飯塚病院 整形外科

整形外科 > 当科について > 特長的な取り組み > 大腿骨近位部骨折多職種連携アプローチ プロジェクト vol.02

トピックス

大腿骨近位部骨折多職種連携アプローチ プロジェクト vol.02

2021年6月1日

最良の治療体制実現への道 大腿骨近位部骨折

 2016年12月にスタートした「大腿骨近位部骨折多職種連携アプローチ」プロジェクトが少しずつ進化しています。

 我が国における大腿骨近位部骨折の患者数は増加傾向にあり、2042年には約32万人に達すると言われています。また50歳以上の女性が生涯で受傷する確率は22%(5人に1人以上)とも言われています。大腿骨近位部骨折は主に高齢者の転倒によって発症します。高齢者では元々さまざまな持病を持っていることも多く、更に治療・リハビリが遅れると歩行能力低下や認知症の進行、さまざまな合併症が生じ致命的な結果になることもあり得ます。よってこの骨折の治療を行うには、早期手術・早期リハビリが肝要で、更に持病や術後に生じる合併症を的確に管理することが求められます。

 当院では現在例年200症例を超える大腿骨近位部骨折の治療に当たっていますが、以前から安全で効率的な治療を目指してさまざまな取り組みを行ってきました。まず、2000年からこの骨折に対する手術を準急患扱いにして出来るだけ受傷当日に手術を行う試みを始めました。入院1週間後の手術が普通に行われていた当時としては画期的な取り組みでした。2016年には「大腿骨近位部骨折多職種連携アプローチプロジェクト」を立ち上げました。現状把握のために行った2015年度手術実績の調査では、受診から手術までの平均期間が骨接合術の場合0.63日で全国的にもトップクラスであることが実証されました。しかし治療のもう一つの柱である合併症管理については、手探り状態が続いていました。そこで総合診療部と折衝を重ね2017年9月から、この骨折で入院中の患者さんのさまざまな内科的な訴えを看護師から直接総合診療部に伝え対応をしてもらうシステムを始めました。従来は手術や外来を終えた主治医(整形外科医)が対応に当たっていましたが、対応が遅くなることもしばしばでした。このシステムのおかげで患者さんのさまざまな変化に対して機敏にそして専門的に対応することができるようになりました。2020年8月からは更に発展させて、持病を持つ大腿骨近位部骨折患者さんは術後翌日に総合診療部へ転科するシステムが立ち上がりました。大腿骨近位部骨折手術後の患者さんは、持病を専門的に診てもらうと同時にリハビリを継続することができるようになりました。また大腿骨近位部骨折の原因となる骨粗鬆症治療が行われていない患者さんに対して、骨粗鬆症評価と治療を開始するシステムも導入しました。これまで主治医によって対応がまちまちだった骨粗鬆症への介入がシステム化されました。更に薬剤師と協力しポリファーマシー(害のある多剤服用)の是正を行う試みも始まっています。

 飯塚病院では、今後増え続ける大腿骨近位部骨折症例に対する備えが形となりつつあります。整形外科は専門分野に専念しつつより数多くの症例の治療に当たり、手術後は内科に軸足を置いて創管理とリハビリテーションの指示を行うーこのように高齢者の大腿骨近位部骨折患者に対して整形外科・総合診療部・リハビリテーション部・薬剤部が連携して治療に当たるのは全国的にも珍しく、先進的なシステムと言えます。今後もさまざまなサービスをこのシステムに組み込み「大腿骨近位部骨折多職種連携アプローチプロジェクト」を発展させていく予定です。

文責:整形外科 稲員 千穂

このページの一番上へ