妊娠可能年齢の女性と妊婦さんへのワクチン接種について -Cocoon Strategy-

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  • 2021.07.28
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    連載2回目となる今回は、生まれてくる赤ちゃんのために、妊娠前・妊娠中に接種が推奨されているワクチンについてご紹介します。妊娠可能年齢の女性だけでなく、パートナーを含め赤ちゃんに関わる全ての方に是非読んでいただきたい内容です。

    妊娠可能年齢の女性に推奨されるワクチンは多数ありますが、今回は感染症法に基づく5類疾患である風疹と百日咳を中心に、赤ちゃんへの影響とワクチン接種の効果について解説します。

    風疹(先天性風疹症候群)

    風疹は、発熱・発疹・リンパ節腫脹を特徴とするウイルス感染症です。このウイルスに感染すると、重篤な合併症を起こしてしまう人もいれば、無症状で終わる人もいます。症状だけで風疹を診断することは困難なため、診断には抗体価やPCR検査が必須です。風疹は接触・飛沫感染し、その感染力はインフルエンザウイルスの約3~4倍と言われています。

    風疹に対する免疫を持たない妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると、赤ちゃんが先天性風疹症候群を発症する可能性があります。先天性風疹症候群の症状は、3大症状の心疾患、難聴、白内障に加え、網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球など多岐にわたります。

    免疫を獲得するためには、生涯で通算2回の風疹ワクチン接種が必要とされています。しかし、日本における妊娠可能年齢の女性を含めた、成人全体の風疹ワクチン接種状況は十分ではありません。男女共にワクチンを受け、風疹の流行を抑制し、妊娠可能年齢の女性は感染予防に必要な免疫を、妊娠前獲得しておくことが大切です。

    ※風疹ウイルスは生ワクチンであるため少なくとも妊娠1~2ヶ月前までには接種を完了してください。妊娠中に接種することはできません。

    百日咳

    百日咳は、急性の気道感染症で、主な症状は長期間続く“せき”です。特に赤ちゃんが百日咳にかかってしまうと、重症化し死に至ることもあります。その感染力はインフルエンザウイルスの約8~10倍と言われています。

    感染予防の観点からワクチン接種が重要で、日本では小児期に ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ4種混合ワクチン(DPT-IPV)を定期接種しています。しかし、百日咳ワクチンの免疫効果は、最終接種から4~12年で減弱し、ワクチンを接種した人でも感染し発症することがあります。

    日本でも、大学で200人以上の大規模な集団感染が発生したり、小中学校での集団発生を発端とした地域での患者発生数の増加などが実際に報告されています。

    また、成人の感染者、特に家族が感染源となり、ワクチンを接種していないこどもへ感染し、重症化することが問題となっています。

    赤ちゃんの百日咳予防策として米国疾病予防管理センターは、抗原量を減量した破傷風・ジフテリア・百日咳三種混合ワクチン(Tdap:当院採用輸入ワクチン)の接種を、妊婦を含む全ての成人に対して推奨しています。妊婦に関しては、出産後ではなく妊娠毎・妊娠中(最適な接種期間:妊娠27~36週目)にワクチンを接種すると、母親の抗体が胎児に移行するため、乳児の百日咳に関連した入院や死亡が減少すると報告されています。

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    安全性が確認されているワクチンを、適切な時期に接種することが大切です。

    赤ちゃんとワクチンに関しては、【Cocoon Strategy:繭戦略】という言葉があります。赤ちゃんを囲む皆さんがワクチンを打つことで、繭で囲むように赤ちゃんを感染症から守ることができます。ワクチン接種は接種する本人を守るだけでなく、将来を担う赤ちゃんを守ることにも繋がります。

    ワクチン接種をご希望の方は、お気軽に飯塚病院 感染症科へご相談ください。

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    監修: 飯塚病院 感染症科

    2019年4月に福岡県筑豊エリア初の科として新設されました。

    同7月から開設した専門外来であるワクチン・トラベル外来では、渡航・旅行医学に精通した専門医が、海外渡航者への健康相談、予防接種、予防薬投与などを行っています。

    さらに、渡航者に限らず麻疹や風疹をはじめ、高齢者の帯状疱疹、肺炎球菌、破傷風など地域を包括したワクチンでの感染症予防に貢献しています。

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