2024年6月28日(金)、29日(土)に大分県中津市で開催された「第58回日本高気圧潜水医学会学術総会」に参加し、シンポジウムにて発表しました。シンポジウムでは「第1種装置複数台所有に伴うメリットデメリット」について議論し、装置3台保有施設の運用について紹介しました。当院では高気圧酸素治療室の開設から2台の高気圧酸素治療(以下、HBO)装置を運用し2019年に3台目を増設した経緯があり、増設した理由や運用する上でのメリットデメリットについて実例を交えて発表を行いました。
発表後はスタッフ確保に対する取り組みについての質問があり、当院でのスタッフの運用や質の担保について説明を行いました。
学会は、医療関係者以外の会員も多く、会では重篤な減圧症発症リスクのあるような高気圧環境下で作業を行う職種の方からの発表もありました。橋梁や建造物の基礎、地下施設など、大規模建造物の地下工事の際、地下水の浸入防止のために地下水圧と同等の圧力をかけた気密室を設けて掘削・廃土を行うニューマチックケーソン工法の紹介や、知床遊覧船沈没事故で水深102メートルから「KAZU1」の引き上げを行ったサルヴェージ会社による飽和潜水※1の紹介など、日常関わることのない分野の発表も多く非常に興味深い内容でした。
また今年1月に国内で起こった装置内への使い捨てカイロの持ち込みが議題に上がり、安全運用についての意見が多く交わされました。当院でも治療前の確認には細心の注意を払っていますが、より一層安全意識を持ち治療に向き合わなければならないと強く感じました。
※1飽和潜水
人間が深海の水圧に耐え、安全に長時間作業を行うことを目的とした潜水技術。潜水士は船上で高い圧力環境を再現・維持できるカプセルに入り、内部をヘリウムの混合ガスを使用して作業現場と同じ圧力まで加圧し、数時間から1日かけて体にガスを取りこみ「飽和状態」にし高圧下に順応させたのちに水中へと移動して作業を行う潜水法。水上に戻った際に減圧症になる危険性も予防できる。
文責 S・Y