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感染症TOPICS

第3回:脾摘後ワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン接種に関する当科での取り組み!

感染症科 帆足公佑

脾摘後ワクチン

 脾臓は、感染症に対する免疫、特に液性免疫による防御機構として重要です。肺炎球菌を代表とする莢膜被包菌が持っている莢膜は、細胞性免疫から逃れる性質を持つため、莢膜被包菌感染症に対しては脾臓が担っているT細胞非依存性の液性免疫が重要になってきます。よって、脾臓を摘出する事で重症の莢膜被包菌感染症に進展するリスクが高くなりますので注意が必要です。ワクチンで予防出来る感染症(Vaccine Preventable Disease:以下、VPD)としての莢膜被包菌には、肺炎球菌、髄膜炎菌、ヘモフィルス・インフルエンザbがあります。脾臓摘出後の患者さんに対して、欧米ではこれら3菌種のVPD関連ワクチンに加え、毎年の季節性インフルエンザワクチンの接種が推奨されています。莢膜被包菌における脾臓摘出後重症感染症の死亡率は非常に高く、脾臓を摘出する際には、適切な時期に適切なワクチン接種をする事が望まれます。そのため、国内でも外科と感染症科が協力し、脾臓摘出後ワクチン接種の取り組みを行っている施設もあります。脾摘後の患者さんで、上記ワクチン接種が未実施の方がいらっしゃいましたら、是非とも感染症科にご相談ください。

B型肝炎ウイルスワクチン

 B型肝炎ウイルス(以下、HBV)は、当院の勤務要件としてワクチン接種と抗体獲得が求められています。そのため、医療従事者、特に血液を扱う職務を行う方のワクチンと思われがちですが、国際的にはユニバーサルワクチン、つまり全てのヒトが接種すべきワクチンとして扱われています。B型肝炎は非常に感染性が高く、感染者の極微量の血液、体液の経皮・経粘膜的曝露でも感染が成立してしまうことがあり、環境生存性も高く非常に厄介な微生物です。その特性から、コンタクトスポーツなど日常的な曝露でも感染し得ますし、性感染症としての側面も持っています。透析患者さんを含む医療曝露頻度の高い方もやはり感染リスクが高く、一般の方々にも広く接種が推奨されます。

 米国では1991年よりHBV撲滅の取り組みとして、①産道感染予防のため全妊婦のHBs抗原測定と新生児の曝露後処置、②乳幼児の定期接種、③小児・思春期児のワクチンキャッチアップ、④リスクの高い成人のワクチンキャッチアップを開始し、著明な新規感染者の減少を実現しています。また、日本でも2016年から小児定期接種が開始されていますので、開始前の世代にはワクチンを接種する、いわゆるキャッチアップを行うことが重要です。

 総じて、当科では特に図1の対象者への各種ワクチン接種を推奨しています。