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呼吸器外科の手術について


手術実績

2022年は呼吸器外科で301例の手術を行い、そのうち肺がんに対する手術が一番多く164例でした(表1)。肺がん手術の内訳を表2に示しますが、8割以上の症例に対して内視鏡手術(低侵襲手術)を行っています。またロボット支援内視鏡手術は48例に対して行いました(表3)。



手術について

 当科の手術方法は、大きく内視鏡手術(低侵襲手術)と開胸手術に分かれます。内視鏡手術では、ロボット支援内視鏡手術と胸腔鏡手術を行っています。以下、詳しく説明致します。

  1. ロボット支援内視鏡手術について
  2. 胸腔鏡手術について
  3. 見えない小さな病変に対する内視鏡手術について
  4. 開胸手術について

1 ロボット支援内視鏡手術

 当院では2021年5月より泌尿器科でロボット支援手術を開始しました。呼吸器外科は2022年1月より肺がん・縦隔腫瘍に対してロボット支援内視鏡手術を開始しました(肺がんと縦隔腫瘍手術の一部で保険診療が認められています)。
 ロボット支援手術とは執刀医がロボットを操作しながら行う内視鏡手術のことです。現在この手術は「ダビンチ」という機械を使用して行われています。肺がん手術の場合は、脇の下に約1cmの小さな傷(ポート)を3つ、および約3-4cmの傷を1つ作り、手術を行っています(図1)。


 縦隔腫瘍の場合は、腫瘍の場所により肺がん手術と同様に行う場合(図1)と、両脇に約1cmの小さな傷(ポート)を3つ、みぞおちのあたりに約3cmの傷を1つ作り、手術を行っています(図2)。

 「ダビンチ」には4本のアーム(手)があり、それに付けられた内視鏡カメラと3本の鉗子(手術器具)を体内に挿入し、執刀医は3Dモニターを見ながら座ってロボットを操作します。執刀医の細かな手の動きをコンピューターが忠実に伝え、アームが連動して手術を行う仕組みです。


 直感的に操作できるだけでなく、手ブレ防止などロボット独自の機能によって、正確で安全な手術が期待できます。
ロボット支援内視鏡手術の利点
[1] 術野が立体的で広く、鮮明
立体的な3Dモニターで術野を10倍まで拡大して見られるため、細部の手技が正確に行えます。呼吸器外科手術では心臓の近くの血管や気管支の剥離などミリ単位の正確性が求められますが、拡大視野で細かい手術を行うことができます。
[2] 人の指先以上の動きを実現
従来の内視鏡手術では直線的な鉗子(手術器具)を使用します。呼吸器外科の手術では胸郭(胸骨や肋骨)の制限があるため、直線的な鉗子の胸腔内操作に限界がありました。ところが「ダビンチ」の鉗子は人間の手首以上の可動域と、柔軟でブレのない確かさを持ち、指先にも勝る細かな手術操作を可能にしています。
ピール・ザ・グレープ
折り紙
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[3] 術後の早期回復
術翌日朝より食事、歩行を再開します。術後の痛みも少なく、高齢の方でも約1週間程度で自宅退院が可能です。

2 胸腔鏡手術

 ロボット支援内視鏡手術では執刀医がロボットを操作しながら行いますが、胸腔鏡手術では執刀医が直接鉗子(手術器具)を操作して行います。当科では脇の下に約1-2cmの小さな傷(ポート)を2-3つ、および約3-4cmの傷を1つ作り、胸腔鏡手術を行っています(図3)。
 胸腔鏡手術の最大の利点は、執刀医が鉗子を通して触覚を得ることです(ロボット手術では執刀医は触覚を得ることができません)。肺がんや転移性肺腫瘍に対する縮小手術(部分切除)、またリンパ節転移や周囲に浸潤がある肺がんや縦隔腫瘍の一部、あるいは気胸・膿胸といった疾患に対する手術が対象となります。
 さらに症例により1カ所の傷で行う胸腔鏡手術(Uniportal VATS)も行っています(図4)。
 術後経過は術翌日朝より食事、歩行を再開します。高齢の方でも約1週間程度で自宅退院が可能です。


3 見えない小さな病変に対する内視鏡手術(コーンビームCT撮影併用胸腔鏡手術)

 カメラで見えない小さな肺がんに対する内視鏡手術では、肺がんがどこにあるのか正確に把握できない手術となります。このため従来までは、傷を拡げ触って位置を確認するか、肺を余分に大きく切除せざるを得なくなり、患者さんにとって負担が増える手術となっていました。また手術前にCT検査を行いながら肺に針を刺し目印を置き(CTガイド下マーキング)、手術室に移動してから切除する方法もあります(当科でも以前はこの方法を採用していました)。しかしこの方法では、肺に針を刺すことで重い合併症(空気塞栓、気胸、血胸)を引き起こすことが知られています。またCT検査室と手術室とを移動しなければなりません。
 当院では2018年10月にハイブリッド手術室が完成しました。このハイブリッドとは、CT検査装置(コーンビーム CT)と手術台がひとつに組み合わさったことを表します。つまり手術を行いながら同時にCT検査も行うことができるようになりました。カメラで見えない小さな肺がんに対して、CTという目で正確にがんの位置を把握することができ、内視鏡下に的確に切除することが可能となりました。現在までに150例以上の内視鏡手術をハイブリッド手術室で行い、いずれの小さな肺がんも内視鏡下に完全切除することができました。

4 開胸手術

 内視鏡手術は小さな創(ポート)で手術を行いますが、開胸手術では脇の下に大きな創部(約20-30cm程度の皮膚・筋肉の切開および肋骨の切離)を作り、手術を行います(図5)。
 この手術方法の最大の利点は、術野に手を入れることが可能となるため、執刀医の触覚を最大限に使うことができることです。心臓に近い血管剥離など危険を伴う操作を、最も安全かつ確実に行うことができます。当科では術前治療(放射線治療や抗がん剤治療)を行った局所進行肺がん症例や、肺以外の臓器を合併切除・再建が必要な悪性腫瘍症例に対して開胸手術を行っています。
 また内視鏡手術中に安全面や正確性が担保できないと判断した場合も、開胸手術に変更します。一番大切なことは、低侵襲を優先することではなく、安全面や確実性に配慮した手術を行うことです。
 開胸手術の欠点は術後の痛みですが、麻酔科と協力し硬膜外麻酔を術後も併用することや鎮痛薬の進歩により、術翌日より食事や歩行が可能な程度に緩和可能です。おおよそ1ヶ月程度で内視鏡手術と同じ程度まで痛みは回復します。
 術後の入院期間は内視鏡手術と比較すると少し長めになりますが、約1ヶ月程度で職場復帰は可能となります。

(文責: 呼吸器外科部長 安田 学)