足に潰瘍や壊疽ができてしまったいわゆる重症虚血肢の方では、各種の血行再建術で足を守る事はもちろんですがそれにくわえて、創部の処置や感染対策、リハビリさらには全身疾患(糖尿病、透析、脂質異常症、脳梗塞、心筋梗塞など)の管理など多職種での治療介入が不可欠です。
 このような状況下で、専門的に下肢末梢動脈疾患を含む血管疾患を診療する目的で2020年4月に当院に血管外科部門が創設され、部長として私が拝命されました。私はこれまで心臓血管外科医としての研鑽を積んでおりましたが、2010年に飯塚病院に赴任してからは末梢動脈疾患を含めた血管外科疾患治療の修練を積んできました。さらに2017年には重症虚血肢に対する国内トップレベルの症例数・臨床経験をほこる旭川医科大学病院 血管外科(東 信良教授)への留学も経験して、外科治療(バイパス術)、血管内治療(カテーテル治療)のいずれも経験を積んでまいりました。
 今後は、一人でも多くの筑豊地域の患者様の足を守れるよう微力ながら尽力して参りたいと思います。また血管外科では、下肢の末梢動脈疾患だけでなく下肢静脈瘤や腹部大動脈瘤などの静脈・大動脈疾患も対象としており、脳血管や冠動脈疾患以外の血管疾患に専門医が幅広く対応させて頂きます。

循環器内科 部長 西 淳一郎

井上 修二朗

 筑豊地域の基幹病院として、広大な医療圏から当院を頼りに数多くの循環器救急患者さんが来院・搬送されています。毎年200例前後にのぼる緊急カテーテル治療を要する急性心筋梗塞をはじめとして、緊急度や重症度の高い症例が非常に多く、高度急性期病院としての役割を24時間365日途切れなく果たすべく、スタッフ一同、日夜努力しています。
 急性期循環器救急疾患以外にも、既存のお薬では効果の乏しかった心臓病・血管病に対する最新の薬物治療(*1)や、最新の医療機器を搭載した血管内カテーテル治療器具を使用して、冠動脈疾患や下肢動脈疾患および心臓弁膜症への治療(*2)も行っており、筑豊医療圏の最後の砦として最先端の医療提供体制を構築しています(*1 心アミロイドーシスに対するタファミジス初回導入認定施設など, *2 僧帽弁閉鎖不全症に対する経皮的僧帽弁接合不全修復術MitraClip認定施設など)。
 近年は、心不全パンデミックとも呼ばれ増加の一途をたどる心不全疾患に対応すべく、併設する「心不全ケア科」が主体となり多職種チーム医療を展開しています。なかでもトータルケアを要する重症末期心不全においては、同科での基礎的心不全緩和ケアの導入から、連携する「連携医療・緩和ケア科」による専門的緩和ケアへのシームレスな移行を通じて、より充実した全人的医療の提供を行っています。
 一方、医師教育においては、広範多岐にわたる循環器診療分野を全般的に学べるよう、指導医がローテーションで得意分野の診療指導を順次行う専門医研修プログラムを採用しています。研修期間中に、連携する全国トップレベルの循環器医療機関へ半年~1年間出向研修することも可能です。循環器専門医を目指して、毎年多数の医師が本プログラムに応募してくださることが、当科の力と励みになっています。
 当院の原点であるPatient Firstの医療を実践すべく、3つのS(Smile/Safty/Satisfaction)を心掛けながら、これからも日々の診療に従事していきたいと思います。