2017年5月10日から12日の3日間、スイスジュネーブにて行われた「第3回WHO世界医療機器フォーラム」へ参加し、発表を行ってきました。臨床工学技士の職能団体である公益社団法人日本臨床工学技士会にて国際交流委員会委員を拝命しているためです。同委員会では主にWHO(World Health Organization:世界保健機構)とAAMI(Association for the Advancement of Medical Instrumentation:先端医療機器学会)を担当しています。
「WHO世界医療機器フォーラム」は、主に発展途上国(低・中所得国)における医療の向上を目的とし、医療機器に視点をおいて指針の報告やさまざまな方面から議論が行われる会議です。臨床工学・機器管理関連では、新しい資料として人材の観点からWHOが「Human resources for medical device, the roles of Biomedical Engineering」(2017)を発刊したとの報告がありました。発展途上国では、機器の品質や電気供給などのインフラが不安定なことも多く、臨床工学や機器管理分野での技術や人材が求められています。しかし実際は、発展途上国はもとより先進国においても、その人材は不足しているのが現状です。実は、日本は臨床工学の分野では非常に先進的であり、国家資格のもと臨床業務までも可能とする制度をもつのは本邦だけです。
会議では、支援の仕組みや発展途上国に特化した低価格でありながら効果的な医療機器の開発事例などの報告も行われます。開発事例には周産期関連のデバイスが多く、新生児、乳幼児死亡といった問題の深刻さを感じました。
日本臨床工学技士会からは、人材、機器開発の観点から、日本の臨床工学技士制度とデバイス開発における臨床工学技士の活用について発表をさせていただきました。臨床現場で、医師をはじめとする各種医療専門職とチーム医療を行うことを可能としている制度は本邦以外にないことや技士会として医工連携でも積極的な活動を展開している点で注目を集め、セッション内外で、多くのご質問をいただきました。
文責 井桁 洋貴