停留精巣・遊走精巣

「停留精巣」「遊走精巣」ってどんな病気?

停留精巣は、生まれてすぐから陰嚢(袋)に精巣(睾丸)が入っていない、男の子の先天的な異常で、新生児の約1%にみられます。未熟児で生まれてきた場合は、割合が高くなります。これに対し、遊走精巣は精巣が陰嚢とお腹を行ったりきたりする状態のことです。

陰嚢の中は足の付け根にある鼠径管より2~3℃温度が低く、精巣発育に必要な低温環境が保たれています。停留精巣は高い温度環境にさらされているため、放置すると精巣機能障害だけでなく、大人になったときに悪性化する可能性が高くなります。

「停留精巣」「遊走精巣」はどんな症状?

停留精巣は陰嚢の中に精巣が入っていない状態のため、片方の陰嚢が小さく、左右が非対称です。停留精巣は、精巣を陰嚢の中に引き下ろせない場合や、引きおろしたあとに手を離すとすぐお腹の方に戻ってしまう場合があります。ただし生まれてすぐ停留精巣の状態であっても、生後3ヶ月までは自然に精巣がおりてくる場合があります。

一方で、遊走精巣は一時的に陰嚢の中にとどまります。陰嚢の中に精巣が入っていなくても、お風呂のときなど体が温まったときや、リラックスして座っているときなどに陰嚢の中に精巣がある場合は遊走精巣です。

飯塚病院での治療

停留精巣では、精巣を陰嚢内へ引き下ろし固定する「精巣固定術」が必要となります。1歳前後の時期に手術することがほとんどです。下腹部と陰嚢部を小さく切開し、陰嚢皮膚に精巣を固定する手術を行います。手術による切開の傷あとは、成長とともにほとんど分からなくなります。

遊走精巣の治療は、ほとんどが経過観察で良いといわれています。しかし、陰嚢の中に精巣が長時間入っておらず、精巣の大きさに左右差が生じてきた場合や、6歳を過ぎても遊走精巣がみられる場合は精巣の発育不良が疑われますので手術を行います。手術は「経陰嚢的精巣固定術」という、陰嚢の皮膚の傷だけで済みますので、停留精巣に比べ痛みが少ないです。

早期発見・早期治療のために

赤ちゃんが生まれてすぐのときに、注意深く陰嚢を触れば精巣を確認することができます。生後3ヶ月までは自然に精巣がおりてくる場合があるので、そのまま様子をみましょう。生後6ヶ月を過ぎても精巣が陰嚢の中におりてこない場合は治療が必要となってきますので、まずは受診しましょう。

また、遊走精巣の場合であっても精巣の大きさの左右差、24時間または6歳を過ぎても遊走精巣がみられるときは受診しましょう。

ドクターからのアドバイス

乳幼児検診で「陰嚢の中に精巣が触れない」ということで発見されることが多く見られます。男の子の乳児では、オムツ交換の時や入浴中に精巣の位置がどこかを観察してみましょう。陰嚢の中に精巣を見つけることが出来ない場合は、気軽にご相談下さい。また、幼児の場合に精巣を見つけることが出来ない時は早めの受診をお勧めします。