外科 > ご利用のみなさんへ > 各疾患のご説明と当科の取り組み > 肝臓がん
肝臓は病気になっても自覚症状が出にくいことから「沈黙の臓器」と言われています。そのため、肝臓がんを発症した場合も全く症状が出ないことが多く、発見から5年後の生存率が最も低いグループに含まれるがんです。また、他の臓器への転移は比較的少ないのですが、治療しても時間が経つと肝臓の中に再発する確率が非常に高いことが挙げられます。
肝臓がんは、その6割くらいがB型かC型肝炎ウイルスに持続感染している方に発症しており、肝臓がんの予防には、B型とC型肝炎の検査を受けることが重要です。
近年、新しい薬や治療法の確立により、肝炎ウイルスの治療や病状コントロールが可能になり、発癌の確率を下げることができるようになりました。一方で、肝炎ウイルスに感染していないのに肝臓がん(非B非Cの肝臓がん)になる方が増えている現状があります。その背景には、他のがん疾患同様、飲酒・糖尿病・肥満などの生活習慣に関係する要因や高齢化などがあります。
肝臓がんの治療法には、外科的治療として肝移植と肝切除が、内科的治療としてラジオ波焼灼術、血管塞栓術、動注療法、分子標的薬投与などがあります。しかし肝臓がんの進行状態、肝臓の予備能力により選択できる治療法が異なってきます。
例えば切除を行うとしても、肝臓は生命維持に不可欠な臓器であり、全摘することはできません。どれだけの容量の肝臓を切除できるのか(どれだけ残さないと生きていけないか)が肝臓の予備能力であり、一方でがんの大きさ、個数、場所が腫瘍側の因子となり、この2つのバランスで治療法を選択します。
最も治療成績が高いのは肝移植です。しかし、国内の臓器移植を取り巻く状況を鑑みると、治療の第一選択とするのは困難です。
地域がん診療連携拠点病院である飯塚病院では、治療経験豊かなスタッフを中心に、内科的治療・外科的手術に加え、放射線治療・緩和ケアといった治療を行っています。
肝臓がんは、がんの発生母地となる基礎疾患(ウイルス性肝炎や生活習慣病など)への治療、がんの再発率の高さ、がん治療法の選択、肝硬変に合併する他の疾患(食道静脈瘤や腹水など)への治療など、他の臓器のがんと比べると複数の診療科と連携したより横断的な治療が必要とされます。
当科では、まずは確実かつ安全な手術を、そして、できる限り患者さんにやさしい低侵襲治療(体への負担が少ない治療)を心がけています。
また進行した状態にあっても、技術、経験を駆使し、延命につながる可能性がある限りは積極的治療へ挑戦します。