- 2016.09.30
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不妊の原因はさまざま
以前は、妊娠を希望してから2年経っても妊娠が成立しないと不妊症だと言われていました。しかし、現在は日本産婦人科学会において、不妊症の定義となる基準が2年から1年になりました。 妊娠が成立するためには、卵子と精子が出会い、受精して着床するまで、多くの条件が揃う必要があります。そのため、不妊症の原因は、多くの因子が重複していたり、逆に検査しても明らかな不妊の原因が見つからない原因不明のものもあります。
ここでは、女性、男性それぞれで認められる不妊の原因をご紹介します。
- 精子を作る過程での障害(精液性状低下)
- 精子の通過障害
- 性機能障害(勃起障害や射精障害)
- 排卵障害(過度なダイエット、高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣など)
- 卵管の通過障害(クラミジアや淋菌感染症など)
- 子宮の問題(子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、中絶手術など)
- 頸管粘液の問題(排卵期の透明で粘稠性のあるおりもの)
- 免疫の問題(抗精子抗体や精子不動化抗体など)
- 原因不明(3分の1を占めると言われ、加齢などの問題も含まれる)
男性の不妊
男性の不妊症の原因は、射精がうまくいかない場合(性機能障害)と、射精される精液の中の精子の数や運動率が悪くなっている場合(精液性状低下)に分けられ、後者は軽度・中等度のものと、高度および無精子症に分けられます。
性機能障害には、ストレス等により有効な勃起が起こらず性行為がうまくいかない勃起障害(ED)や性行為は出来ても腟内射精が困難な腟内射精障害があります。不妊の治療としてタイミング指導を行う場合、タイミングに固執してしまうと性行為そのものに障害を来たしたりする場合もあります。その他、動脈硬化や糖尿病も性機能障害の原因になります。糖尿病は軽症でも勃起障害となり、重症となると射精障害や精液量が減少し逆行性射精(一部の精液が膀胱内に射出される)や精液が出なくなる無精液症を来たします。
精子は精巣(睾丸)の中で作られ、精巣上体という細い管を通り抜ける間に運動能力をえて、受精を行うことの出来る完全な精子となります。精巣での精子形成や、精巣上体での運動能獲得過程に異常があると、精子の数が少なくなったり、精子の動きが悪くなったり(精子運動率低下)、奇形率が多くなったりして、受精する力が低下します。
このような病態を「造精機能障害」と呼びますが、その一部の方は精索静脈瘤が関与すると言われています。精索静脈瘤は外科的手術によって造精機能障害が回復し得る可能性があります。
精液中の精子の数が極端(通常の1/100以下など)に少ない、あるいは運動率が極端に低い(20~30%以下)の場合は、高度の精液性状低下です。上記の造精機能障害のほかに、視床下部-下垂体で造精機能を司るホルモンの分泌低下による低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、停留精巣の手術後やおたふく風邪による耳下腺炎性精巣炎によっても、高度の精液性状低下が見られることがあります。
無精子症とは、射出された精液の中に精子が全く見られない状態をいいますが、この中に精巣内では精子が作られているのに精液中に精子が出てこない閉塞性無精子症があります。代表的な疾患として先天性両側精管欠損症や精巣上体炎後の炎症性閉塞、鼠径ヘルニア手術等があります。一方閉塞がないのに精子が全く作られていない無精子症もあり、そのほとんどは原因不明ですが、10~19%に染色体異常であるクラインフェルター症候群(47XXY)がみられます。無精子症だからと言われて決して諦めてはいけません。閉塞した精路を再建したり、精巣内の精子を回収して顕微授精することにより、妊娠に至る可能性が出てきます。
不妊症の原因は複雑。検査や治療は早めに二人で
不妊症の原因はどちらかだけでなく、男女両方であったり、ストレスなど生活環境などによるものもあります。妊娠を叶えるためには治療だけでなく、生活リズムを整えるなど、二人で協力することが大切です。
「不妊かも?」と思ったら検査を受けてみるのもよいでしょう。二人で一緒に検査を受け、必要であれば治療を始めること。そうすれば、ひとりずつ検査するより早く結果が得られますし、スムーズに治療へ繋げることができます。なかなか妊娠しないと思ったら、早いうちから産婦人科に相談してみてもいいですね。