2026年6月5日(金)・6日(土)の2日間、岐阜県岐阜市で開催された第60回日本高気圧・潜水医学会学術総会に、臨床工学部より2名で参加しました。本学術総会は「The right safety, the right time, for the right patient」をテーマに、高気圧酸素療法(HBO)の最新知見や臨床応用について活発な議論が行われました。
今回特に印象に残ったのは、がん治療におけるHBOの可能性です。腹膜転移を伴う進行期胃癌に対し、化学療法と免疫チェックポイント阻害薬にHBOを併用することで臨床的完全奏効(cCR)が得られた症例が紹介されました。腫瘍内の低酸素環境を改善することで治療効果を高めるという考え方に加え、放射線治療や温熱療法との併用では、治療の順番や間隔を最適化することの重要性について学ぶことができました。
また、放射線晩期障害に対するHBOについては、放射線照射によって障害された血管内皮細胞の修復を促し、新生血管形成や組織酸素化を改善することで、末梢循環の回復や創傷治癒を促進するメカニズムが詳しく解説されました。放射線性膀胱炎や放射線性顎骨壊死などの難治性合併症に対する有効性についても紹介され、HBOががん治療後のQOL維持・向上に重要な役割を果たす治療法であることを改めて認識しました。
救急領域では、一酸化炭素(CO)中毒に対するHBO治療です。昨年度、自施設でもCO中毒後に遅発性脳症(DNS)を経験したことから本テーマに関心を持ち参加しました。講演では、DNSの予防・抑制が主要な論点となり、エビデンスは発展途上であり個別化治療の重要性が示されました。また、HBOはミトコンドリア機能回復や酸化ストレス・微小血管炎症の抑制、脱髄進展の抑制などを介してDNS発症抑制が期待され、2.5〜3.0ATAでより効果が高い可能性が示されました。加えて、地域連携体制の標準化の重要性についても理解を深めました。
今回の学会を通じて、HBOは救急医療に加え、がん治療や放射線障害など幅広い分野で重要な役割を担っていることを再認識しました。今後も最新の知見を日常業務へ還元し、安全で質の高い高気圧酸素療法の提供に努めてまいります。
文責:S・Y
