治療法 Pick up
- 心不全緩和ケア
- ~「幸せ寿命」を延ばそう~
目次
対象疾患
心不全
心不全とは、「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」です(2017年日本循環器学会発表)。心不全は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進行し、最終的に死に至る病です。全ての心不全患者さんと、そのご家族が心不全緩和ケアの対象となります。
心不全の原因となる具体的な心臓病としては、
- 虚血性心疾患:狭心症や心筋梗塞
- 心筋症:拡張型心筋症や肥大型心筋症
- 高血圧性心臓病
- 心臓弁膜症
- その他、心臓の機能を損なう疾患
などがあります。
治療法
心不全の治療には、点滴等による急性期の治療に続き、薬物や心臓カテーテル、手術など心臓病の治療がなされ、多くの患者さんを救っています。しかし、心不全は進行すると下図のように呼吸困難や倦怠感、むくみ以外にも、疼痛や不安、抑うつなどさまざまな症状を伴い、生活の質=QOL(Quality of Life)を損ないます。
これらの心不全に伴う症状にも介入する必要性が近年認識されてきました。そこで、当院では緩和ケア科とともに、心不全治療に緩和ケアの考えを導入しました。緩和ケア=治療停止ではありません。心不全への治療は継続しながら、全人的苦痛へ介入し、生活の質の維持や改善するための多面的な「治療」です。
また、緩和ケアの考えにおいて重要だとされるのは「もしもの時にどう過ごしたいか」について考えることです。これは「アドバンス・ケア・プランニング」と呼ばれています。今後病状が悪くなった時に、どのような治療やケアを受けたいか、何を大切にしたいかを、患者さんがご家族や医療従事者、介護従事者など周囲の方とあらかじめ相談しておくことは、ご本人とご家族の生活の質を高めると言われています。
そういった「全人的苦痛」や「アドバンス・ケア・プランニング」に取り組むべく、現在は入院の重症患者さんを対象とし、命の危険のある方やさまざまな症状で困っている患者さんに、面談や回診を通じて緩和ケアの介入を行っています。メンバーは、循環器内科・緩和ケア科の医師のみでなく、慢性疾患看護専門看護師やリエゾン精神科看護師など、多職種から成るハートサポートチームです。心不全の身体的苦痛のみでなく、精神的苦痛や社会的苦痛、スピリチュアルペイン(病気によって自分らしく生きられなくなったことに対する辛さ)など、患者さんのさまざまな苦痛を拾い上げ、患者さんが幸福を感じる時間、「幸せ寿命」を延ばせるような活動を目指しています。
専門医師
心不全緩和ケアは、当院の緩和ケア科医師と連携して取り組んでいます。
地域の医療機関の皆様へ
当院は全国に先駆けて、急性期総合病院での心不全緩和ケアの取り組みを開始しました。「過ごしたい過ごし方を、過ごしたい場所で出来る地域づくりに貢献する」というビジョンを掲げ、地域でご活躍される先生方との連携に努めて参りたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。