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部長 松元 崇
TEL 0948-29-8024(外来直通)

診療科の特徴

概要

 2020年4月1日より筑豊地域唯一の「血管外科」を開設することとなりました。
 近年、高齢化や食生活の変化に伴う糖尿病患者さんの増加などから全身の血管に動脈硬化による疾患を発症される方が増えてきています。特に、下肢(足)の動脈に動脈硬化をおこされた(下肢末梢動脈疾患)の方では、下肢の血液の流れが悪化し、その程度によりいろいろな症状が見られます。進行すれば足の皮膚潰瘍や壊疽(えそ:細胞が腐敗して足が機能しなくなる)をおこし、適切な処置を講じなければ足を切断する可能性もあります。普段からあまり歩かない方などでは、いきなり重症となって発見される患者さんも近頃増えています。
 しかし、世間における下肢末梢動脈疾患の認知度はまだまだ十分ではなく、病院を受診されたときにはかなり病状が進行していることも多く認められます。さらに下肢の末梢動脈疾患を起されている方はからだの他の臓器(脳、心臓、腎臓など)の動脈硬化による病気を合併していることがとても多い傾向にあります。下肢だけではなく全身の心臓・血管系の病気に関するスクリーニング(鑑別)と適切な治療が不可欠です。
 また、血管外科では、下肢の末梢動脈疾患だけではなく下肢静脈瘤などの静脈疾患や腹部大動脈瘤・腸骨動脈瘤などの動脈瘤も治療の対象としており、脳血管や冠動脈疾患以外の血管疾患※1に対して地域住民のみなさんへ質の高い診療を提供できるよう尽力してまいります。

※1:脳血管疾患は、当院脳神経内科、脳神経外科が診療を行います。冠動脈疾患は、当院循環器内科、心臓血管外科が診療を行います。

 

診療内容

 1. 下肢末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症):血管内治療、外科手術、ハイブリッド治療(血管内治療+外科手術)
 2. 急性動脈閉塞症:血管内治療、外科的塞栓除去術
 3. 内臓動脈瘤、末梢動脈瘤:血管内治療、外科手術
 4. 腹部大動脈瘤、腸骨動脈瘤:ステントグラフト内挿術、人工血管置換術
 5. 下肢静脈瘤:血管内焼灼術(レーザー焼灼術)、ストリッピング手術、静脈瘤硬化療法

   

1. 下肢末梢動脈疾患
 血行を良くして下肢の血液の流れを改善する血行再建術(けっこうさいけんじゅつ)という治療が必要です。血行再建の術式には、「血管内治療」と「バイパス手術」があります。
 血管内治療とは、血管の内部にカテーテルという細い管や針金(ガイドワイヤー)を通して狭いところや詰まっているところを内側からバルーンという風船で広げたり、ステントという金属で出来た筒のようなものを置いて再度、血管が狭くなったり(狭窄)やつまったり(閉塞)を起こさないようにします。
 バイパス手術は足の静脈や人工血管(じんこうけっかん)を使って、流れの悪い血管の代わりになる新たな血液の迂回路(バイパス)を作成して血流を改善します。
 血管内治療は外科手術など皮膚を切開することなく、局所の麻酔のみで治療を行えるため体への負担が軽いです。ただし、血管の病変部位や範囲、病状などによってはバイパス術の方が有効なこともあり、患者さんの症状や状態にあわせた最適な治療方法を選択する必要があります。複雑な病変によっては、血管内治療と外科手術を組み合わせたハイブリッド治療という治療法もあります。

