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肝硬変と診断されたら

肝硬変とは

肝硬変の肝臓(剖検例)
肝硬変の肝臓(剖検例)

 肝硬変とは、読んで字のごとく臓が化した状態です。正常な肝臓は精肉店などで生のレバーを見るとわかりますが、表面は滑らかで、触ってみると柔らかく、へり・・は鋭角です。慢性の肝臓病になると、肝臓を構成する肝細胞があちこちで少しずつ死んでいき、同時に線維が増えていって肝臓全体が次第に硬くごつごつになっていきます。

食道静脈瘤(内視鏡写真)
食道静脈瘤(内視鏡写真)

 胃腸で消化吸収された栄養分は、門脈という血管を通って肝臓に流れ込み、肝臓で身体に必要なタンパク質・脂質などに組み立て直されてからやはり血液を介して心臓に戻って全身に配られるしくみになっています。肝硬変になると血液が肝臓の内部を流れにくくなるため、交通渋滞の道路と同じ理屈で抜け道になる血管が出来てきます。この中で始末が悪いものが「食道静脈瘤・胃静脈瘤」で、食道や胃の内側に太い血管が出来てしまい、動脈ほどではないものの圧力が高いため、これが破れると大出血になります。




大量の腹水貯留のCT像(骨盤部のスライス)
大量の腹水貯留のCT像(骨盤部のスライス)

 また、肝臓の内臓としての機能が弱ると、身体に必要なタンパク質の合成能力が低下するために全身の筋肉量が減っていきます。そして血管内の水分を保持する働きがあるアルブミンという大切なタンパク質が不足してくると、血管から水が漏れだして「腹水」がたまり始めます。腹水でお腹が張ることは肝硬変の最初の自覚症状・合併症として最も多く見られるものです。肝臓ではタンパク質などを作る「合成」以外に、身体に有害な老廃物を処理する「代謝」という働きがあります。この能力が低下すると、腸で発生するアンモニアを解毒できなくなって正常な言動・行動ができなくなったり、傾眠・昏睡に陥ったりする「肝性脳症」が出てきます。さらに肝臓が弱ると「黄疸」が出てきます。「腹水・肝性脳症・黄疸」のような症状が出現している肝硬変は「非代償性肝硬変」と呼ばれます。

 病気がない正常な肝臓は、体積の3分の2を切除しても生命維持に全く問題がないくらいの余裕があるため、肝硬変になった初期の段階「代償性肝硬変」では全く症状がないことが多く、別の病気で定期的に病院に通院していても、気づかれないことがあります。肝硬変は肝臓のかたちが変化しているので、エコーやCTなどの画像検査で診断されることが多いのですが、逆に言えば、画像検査を受けないとわからないということでもあります。このため、肝硬変と診断されるのは、①血液検査で肝機能障害が見つかりエコーを受けた、②他の病気で画像検査を受けた、③腹水や黄疸などの症状が出て画像検査を受けた、というパターンが多いです

原因となった肝臓病の診断・治療が最も重要

 肝硬変と診断された場合に最も重要なことは肝硬変の原因となった肝臓病を正確に診断することです。一般の方にとって、肝硬変は治らない病気で長生きできない、というイメージがあるかと思います。実際20年ほど前までは、肝硬変と診断されることは、寿命が肝臓病で決まることを意味していました。これは、日本での肝硬変の原因として最も多かったのがC型肝炎、ついでB型肝炎というウイルス性の肝炎であったことも影響しています。これらの肝炎で肝硬変になってしまうと有効な治療法がなかったことが「肝硬変=死の病」というイメージにつながっていたのです。

 この20年間での肝臓病診療の進歩で最も目覚ましかったのがこれらのウイルス肝炎の治療です。まずB型肝炎に対する「核酸アナログ」と呼ばれる種類の内服薬が登場しました。「核酸アナログ」はB型肝炎ウイルスが肝臓で増殖するのを止めることで肝臓の炎症が治まります。そうすると肝臓を硬く縛っている線維が少しずつ減っていき肝臓の状態が少しずつ回復していきます。腹水が貯留した状態から無症状まで回復することもあります。

 2014年からはC型肝炎に対して副作用が少なく画期的なウイルス除去効果を発揮する経口抗ウイルス薬が登場しました。B型肝炎の「核酸アナログ」は長期間内服を継続する必要がありますが、C型肝炎の経口抗ウイルス薬は8週間から12週間という期間限定でC型肝炎ウイルスをほぼ完全に排除することができます。ウイルスの排除によって、すでに肝硬変になっていても、多くの場合は肝臓の働きが改善するため、とても重要な治療です。2019年2月からは、C型肝炎によって「非代償性肝硬変」になってしまっていても投与可能な薬が登場しました。さすがに全例で肝臓の働きが大幅に改善するということは難しいのですが、治療法がなかったことに比べると大幅な進歩です。

 ウイルス肝炎以外の肝硬変の原因は、アルコールや肥満・糖尿病などの生活習慣の問題や、免疫の異常による肝炎「自己免疫性肝炎」「原発性胆汁性胆管炎」があります。これらも正確に診断を行って、生活習慣の改善や適切な治療を行っていくことである程度までの肝硬変であれば悪化を防ぎ、改善することが期待できます。


重大な合併症=肝臓がんと静脈瘤の有無を調査

 肝硬変と診断されると、肝硬変の原因と同様に重要なことは、重大な合併症がないかどうかを調べることです。特に寿命にかかわる肝臓がん(肝細胞癌)については、定期的な画像検査を忘れないように継続して行っていく必要があります。また、前述のように食道静脈瘤・胃静脈瘤を合併していることも多いため、胃カメラも行う必要があります。


栄養状態の改善を

 肝硬変の原因が判明して、肝臓がんと食道・胃静脈瘤の有無も確認されて、これらへの対処が行われたら、次は栄養状態の改善を図っていく必要があります。具体的には、体脂肪率をあまり増やさずに骨格筋量を維持する努力を継続する、ということです

体組成計レポート
体組成計レポート

 このためには適切な食事摂取と運動が必要です。飯塚病院肝臓内科では、医師・看護師・栄養士の協力体制で、栄養・生活指導を行っています。体脂肪率や骨格筋量といった栄養状態の評価は血液検査や体重測定のみでは困難なので、外来に体組成計を設置して、栄養状態が維持・改善されているかどうかを、確認できるようにしています。