主な疾患・治療について
気胸
気胸とは
気胸は肺に穴があいて肺から空気が漏れ、タイヤのパンクのように肺がしぼむために、胸痛、咳や息切れなどが生じる病気です。穴があく原因の多くは、肺の表面に「のう胞」(「ブラ」とも言います)が生じ、これが破れるためです。ブラができる理由や破れる理由は、現在でも正確には分っていません。
気胸は若くて背の高い痩せた男性によく起こりますが、60歳頃を過ぎると肺気腫(タバコなどが原因で正常な肺の構造が壊れる病気)が増えてくるため、気胸になる人も増加します。
気胸の治療について
気胸には[1]安静、[2]胸腔ドレナージ、[3]手術、といった大きく3つの治療があります。
軽症の気胸の多くは安静のみで良くなります。
少し進んだ気胸は空気を抜いたり(脱気)、細い管を留置したり(胸腔ドレナージ)します。気胸が再発しやすい(繰り返す)原因は、安静や胸腔ドレナージで治療しても気胸の原因であるブラが残っているためです。安静や胸腔ドレナージでは約50%が再発します。
一方、手術は原因となるブラを切除する根治的な治療です。しかし手術後に新しいブラができることがあるため、絶対に再発しないわけではなく5~10%が再発します。
手術が必要になるのは、
- 安静や胸腔ドレナージで改善しない時
- 出血している時(大量出血でショックになることもあります)
- 両方の肺に同時に起こった時(息ができずにショックになることもあります)などです。
その他に、 - 再発を繰り返す時
- 初めての気胸でも重症な時(肺が著しくつぶれているなど)は手術の方がよいでしょう。
気胸の手術方法
手術は胸腔鏡という内視鏡(カメラ)を用いた胸腔鏡手術が主流です。全身麻酔下に胸に1~2cmの穴(切開)を3個程作り、一つの穴からカメラを挿入しテレビモニターに写された画像を見ながら、他の穴から挿入した専用の器具を用いてブラを切除します。
当院では、特殊な気胸(肺がんや結核などが原因で肺が破れる気胸)を除くとほぼ100%が胸腔鏡手術です。手術後は通常2~3日で退院が可能です。
特殊な気胸
女性に起こる特殊な気胸である月経随伴性気胸について説明します。月経の時期に一致して気胸を繰り返すのが特徴で、原因はブラではなく肺や横隔膜にできる子宮内膜症と考えられています。治療法も通常の気胸とは異なるため、女性の方で月経の頃に胸痛や咳、息切れなどがある方は一度専門医を受診されて下さい。
気胸は再発しやすい病気ですが、個々の患者さんに合った適切な治療法があります。是非、呼吸器外科のある専門病院を受診されて下さい。