2. 下肢静脈瘤
血管内焼灼術(レーザー焼灼術)
 治療が必要な静脈内にファイバーと呼ばれる細い管(=カテーテル)を通して、先端から照射されるレーザー光で静脈を凝固・閉塞させる治療法です。傷口が小さく目立たず、全身麻酔も不要で合併症も少なく身体への負担が少ない手術です。入院も必要ありません。家事などの日常生活であれば手術当日からシャワー浴、立ち仕事は3日目から可能です。2011年から保険適応となったこともあり、当院では2014年9月から日帰りでのレーザー治療を開始しています。2015年度からは術後の痛みや皮下出血がさらに少ない1470nmレーザー装置による治療を、2018年からは従来よりも細いファイバーによる治療を開始しました。もちろん、患者さんお一人お一人の静脈瘤のタイプや程度は異なり、レーザー治療が不向きな方もおられますので、事前に正確な診断を行い適切な治療法を選択するのが重要です。

ストリッピング手術
 小さな切開で治療を行う部位の静脈を露出させ、ストリッパーという器具を使用して血管を抜去する手術です。この術式は治る率が高く、再発率が低いことが特徴です。しかし、通常は全身麻酔が必要で、身体への負担が大きいため入院が必要となります。手術の傷も残りますし、血管周囲の神経の障害により下肢のしびれや知覚が鈍くなる症状が残ることがあります。

静脈瘤硬化療法
 硬化剤という薬剤を静脈瘤内に注入することで静脈を閉塞(ふさぐ)させる治療法です。小さな静脈瘤や他の治療で残った静脈瘤などには効果がありますが、大きな静脈瘤に対してはこの治療だけでは再発率が高く、前述の外科的処置(血管内焼灼術、ストリッピング手術)との併用が必要です。治療の後、数か月間は色素沈着といって皮膚が黒ずんできたりすることがあります。

3. 腹部大動脈瘤、腸骨動脈瘤
 従来から行われている腹部を大きく開いて行う手術(動脈瘤切除、人工血管置換術)や血管造影装置を使用し血管内にカテーテルという細い管を挿入して行うステントグラフト(人工血管にバネ状の金属のついたもの)内挿術での治療が可能です。患者さんお一人お一人の動脈瘤や血管の形状も異なりますので、全身状態なども検討を行い、いずれの手術が望ましいかをご本人・ご家族ともよく相談したうえで治療を行います。

血管外科News&Topics

【1】足に血行障害があると、初期症状としては足の冷感や歩行時の足の痛み(間欠性跛行)といった軽い症状であっても、進行するとじっとしていても足の痛みを感じるようになったり(安静時痛)、小さな傷から足の潰瘍・壊疽を生じます。適切な時期に適切な処置を行わなければ、足の切断に至るような危険性もあります。

【2】2018年度にハイブリッド手術室が完成し、末梢動脈の病気に対する血管内治療と外科手術を組み合わせたハイブリッド治療も可能となりました。これにより手術時間の短縮や出血量の減少など、患者さんにより低侵襲で安全な治療が提供でき、手術成績の向上や入院期間の短縮といった効果も期待されます。

【3】これまでは、末梢動脈疾患の外科治療に際しては、原則全身麻酔での手術が必要でした。しかし末梢動脈疾患の患者さんは、高齢で心臓疾患や脳血管疾患などの合併(症)疾患をお持ちの方も多く、全身麻酔に伴う合併症も懸念されました。現在当院では麻酔科の協力のもと、神経ブロック麻酔の導入により安全で患者さんの負担を軽い麻酔方法による手術が行えるようになりました。

【4】下肢静脈瘤に対しては、低侵襲の血管内焼灼術(レーザー治療)を第一選択に治療を行っています。最新の治療機器を使用した治療を行っており、全身麻酔も必要なく、患者さんのご都合にあわせて日帰り、または1泊入院での治療も可能です。

【5】血管外科では、足に傷(潰瘍、壊疽など)やトラブルを抱えてしまった患者さんを対象に、足の病気の原因を見つけることに加えて、原因となる病気や傷の治療、現在お持ちの併存疾患のコントロールあるいはリハビリなどを多くの職種(循環器科・血管外科・形成外科・内科、看護師、理学療法士、栄養士など)と協力のもとで行い、一人でも多くの方の足を守ることができる様に務めてまいりたいと思います。