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感染症TOPICS

第5回:感染症科の日常業務 at a glance

感染症科部長 的野多加志

 感染症科は、2019年4月に新設された診療科です。 コロナ禍で徐々に認知度が上がっていますが、日本ではまだまだ専門家の少ない領域です。地域への貢献や行政に対する政策提言をはじめ、対外的な活動も行っていますが、今回は主に院内における感染症科の役割について、ご紹介致します。




1.感染症コンサルテーション

 日本感染症学会は、専門医の医師像として、「感染症法の3類から5類感染症、一般的感染症は 主としてコンサルテーションを受けて担当医を指導・支援する役割を担うもの」と掲げています。すなわち、各診療科から感染症に関わるコンサルトを受け、問題を解決することが私たちの主な業務です。感染症の診断で重要なことは、感染臓器を特定し、原因微生物を同定することです。私たちは、幅広い病歴聴取、全身の身体診察、適切な検査を実施し、病態の解明に努めています。また、日々患者さんの状態を把握し、病状が快方に向かうまで責任を持って診療しています。2020年には588件のコンサルトを頂いていますが、今後、年間1,000件程度を目標にしていますので、是非ともお気軽にご相談ください。

2.血液培養陽性患者支援

 連日、血液培養陽性患者の初期治療を確認し、菌名ならびに薬剤感受性結果判明までフォローを行うとともに、必要に応じて担当医に助言を行っています(2020年血液培養陽性症例:1,049例)。

 また、感染症科の支援によって 患者アウトカムが向上するというエビデンスに基づき、黄色ブドウ 球菌血症ならびにカンジダ血症の際は併診の打診をさせて頂いております。

3.抗菌薬適正使用支援

 専従薬剤師とともに、カルバペネム系抗菌薬、ピペラシリン/タゾバクタム、セフェピム、フルオロキノロン系抗菌薬の前向きモニタリングと長期使用に対する支援・助言を行っています。また、経口第3世代セファロスポリン系抗菌薬の削減を目指すとともに、感冒や下痢症に対する抗菌薬使用状況のモニタリングを行っています。皆様のご協力もあり、私が当院に赴任した2017年と比較し、2年間で年間抗菌薬購入費用は3千万円ほど削減できています(2017年:\69,401,199 →2019年:\38,589,827)。

4.感染管理

 感染管理認定看護師、微生物検査技師と協力し、院内の感染対策を行っています。耐性菌や流行疾患(インフルエンザ等)の発生状況に関する週1回のミーティングを行うとともに、院内や地域でのアウトブレイクの対策を行っています。菌株の遺伝子検査(POT法)も導入し、院内水平伝播の疫学調査も行っています。

5.外来診療

 ワクチン・トラベル外来では、輸入ワクチンも幅広く取りそろえ、ワクチンならびに海外渡航前のあらゆる相談に応じる専門外来を行っています。熊本や大分など県外からの受診者も多く、2020年の外来延べ患者数は1,761名と、感染症科としては九州トップクラスです。その他、感染症に関わる保険診療も行っています。

6.入院診療

HIV、結核、新型コロナウイルス感染症など専門的知識を必要とする感染症疾患を主治医として担当しています。

臨床、教育、研究分野において九州を牽引できる日本トップクラスの感染症科を目指しています。患者さんのために、そして地域のために尽力致しますので、感染症診療でお困りの際はお気軽にご相談ください。

TEL 0948-22-3800(代表)