「新しい生活様式」と熱中症予防について

  • 2020.07.08
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    7月に入ると梅雨の合間でも、晴れ間が見られ真夏日となることがあります。人のからだは、春から梅雨時期を経て数週間ゆっくり時間をかけて(やや暑い環境で運動などを行うことで)真夏の暑さにからだが慣れていく「暑熱順化(しょねつじゅんか)」という過程を経て、暑さに耐えるからだになります。

    しかし、今年は4月からの新型コロナウイルス感染症の流行による外出制限により、多くの人たちが自宅で過ごすことになりました。そのため、外出して外気に触れて季節感を感じることなく、外で運動やからだを動かす機会も少なく、ゆっくり暑さに慣れる時期が遅れていることから、熱中症を発症しやすい可能性があります。

    熱中症は、毎年、気温が高くなり始める時期、からだが暑さに慣れきっていない時期に増加する傾向があります。時期としては、梅雨の合間に突然気温が上がった日や梅雨明け後の蒸し暑い日に発生します。熱中症を様々な側面から調査した『熱中症の実態調査−日本救急医学会Heatstroke STUDY2012最終報告−』によりますと、熱中症の発生時期は、7月上旬から増加し始め、7月下旬に最も多く発生することが報告されています。今年もこれから熱中症が増加する時期ですが、今年は新型コロナウイルス感染症の予防として「3つの密」を避け、「新しい生活様式」を送りつつ、熱中症の予防も行う必要があります。

    そこで、今回のピカラダコラムでは、環境省発行の「令和2年度の熱中症予防行動の留意点について」、および日本救急医学会やその他の関連学会が提唱する「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」を参考に、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた「新しい生活様式」と熱中症の予防についてお知らせします。

    室内では、換気を十分行いながら、エアコンにより室内温度を調整しましょう

    新型コロナウイルス感染症予防では、「3 密(密閉、密集、密接)」の環境を避けるために、室内にいる際は、1時間に 2 回以上は窓を数分程度開けて、換気(室内に風の流れを)することが推奨されています 。エアコンでお部屋を涼しくしていても、室内の空気を循環させるだけで、空気の入れ替え「換気」にはなりません。新型コロナウイルス感染症の予防のためには、窓を開け、適切に換気を行うことが大切です。

    窓を開けて換気を行うことで、お部屋の温度が上昇することがあります。“すだれ”や“カーテン”などを使用して日除けの工夫をすること、エアコンの温度調節により室内を涼しく保つことが重要です。

     

    マスク着用と熱中症予防

    マスクをつけているから必ず熱中症になりやすいとは言えませんが、「暑さ指数(WBGT)」(湿度、 日射・輻射〔ふくしゃ〕など周辺の熱環境、気温の3つを取り入れた指標)が高い状態では、マスクを着用することによる体への負担は普段より強い(マスクによる保温・保湿のためマスク内の温度が上がりやすく、喉の渇きも感じにくい傾向がある)ため、屋外での作業や運動をする際には十分注意して、マスクをつけた状態で負担がかかる運動は避けてください。

    マスクを着用中に暑さやからだに負担を感じた場合は、他の人とソーシャルディスタンスをとり(人と人との間隔を2メート以上あけて)、咳エチケットを行いながら、マスクをはずして、涼しい屋内で休憩してください。

    涼しい行動をとり、暑さを避けましょう

    外出や運動は、天気予報やインターネットから温度・湿度・「暑さ指数(WBGT)」に関する情報を調べて、暑い時間帯を避けましょう。特に普段と比べて体調がよくない場合やなんとなく体調がスッキリしないときの外出は中止してください。

    また、暑いと感じるときの外出は、涼しい服装で日傘を利用する、または帽子を着用して、必ず水分を十分取ってください。

    外出時、歩行する場合は、できるだけ日陰を歩行し、少しでも体調に異変を感じたら、涼しい室内か日陰へ移動してください。

    こまめに水分をとることが熱中症予防に重要です

    熱中症の予防には、のどが渇いてなくても水分をとることが重要です。のどの渇きかたは、人それぞれ感じ方が違います。高齢者の場合は、からだは乾いていて水分が必要な状態でも、自分ではのどの渇きを感じていない方もいらっしゃいます。そのため、“のどの渇き”は、熱中症の指標にはなりません。

    熱中症の予防には、のどの渇きにかかわらず、特に、体の水分調節が十分できず脱水になりやすい高齢者やお子さんに対しては、些細な体調変化も見逃さず、塩分を含む経口補水液をこまめに摂取するよう心がけましょう。

    具体的には、「のどが渇く前に!」、食事以外に1日当たり「コップ約6杯分(1.2L)」の水分を目安として摂取しましょう。また、激しい運動、作業を行ったとき、多くの汗をかいたときは塩分も補給しましょう。また病気のため水分制限や塩分制限の指示を受けている方は、主治医に個別の注意点を確認しておくことも重要です。

    暑さに備えた体づくりと日頃から体調管理をしましょう

    外出制限の場合でも、からだを暑さに慣れるよう夏仕様にするために、自宅でも、立ち上がって足踏みをする、スクワットをする、体操をするなど、在宅でできる運動を行うようしましょう。

    そして、からだの変調に早く気付くために、毎日の体調管理として、朝、起きた時間など活動前には必ず体温を測り、一日のからだの調子や気になる症状などを記録するようにしましょう。その記録が熱中症、または新型コロナウイルス感染症の鑑別や治療に役立つことがあります。

    「新しい生活様式」と熱中症予防のチェックポイント

    □ 夏期の気温・湿度が高い中でマスクを着用中、体調に異変を感じた場合は、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できるときは、マスクをはずすようにしましょう。

    □ 周囲の人との距離を十分にとれる場所では、適宜、マスクをはずして休憩しましょう。

    □ マスクを着用している場合には、からだに負担の大きい作業や運動は避けましょう。

    □ のどが渇いていなくても、こまめに水分補給を心掛けるようにしましょう。

    □ 新型コロナウイルス感染症を予防するためには、冷房時でも換気扇や窓を開放して換気を行う必要があります。この場合、室内温度が高くなるので、熱中症予防のためにエアコンの温度設定をこまめに調整しましょう。

    □ 日頃の体温測定、健康チェックは、新型コロナウイルス感染症だけでなく、熱中症を予防する上でも大切です。体調が悪いと感じた時は、無理せず自宅でゆっくり過ごしましょう。

    □ 3密(密集、密接、密閉)を避けながらも、熱中症になりやすい高齢者やお子さん、障害者への目配り、声掛けをするようにしましょう。

    ◆参考・引用サイトは以下の通りです。

    ●日本救急医学会 【「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」について】

    https://www.jaam.jp/info/2020/info-20200601.html

    ●環境省 「熱中症予防情報サイト」

    https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_pr.php

    ●「令和2年度の熱中症予防行動の留意点について(詳細版資料)」

    https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/20200526_doc.pdf

    ●熱中症予防×コロナ感染防止で「新しい生活様式」を健康に!(リーフレット:青色)

    https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/20200621_blue.pdf

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    監修: 飯塚病院 救急科

    イメージ:救急車

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