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2022年11月9日
今年の中央検査部のTQM活動は、耳鼻科領域の穿刺吸引細胞診における不要な穿刺の削減をテーマに活動を行いました。そして、2022年10月15日に行われたTQM大会で最優秀賞をいただきました!
腫瘤などの病変部に対して針を刺して細胞を採取し、顕微鏡下で観察して病理学的に診断する検査のことです。使用する針は採血と同じくらいの太さで、侵襲性が低く、腫瘤性病変に対する術前診断のための有用な検査法として広く普及しています。しかし、一部では採取されたものが末梢血成分のみなどで評価が行えず検体不適正となることがあります。その場合、後日再穿刺が必要となり、診断の遅れや医療費の面からも、患者・医療従事者ともに負担が増加します。このような症例を減らすために、1症例につき複数回穿刺を行い、不適となる確率を抑えているのが現状です。2021年の1年間で穿刺吸引細胞診を行った126例を対象に調査した結果、複数回穿刺された症例は97例で、そのうち75例は1回目の穿刺で適正でした。このことから2回目以降の穿刺は結果的に不必要であった可能性が考えられました。そこで、不要な穿刺をなくし、検体不適となる症例数を減少させることで、術前診断に有用な情報を提供するとともに、患者・医療従事者双方の負担を軽減させることを目指しました。
分析の結果、①臨床医/技師に適正な検体が採取されている確信がないこと、②採取される細胞量がそもそも少ないこと、③エコーを使用して針先の位置を確認していない症例があることが要因に上がりました。これをうけ、ROSE(迅速細胞診の略で、目的の細胞が採取できているかどうかを顕微鏡下で迅速に評価する技術)およびLBC(液状化検体細胞診の略で、従来は標本作製後に破棄していた針の中を専用固定液で回収し、検体の一部とすることで、細胞成分を残らず回収する方法)を用いることにしました。
対策を行い、2022年8月1日から8月31日の期間に穿刺吸引細胞診を行った症例は13例で、このうち不必要に複数回穿刺された症例は0例でした。穿刺回数が減ったことで最終的な鏡検枚数を削減できたこと、また、不適正症例がなくなったため後日再検査を行う際に技師が呼び出されることがなくなったことで、業務の効率化に繋がりました。さらに、ROSEに要する時間は平均5.4分と業務の大きな負担になっておらず、患者・医療従事者双方の負担の軽減に成功しました。今後は、運用を継続しつつ、改善を続けていきたいと思います。