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肝細胞がんと診断されたら

 肝臓に腫瘍が見つかるのは、慢性肝炎など肝臓の病気を診断されていて、定期的に肝臓のエコー検査を受けている場合や、他の病気でエコーやCT検査を受けて偶然発見される場合などです。肝臓の腫瘍には、肝細胞がん以外にも、胃がんや大腸がんからの転移や、治療が必要ではない良性腫瘍の可能性もあります。このため、精密検査としての造影CT検査やMRI検査を行うことになります。比較的まれですが、これらの検査でも診断がつかない場合には、腫瘍の組織を細い針で採取する「生検」で組織診断を行うこともあります。このような精密検査の結果として「肝細胞がん」と診断されるわけです。

治療法の選択

 肝細胞がんと診断されると、がんの進行度(サイズ、個数、転移の有無などで評価されます)・肝臓の働き(肝予備能と言います)・全身状態(簡単に言えば元気さの程度)で治療法の選択肢が決まります。ご本人・ご家族に選択肢になる各治療法について説明したうえで治療法を選んでいただくことになります。患者さんにとっての適切な治療を提示することが大切ですので、状況によっては飯塚病院で施行できない治療(粒子線治療、肝臓移植など)も選択肢としてお話することもあります。

進行度と肝臓・全身の状態による治療法の選択肢

 なお、飯塚病院肝臓内科では、全ての患者さんの治療方針が、所属医師全員で行うカンファレンス(週2回)で確認されます。主治医が考えなかった治療法がカンファレンスで他の医師から提案されて選択肢に加わることは珍しくありません。また、外科医もカンファレンスに参加するため、手術の可能性がある患者さんについては一緒に検討しています。同様に、治療内容と結果も必ずカンファレンスで確認されるので、肝細胞がんに関しては、治療の内容を主治医1人しか知らない、ということは起きないようになっています。

 飯塚病院は以前から肝細胞がんの患者さんが多く、外科での手術数、肝臓内科でのラジオ波焼灼療法の件数いずれも毎年九州地区で上位に入っています。病院によっては、専門医の偏り、診療科間の連携の問題などから治療法に偏りが見られることもありますが、飯塚病院では所属医師の技量に問題がないことと、カンファレンスが充実していることから、おおむね専門医の学会で作成されたガイドラインに沿った治療内容が選択されています。

 この仕組みをしっかりと維持していくことが、診療の質の担保になると考えています。


外来受診後のながれ

 実際に「肝細胞がん」ないしは「肝細胞がんの疑い」で飯塚病院を受診された場合の診療のすすめかたは図のようになります。紹介状を作成していただいた病院・クリニック・検診施設で、すでに造影CTやMRI検査、胃カメラ・大腸カメラが行われている場合は、通常は当院で重複する検査を行うことは避けますが、撮影時期・画質・撮影方法などの点で、どうしても必要と判断された場合は再検査を手配します。

肝細胞がんと診断された場合の診療の流れ

 受診からこれらの検査の期間を通じて、前に述べたように、肝臓内科内部、あるいは肝臓内科と外科、画像診療科(放射線科)とのカンファレンスで、繰り返し治療方針についての検討が行われます。これらの結果をもとに、肝臓内科の外来での再診で担当医と患者さん・ご家族との間で治療方針を相談・決定することになります。

 初診から肝臓内科での治療開始まではだいたい1週間から1ヶ月(平均2週間程度)で、多くは入院治療ですが、一部の治療は入院不要で外来で行われることもあります。手術となる場合は術前検査を追加して外科に紹介、受診していただいて、外科担当医による診察・説明・相談のうえ手術の日程が決まります。外科受診後にさらに追加の検査が行われるころもあり、また、予定手術のたて込み具合やそれぞれの病状による緊急度で時期が前後しますが、概ね肝臓内科での初診から1ヶ月前後で手術になることがほとんどで、2ヶ月以上かかることはまずありません。