歯科口腔外科 > ご利用の皆様へ > トピックス > 【歯科衛生室】がん治療を支える口腔ケアについて
口の中には約600種類の細菌が、歯垢(デンタルプラーク)と呼ばれる細菌の塊を形成して歯に付着しています。普段は悪さをしない細菌も、がん治療の手術や化学療法、放射線治療に伴い身体の抵抗力が弱まった時に、肺炎や手術部位の感染などの合併症を引き起こす可能性があります。しかし、がん治療を始める前から口腔ケアを徹底的に行い、口の中の細菌数をできるだけ少なくすることで、全身の合併症のリスクを軽減できるという報告があります。
がん治療を受ける前には、口の中に気になる症状がなくても歯科を受診し、口の状態を確認してもらいましょう。口の中の細菌を減らすためのセルフケア(自身での正しい歯磨き)の指導を受けることと、プロフェッショナルケア(歯科衛生士による口腔ケア)を受けることが重要です。
また、がん治療中は口腔粘膜炎(口内炎)や口腔乾燥、味覚障害など口の中に現れるさまざまな副作用が起きやすくなります。中でも口腔粘膜炎は化学療法を受ける患者さんの約40%に見られ、口腔や咽頭に放射線治療を受けた方では100%起こるといわれています。ひどくなると痛みのために水分や食事がとれなくなり、大事ながん治療のスケジュール変更や、治療の中断を余儀なくされることもあります。口腔粘膜炎に口の中の細菌が感染することで重症化し、敗血症などの重篤な全身合併症のリスクとなってしまうこともあるのです。口腔粘膜炎の重症化や二次感染の予防にも、口の中の細菌数を減らすことは有効であるという報告があります。
当院では、がん治療はもちろんのこと、心臓血管外科、脳神経外科、人工関節挿入などの外科手術の場合も、治療のリスクを減らすために医師や看護師と歯科医師、歯科衛生士が密に連携をとり、手術前後に口腔ケアや歯科治療を積極的に行っています。
この周術期口腔機能管理により、術後の肺炎や発熱、手術部位の感染などの合併症が予防でき、入院期間の短縮、医療費の削減などのさまざまな効果が報告されています。
病気と闘っていくには、出来るだけ自然な形でお口から栄養を取り続けることが望ましいため、口の機能の維持はとても大切です。エネルギーの入り口である口を整えるために、私たち歯科医師、歯科衛生士は最大のサポートを行なっています。