部長 安田 学
TEL 0948-22-3800(内線:5324)
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診療科の特徴
I. 診療概要
飯塚病院呼吸器外科は日本呼吸器外科学会の基幹施設です。安田 学、西澤夏將 に呼吸器腫瘍外科の近石泰弘を加えた呼吸器外科専門医3名、および専門医を目指している 小林美苑、杉本 有の 計5名で、肺がん、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、胸膜中皮腫などの腫瘍性疾患、膿胸、肺化膿症、肺結核などの炎症性疾患、自然気胸、胸部外傷、重症筋無力症など多岐にわたる呼吸器疾患に対して手術を中心とした治療を行っています。
当科では受診された患者さんが1日でも早く治療を受けられるよう、初診日から2週間以内に手術を行う診療体制を整えています。
II. 手術実績
2023年の手術数は307例、うち肺がん手術は159例でした。コロナウイルス感染拡大に伴い変動がありましたが、この5年間(2019~2023年)の年間手術数は300例前後です(図1)。
III. 手術内容
2023年の呼吸器外科手術 307例の内訳は、肺がん 159例、転移性肺腫瘍 17例、縦隔腫瘍 26例、自然気胸 26例、膿胸 30例、等です(表1)。うち内視鏡手術は 266例(87%)に行っています。
- 1. 肺がん
- 【手術成績】 2023年の肺がん手術数は 159例で、うち内視鏡手術を 143例(90%)に行いました。2023年の肺がん手術症例の平均年齢は72歳 、75歳以上の高齢者が 64例(40%)、うち最高齢は91歳で、高齢者の割合は昨年と同様でした。術後の在院日数は6.5日(中央値)、1ヶ月以上の入院を要した症例は3例(1.9%)でした。また術後30日死亡および術後在院死亡はいずれも0、術後合併症率は9.4% (Clavien-Dindo分類grade2以上)でした。5年生存率(図2)は手術全体で74%、病期1A期(大きさ3cm以下でリンパ節転移がない肺がん)で84%、病期3A期(縦隔リンパ節に転移がある肺がんなど)で57%です。
【手術適応と術式】 肺がん診療ガイドラインに準じ、基本的には病期1A期から3A期までの患者さんに手術を行います。手術のアプローチ方法には内視鏡手術(ロボット支援手術・胸腔鏡手術)、および開胸手術があります。個々の患者さんの状態(がんの進行度と全身状態)を慎重に検討して選択しますが、約9割程度の患者さんに内視鏡手術を行っています。早期肺がんには根治的縮小手術(区域切除や部分切除)、また局所進行肺がんには拡大手術と術前治療をエビデンスに基づき積極的に行っています。
- 2. 気胸
- 安静や胸腔ドレナージで改善しない気胸は手術が必要です。また再発した気胸や初めての気胸でも程度が重症な場合は手術をお勧めしています。内視鏡手術のよい適応で手術後は通常2~3日で退院になります。
- 3. 転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍
- 転移性肺腫瘍は原発巣がコントロールされているなどのいくつかの条件を満たせば肺転移巣の切除で良好な予後が得られます。他にも縦隔腫瘍(胸腺腫など)を含め、その多くを内視鏡(ロボット・胸腔鏡)手術で行います。
- 4. ロボット支援内視鏡手術
- 肺がん・縦隔腫瘍に対してロボット支援内視鏡手術を行っています。現在この手術は「ダビンチ」という機械を使用しており、4本のアーム(手)に付けられたカメラと3本の鉗子(手術器具)を体内に挿入し、執刀医は3Dモニターを見ながら座ってロボットを操作します。執刀医の細かな手の動きをコンピューターが忠実に伝え、アームが連動して手術を行う仕組みです。従来の胸腔鏡手術と比較しロボット独自の機能によって、正確で安全な手術が期待できます。2023年は86例のロボット支援内視鏡手術を行いました。
- 5. コーンビームCT併用内視鏡手術
- カメラ(内視鏡)で見えない小さな肺がんに対しては、手術中にCT(コーンビームCT)撮影を行い、病変部の位置を確認しながら内視鏡下に切除しています。さらにICチップを利用した病変の局在評価法(シュアファインド)を併用したり、創部を小さくする工夫(Reduced Port Surgery)を行うことで、的確な切除範囲を担保しながら痛みも少ない低侵襲手術を行っています。2023年は56例の手術を行い、いずれの小さな病変も内視鏡下に完全切除できました。
呼吸器外科News&Topics
- 2023年の手術数は307例、うち肺がん手術は159例で、この5年間(2019~2023年)の年間手術数は300例前後です。
- 積極的に低侵襲手術(体に負担の少ない内視鏡手術)を行っています。2023年は全手術の87%、肺がん手術の90%が低侵襲手術でした。
- 肺がん・縦隔腫瘍に対してロボット支援内視鏡手術を行っており、2023年は86例の手術を行いました。従来の胸腔鏡手術に加え、低侵襲手術(体に負担の少ない内視鏡手術)の選択肢が増えました。
- カメラで見えない小さな肺がんに対しては、CT撮影を併用した内視鏡手術を行っています。2023年は56例の手術を行い、いずれの小さな病変も内視鏡下に完全切除できました。
- 呼吸器病センターとして、呼吸器腫瘍外科、呼吸器内科、呼吸器腫瘍内科との連携を密にしながら呼吸器疾患の集学的治療を行っています。