手術支援ロボット「ダビンチXi」を導入しました

  • 2021.11.30
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     日本でのロボット手術は、2012年に前立腺がんに対する手術が医療保険の適応となって以降、多くの施設に導入されました。2018年には縦隔腫瘍、肺がん、食道がん、胃がん、直腸がん、膀胱がん、子宮がんへ適応が拡がり、泌尿器科以外の診療科でも手術が行われるようになりました。当院では2021年5月より、泌尿器科において前立腺がんと腎細胞がんに対しロボット手術を開始しています。
     今回は、ロボット手術のメリットやロボット手術で使用している手術支援ロボット「ダビンチXi」(※以降ダビンチ)の特徴についてご紹介します。

    ダビンチXiってどんな機械?

     ダビンチは大きく分けて3つの機械で構成されています。手術では①ペイシェントカートの内視鏡カメラと3本のアームを患者さんの体内に挿入し、外科医が②サージョンコンソールに座り、モニターで確認しながら遠隔操作で手術を行います。手術をサポートするスタッフは③ビジョンカートのモニターで手術の様子を確認することができます。

     

    ダビンチ手術のメリット

     ダビンチは、内視鏡を使用したさまざまな手術に使用できる手術支援ロボットとして、アメリカで開発されたロボットです。現在、当院では泌尿器科の前立腺がんと腎細胞がんの腹腔鏡下手術にダビンチを使用しています。腹腔鏡手術は、身体に小さな穴を開け、そこから内視鏡や細長い器具(鉗子)を入れて手術を行います。従来の開腹手術に比べて体に開ける穴が小さく済むため、患者さんにとっては「手術後の痛みが少ない」「リハビリが早く進む」「入院期間が少ない」などのメリットがあり、今日では多くの手術にこの方法が用いられています。

    ダビンチの特徴

     ところで、この腹腔鏡手術ではお腹に小さな穴を開けて手術を行うわけですが、小さな穴から複雑なお腹の中の手術を行うことは容易でないことが想像できます。外科医は、知識を学び、訓練を積むことで技術を身につけます。さらに創意工夫することで、手術を進歩させてきました。しかし、人の身体機能には限界があり、人の能力を超えた機能を持つものがダビンチといえます。
     ダビンチは、ロボットと名称がついていますが自動で手術を行うわけではありません。手術を行う外科医がサージョンコンソールと呼ばれる機器に座り、手にマニピュレーターといわれる操作機器を装着し、手と足を使い遠隔で4本のロボットアームを操作します。

     ロボットアームの先端は、1本が内視鏡カメラ、残り3本が鉗子やハサミなどの手術器具です。操作するロボットアームには手ぶれ防止装置がついているほか、先端近くには手首のような関節が2つあり、関節の根元は360度回転するので、人間の手では不可能な動きが可能になります。また、カメラを通して見る画像は自然な三次元(3D)画像となっているため、外科医は肉眼で見ている感覚と変わりなく手術を行うことができます。このカメラには最大15倍のズーム機能も備わっており、肉眼では見ることのできない血管まで明瞭に見ることができます。これが人を超えたダビンチの機能です。
     当院のデータではダビンチを使った前立腺がんの手術時間は開腹手術と比べ半分程度とされており、患者さんにも外科医にとっても負担軽減になります。また、正確な手術により、術後早期の尿失禁の軽減や症例によっては性機能の温存も期待できるそうです。
     つまりダビンチを使った手術は外科医と患者さんの双方にメリットの多い手術といえます。
     当院で開始している前立腺がんと腎細胞がんに対するロボット手術では患者さんの身体状況にもよりますが、入院期間は7日〜10日となっています。ロボット手術は保険が適用されるほか、高額療養費制度により自己負担額の軽減が可能です。
     病気の進行度にもよりますが、基本的に手術ができる病状の方であれば、ダビンチ手術が治療選択肢の一つになります。まずは主治医にご相談いただいた上で、ご自身にあった治療法を検討することが大切です。

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    監修: 飯塚病院 泌尿器科

    飯塚病院 泌尿器科

    当科では、泌尿器科領域全般に対応できる体制をとり、迅速な対処・処置を心がけています。
    手術例数は年間300例を超え、副腎・腎・尿管の腫瘍性疾患に対しては、身体への負担が可能な限り少ない鏡視下手術や腎温存手術を実施しています。
    小児泌尿器科領域についても可能な限り診断から治療までを行っており、夜尿症の治療や停留精巣の手術などに取り組んでいます。また、高度な形成が必要なものについては専門施設と密に連携して対応しています。

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