- 2020.08.18
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今回のピカラダコラムでは、当院地域包括ケア推進本部に勤務するソーシャルワーカーから、認知症に関することで困ったときにどこに相談したらよいか、そして、いざと言うときに困らないように日ごろからの準備について説明します。
「認知症かも?」と疑うような症状を認めた場合
大切な家族に認知症の症状が現れた場合、心配する気持ちと、一方で以前のようにきちんとやってほしいという気持ちが交錯してしまい、つい感情的に本人へ接してしまうことがあります。家族を一人にしておくことが、少しでも心配だと思う状況が増えてきた場合は、早めの受診をお勧めします。
相談窓口としては、まず、最初に対応が必要となる機関は医療と思います。「認知症かなと?」思ったら、ご家族のかかりつけの医師にご相談ください。また、近年は認知症専門医の認定を受けている医師も増えていますので、地域の専門医へのご相談もお勧めします。病院には、認知症患者さんの生活上の問題に対して相談支援を行うソーシャルワーカーや看護師に相談可能です。
近年、地域に設置されている認知症の専門相談機関として「認知症疾患医療センター」があります。また、認知症の鑑別診断については、「もの忘れ外来」を行う医療機関にご相談されるともお勧めします。
認知症の未受診や治療中断により、家族や周囲の人が困っている場合
この状況については、ご家族の皆さんがとてもお困りになっているところかなと思います。ご本人に病気という認識がなく、ご家族や周囲の人が心配をするケースです。基本的には精神科医療機関への相談が良いとは思いますが、他には認知症医療センターあるいは皆さんに身近な相談窓口である地域包括支援センターがあります。
・認知症疾患医療センター
・地域包括支援センター
(介護や福祉など総合的な相談窓口(保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャー))
・認知症初期集中支援チーム
こうしたケースはこれまで無理やりご家族が病院に連れていく、あるいは専門機関があの手この手で受診に結びつけるなど苦労していましたが、近年ではこうした未受診あるいは治療中断者の自宅に専門職がチームで訪問し支援する「認知症初期集中支援チーム」が設置されていますので、ぜひとも一人で抱え込まず相談してほしいと思います。
ただし、一般の方から直接認知症初期集中支援チームへの相談はできませんので、困っている場合は最寄りの地域包括支援センターにご相談ください。
在宅介護や住まい(介護施設)のことで困った場合
介護に関して相談がある場合にはケアマネジャーにご相談ください。ポイントとして、介護保険は申請して認定を受けるまでに原則1ヶ月はかかります。申請はできるだけ早いタイミングで行われることをお勧めします。入院中の方は、主治医やソーシャルワーカーと相談してください。
介護保険サービスでは、2018年4月に新たな施設として「介護医療院」が設置されました。イメージとしては施設と病院の中間の位置づけで、ある程度医療的ケアの必要な方が長期に住み続けられる施設であり、看取りが原則可能です。
生活場面での支援が必要な場合
次に、近年65歳以上の方の一人暮らしが増え、飯塚市でも65歳以上の人の3~4人に1人が一人暮らしという現状です。このような場合、認知症や精神疾患などが理由で判断能力が不十分な方についての財産管理や生活に必要な手続きの心配や、消費者被害、自分の家族や知人からの金銭搾取などの虐待問題を抱えている人も少なくありません。
このような場合に利用できるサービスが「日常生活自立支援事業」と「成年後見制度」です。いずれも、ご本人の財産と権利を守り、かつ自立した生活支援を目的にしています。
いざと言うとき困らないようにするには?
まず一番は、自らが健康増進・維持に努めることです。それから、仕事があればそれに越したことはありませんが、できたら定年後は自治会やボランティア活動、それも無理なら趣味や遊びのための外出など、「社会参加」の機会を持ってください。これが生きがいの創出や健康寿命の延伸につながります。
今のところ新型コロナウイルス感染防止の観点から不急不要な外出は出来ませんが、それでもソーシャルディスタンスを保ちながらの運動や、時には(テレビ)電話でご家族や友人とお話するなどしながら、可能な範囲での外出や人との交流をもつことなどは大切です。
介護サービスを利用する際、「いかに多くのサービスを受けることが良い」と誤解している方が少なくありません。過剰なサービスは、逆に心身共に自立から遠ざけることにも繋がります。あくまでも介護保険はお世話保険ではなく、 “自立”するためのサービスであることを、介護サービスを受ける方も、そしてご家族も正しく認識しておくことが大切です。
実際に多くの方が、事が起きた後に今後のことを考えるケースが多いようです。しかし、元気なうちにこそ、意思決定が困難になった場合に延命処置や治療をどこまで望んでいるのか、財産をどうしたいのか、どんな葬儀にしたいのか、最期はどのように過ごしたいのか等の考えを整理しておきましょう。
大切なことは、日ごろからご家族や周囲の方との間で意向を共有しておきましょう。そうすることで万一の時に、自分にとっても、ご家族や周囲の方にとっても安らかで悔いのない大切な時間を過ごすことができると思います。