- 2018.05.18
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前回【Vol.1】では、子どもから感染する感染症を中心にご紹介しましたが、今回はサイトメガロウイルス感染、水ぼうそう、単純ヘルペスウイルス、尖圭コジンローマなどの感染症について紹介します。
サイトメガロウイルス感染
ヘルペス科のウイルスであるサイトメガロウイルスは、自覚症状がないまま乳幼児期に多くの人が感染していると言われています。赤ちゃんへの感染は出産時に産道で感染する産道感染や授乳時に母乳から感染する母乳感染が主ですが、母親の抗体も一緒に移行するためほとんどは軽症または無自覚です。ただ、妊娠中に妊婦さんが初めてサイトメガロウイルスに罹患すると、胎盤を通して胎児に感染することがあり、「先天性サイトメガロウイルス感染症」を発症し、難聴や黄疸などの症状を引き起こします。
予防するためには、まず自分が抗体を持っているかどうかを検査することが必要です。抗体がなく感染の既往歴がない場合は、乳幼児との接触を避け、感染を防ぎましょう。
水痘(水ぼうそう)
水痘・帯状疱疹ウイルスに感染すると、全身に発疹、水ぶくれ、発熱などの症状が現れます。小児期は軽症で済むことが多いですが、妊娠中に発症すると水痘肺炎など重症化することもあります。さらに発症頻度は非常に稀ですが、胎児が「先天性水痘症候群」を発症してしまう恐れもあります。特に、分娩5日前から出産までの間に発症した場合は、新生児が重症水痘になり危険な状態に陥ってしまうため、注意が必要です。
もし、抗体を持っていない場合は、妊娠前に予防接種をしておきましょう。妊娠中に発症した場合はアシクロビルなどの抗ウイルス薬を使って治療を行います。胎児への影響はほとんどないという報告があるので、しっかりと治療に専念しましょう。
単純ヘルペスウイルス
単純ヘルペスウイルスは、1型と2型があり口唇ヘルペスや性器ヘルペスを引き起こします。妊娠中に気をつけたいのは陰部やお尻周辺に水ぶくれや潰瘍が現れるのが特徴の性器ヘルペスです。
出産時に産道で感染し「新生児ヘルペス」を発症させる可能性がありますが、胎児への影響(経胎盤感染)はほとんどありません。産道感染による新生児ヘルペスのリスクがある場合は、経腟分娩(自然分娩)ではなく帝王切開で出産することで、新生児ヘルペスの発症を回避することが可能です。
家族や周囲に性器ヘルペスを発症している人がいる場合は、タオルや洋式便座の共有から感染することもあるので、自分専用のタオルや使い捨ての便座シートを利用するなどの対策を行い、感染予防に努めましょう。
尖圭コジンローマ
ヒトパピローマウイルス6型、11型に感染することで引き起こされる性感染症です。陰部周辺に鶏冠状の腫瘤や、かゆみ、疼痛を伴いますが、自覚症状がない場合もあります。妊娠中の感染で胎児に影響を与えることはありませんが、産道感染により「若年性再発性呼吸乳頭腫症」を引き起こすことがあります。ただし、120万件の分娩を対象としたデンマークの統計では、その発症率はわずか0.69%と稀です。
パートナーが感染している場合は、性行為で感染してしまうこともあるので妊娠中の性交渉を避けるなど対策が必要です。産道感染を回避するために帝王切開が選択されることが多いですが、絶対適応というわけではないため、医師と相談の上、検討していきましょう。