飯塚病院 外科

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各疾患のご説明と当科の取り組み

肝胆膵外科について

肝胆膵外科とは

日本肝胆膵外科学会の認定制度 肝臓・胆道・膵臓に関する外科手術を担当する領域です。肝臓・胆道・膵臓の外科手術は、消化器外科手術の中で、特に難易度が高いといわれています。この難しい手術を安全に、かつ確実に行うことのできる外科医と病院を日本肝胆膵外科学会が認定しています。

【日本肝胆膵外科学会:市民向けホームページ】
http://www.jshbps.jp/modules/public/index.php?content_id=1

膵臓がんの腹腔鏡下手術

 膵臓の手術は、消化器外科の中でも難しい手術のひとつですが、近年、この領域にも腹腔鏡下手術が導入されてきています。我が国では、2012年より保険適応となりましたが、当初、適応となる疾患は、膵臓の良性腫瘍、あるいはいわゆる膵臓癌ほど“たち”が悪くない低悪性度腫瘍で、具体的には膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、神経内分泌腫瘍(NEN)などでした。2016年には、通常の膵臓癌に対しても保険適応となり、「膵癌診療ガイドライン2019年版」(以下ガイドライン)では、膵臓癌に対しても「膵体尾部癌に対し、腹腔鏡下膵体尾部切除術を行うことを提案する。ただし、多臓器浸潤がなく、血管合併切除がない場合に限定し、熟練した施設で行うべである。」と記載されました。
 現在の腹腔鏡下手術の適応は、膵臓の真ん中から左側を切除する膵体尾部切除術です。膵の右側を中心に切除する(亜全胃温存)膵頭十二指腸切除術は、消化器外科の分野では最も難しい手術の一つであり、現時点ではガイドラインでも推奨されていませんし、当科でもまだ行っていません。

 ご存知のように、腹腔鏡下手術のメリットは、傷が小さい、術後の痛みが少ない、回復が早いなどであり、総じて患者さんへの負担が少ないことです。開腹手術では大きな傷になりますが(図1)、腹腔鏡下手術では、5~12㎜の孔が4~6ヶ所くらいで済みます(図2)。実際の手術は、臍に12㎜くらいの切開をおき腹腔鏡を挿入し、お腹の中をカメラで見ながら行います(図3)。様々な手術機器を用い、膵臓の左側を周りの組織から分離し、最後に自動吻合器で膵臓を切断します(図4)。傷の1か所を約5㎝に広げ、切除した組織を体外に取り出します。
 当科では、2014年に腹腔鏡下膵体尾部切除術を導入しました。今までに十数人の患者さんに実施し、幸い全員順調に退院されました。開腹手術では、退院までの術後入院期間が14~21日であるのに対し、腹腔鏡下膵体尾部切除術では9日(中央値)でした。現在、基本的には良性または低悪性度腫瘍に対して行っていますが、今後、徐々に膵臓癌にも行っていく予定です。

 一方、外科医にとっては、腹腔鏡下手術は従来の開腹手術よりも高い技術が求められます。私自身は、腹腔鏡下手術はあくまでも開腹手術の延長線上にあり、開腹手術の経験や技術が十分でなく腹腔鏡手術を行えば、リスクだけが大きくなり大事故にもつながりかねないと考えています。膵臓の手術は、症例数の多い病院いわゆる「ハイボリュームセンター」で行ったほうが良いとされています。



 また、腹腔鏡下膵切除術には国の定めた施設基準があり、どの病院で行っても良いというものではありません。当科は、この施設基準もクリアしています。
最後に、患者さんに適切で安全な腹腔鏡下膵臓手術を提供できるよう今後も努力を続けてまいります。このような病気でお悩みの方がいらっしゃいましたら、是非当科にご紹介いただければ幸いです。

当科での肝胆膵外科について

■ 当科は「日本肝胆膵外科学会高度技能専門医修練施設(A)」です。

 日本肝胆膵外科学会では、各施設で行われる「高難度肝胆膵外科手術(※)」の年間症例数に基づき、設定した基準値を上回る実績を残している施設に対して、「日本肝胆膵外科学会高度技能専門医修練施設」の認定を行っています。

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