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部長 萱島 寛人
TEL 0948-29-8137(外科外来直通)

診療科の特徴

 肝胆膵領域の外科手術には高度な技術を要するものが多く含まれていることから、日本肝胆膵外科学会では高度技能専門医制度を設け、高難度の肝胆膵外科手術を安全に行い得る施設を認定しています。当院は九州で15施設、福岡県で6施設が認定されている肝胆膵外科高度技能専門医制度修練施設A(年間50症例以上の高難度肝胆膵外科手術数を施行している)の一つです(2021年7月時点)。当科での肝胆膵悪性疾患の手術数は年間150例前後(高難度手術70~80例)であり、常に九州5位以内に入っており、九州を代表する『ハイボリュームセンター』の一つです。
 180例前後の胆嚢摘出術、急患手術と併せますと年間350例前後の手術件数となりますが、2021年度は、長年筑豊地域での肝胆膵外科を牽引されてきた梶山 潔 前 副院長 兼 外科統括部長の異動に伴い、私(萱島寛人 肝胆膵外科部長)(高度技能専門医)と黒田陽介 診療部長(肝胆膵外科修練医)の肝胆膵外科専門医2名と後期レジデント(外科専攻医)1名の合計3名で診療にあたっています。昨年度より人数は減少しましたが、手術を含めた診療の質を落とすことなく、臨床に臨んでいます。
 肝臓手術に関しては年間90例前後の肝切除を行っています。肝細胞癌に対しては、日本肝臓学会によって策定された「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン」の治療アルゴリズムに則った治療選択を行っています。患者因子(肝機能)と腫瘍因子(腫瘍径、腫瘍個数)から適切な治療法を選択することが重要であり、肝切除では患者の安全性(残存肝)と腫瘍の制御(切除肝)のバランスを如何にすべきかが最も重要です。肝切除において最も致死的な合併症の一つが術後肝不全であり、術前評価と準備、術中の工夫、術後管理が重要であることは言うまでもありません。当院では肝切除を受けられる患者さんのほぼ全例でDIC-CTを併用した造影CTを行って頂き、術前肝切除3Dシミュレーションを行っています。①「正確な肝重量、特に、切除肝重量および残肝率(残存肝の割合)の把握」、②「腫瘍と周囲の脈管(肝動脈、門脈、肝静脈、胆管)との正確な位置関係の把握」が目的です。Thin-sliceでのCT画像を元に術前3D画像を作成し、肝実質、各種脈管、腫瘍の三次元的位置関係を十分に把握した上で綿密な肝切除計画の立案を行い、術前肝切除3Dシミュレーションに基づいた安全で確実な手術を行うことを基本にしています。
 2015年7月1日に改訂された日本肝臓学会による「肝がん白書」によると、肝癌死亡者数には特徴的な地理的分布があり、西日本で高い傾向にあるとされています。肝癌による死亡率の高い県として、佐賀県、福岡県、愛媛県、和歌山県などが上位に位置しており、上位10都道府県の約4分の3が中国、四国、九州地域で占めています。1993年以降20年連続で福岡県は上位5位以内に位置しており、肝癌治療の役割が非常に重要な地域であると言えます。
 膵臓手術に関しては年間50例前後の膵切除を行っています。その半数以上が膵頭十二指腸切除(PD)といわれる侵襲の大きな手術です。膵癌診療ガイドライン2019年版(日本膵臓学会)では、膵頭十二指腸切除術(PD)を年間20例以上行っている『ハイボリュームセンター』での手術が推奨されていますが、当科は12年連続でハイボリュームセンターを維持しています(2021年7月時点)。膵頭十二指腸切除(PD)に対する腹腔鏡下手術は行っていませんが、膵体尾部切除(DP)に対しては積極的に腹腔鏡下手術を導入しています。
 肝胆膵領域の外科手術は、臓器の特性、癌の悪性度の高さなどから、安全性と根治性のバランスを保つことがなかなか大変です。手術が長期予後を期待できる治療法となる一方で、術後の合併症は時に致死的となることがあり、前述の技術力に加え判断力も大きく問われる領域です。
 当科では、定期的にNational Clinical Database(NCD、わが国で行われている該当領域手術の95%以上が登録されている)のフィードバック機能を利用して肝切除及び膵切除症例の術後30日死亡率、手術関連死亡率、胆汁瘻、膵液瘻などの術後合併症発生率の振り返りを行っていますが、予測発生率よりも常に良い結果を維持しています。
 飯塚病院には専門性の高い肝臓内科、消化器内科(胆膵)、画像診療科(放射線科)があり、治療方針の決定にあたっては各科との連携を緊密に保ちつつ、患者さん各人の背景、意思を大切にし、個々の症例に適した納得の行く治療を受けていただきたいと考えています。
 また技術面においては、血管切除・再建を要する手術、心停止・人工心肺下の肝切除術など、40以上の専門科を有する総合病院だからこそ出来る手術にも積極的に取り組んでいます。
 私自身は今年で卒後20年目となりますが、現在までに500例以上の高難度の肝胆膵外科手術を経験し、そのうち約300例以上の執刀を行ってきました。この経験を是非筑豊地域に還元したいと思っています。
 症例数の多さのみならず、治療成績においても全国レベルを保ち続け、筑豊地域の医療をなお一層盛り立てて行けるよう今後も努力を重ねてまいる所存です。
 先生方におかれましては、今後ともよろしくご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


肝胆膵外科News&Topics

 内視鏡手術支援ロボット「da Vinci® Surgical System」を使うロボット支援下手術の保険適応が2018年春一挙に拡大され、外科領域では食道がん、胃がん、大腸がんが保険適応となりました。現在の腹腔鏡下手術では①「手ぶれによる視野や術野のぶれ」、②「鉗子先端の自由度の欠如による操作制限」に伴い、精緻な操作、特に吻合や止血操作に限界があるとされています。ロボット手術では鉗子先端が多関節であることで自由度が増し、また術者の手ぶれを抑えるfiltering機能により精緻な操作が実現されており、これまでの腹腔鏡下手術における課題を克服しています。
 当院でも「da Vinci® Surgical System」が導入されました。肝胆膵領域の手術は複雑で繊細な手術であり、実はロボット支援下手術は精緻な操作を必要とする肝胆膵外科領域においてこそ活用されるべきであると考えられています。近い将来、肝胆膵領域においてもロボット支援下手術が保険適応となる日を心待ちにしています。