日本臨床工学技士会国際交流委員として、2017年6月9日-6月12日の4日間の日程で、米国テキサス州オースチンにおいて開催されたAAMI(Association for the Advancement of Medical Instrumentation)2017総会へ参加し、日本の臨床工学技士制度および医療機器開発への関与について発表を行いました。また、総会期間中、オースチン市内に5月24日に開院したばかりのDell Seton Medical Center(DSMC)の視察を行う機会を得ましたので、報告させていただきます。
<AAMI 2017参加>
AAMI総会では、医療機器の動向やメンテナンスをはじめとする安全管理、滅菌、IT関連技術などについて幅広く議論が行われます。米国のCE(臨床工学部門の管理的な仕事をされる方)の職能団体であるACCE(American College of Clinical Engineering)の会員も多く参加していることもあり、ACCEと日本臨床工学技士会、共同のセッションが設けられており、テーマの医工連携について日米のCE6名が各自20分程度の発表を行いました。
AAMIは、日本医療機器学会(JSMI)と長年の交流があり、密接で良好な関係を構築しています。JSMIの先生方のご好意により、近年はJSMI主催のTea Partyなどへ臨床工学技士会のメンバーもお誘いいただいており、AAMIやACCEの主要メンバーとの交流が盛んになっているほか、JSMIの安原理事長(東大)をはじめとする先生方との親交を深める場ともなっています。
<Dell Seton Medical Center(DSMC)視察>
DSMCは、急性期に特化した病床数211床の施設で、テキサス大学の教育病院としての機能も担っています。同病院設立にあたってはDellコンピュータの創業者夫妻が2500万ドル(約27億円)の多額の寄付を行っており、病院名にDell氏の名前を冠しています。救急部門では、無影灯を有するような高度な処置ブースには、処置台、救急カート、麻酔器、無影灯を含め、すべての機器、設備等が2セット用意されており、大規模災害やテロ、パンデミックの際、その収容能力を倍にすることを目的としているとのことでした。一般病室(個室)も、ベッドは1つですが、医療ガス配管や電気設備についてはすべて2セットが備え付けられており、非常時には2人部屋として使用することができる設計となっていました。個人的に最も感心したのは、DSMCは機器や備品だけでなく、患者や職員の管理を、ICタグを用いて行うシステムを導入し、位置情報システムとしても利用しているのですが、この位置情報システムを応用し、病室にスタッフが入室した際には自動的に個人を識別し、病室の大型テレビモニタにスタッフの氏名をはじめ、所属や職種を表示させ、患者に自動的にスタッフの紹介をするシステムを構築されていたことです。患者は、どこの誰が今何を行っているかを気にしていることが多いとのことで、患者視点をとても大事にしている施設であると感じました。また、院内の廊下のあらゆるところに改善ボードが掲示されているのも感心したことのひとつで、視察中も医師らがボードを囲み、改善について議論をおこなっていました。ボードはVirginia Mason Medical Centerで使用されているものやEl Camino Hospitalで目にしたものと似ており、米国の病院で改善活動が拡がっていることを実感した視察でした。