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感染症TOPICS

第1回:シングリックス(帯状疱疹ワクチン)が導入されました!

感染症科 土方貴道

 「感染症TOPICS」では子供だけでなく、大人にも大切なワクチンの話から感染症科の取り組みまで様々な情報を提供させていただきますので、是非ともご活用ください。

 第1回目のテーマは、『帯状疱疹ワクチン』の話題です。



帯状疱疹とは

 帯状疱疹は、水痘ウイルスが神経に潜伏し、加齢や免疫抑制状態となった際に再活性化、神経走行に沿って出現する神経性疼痛を伴う水疱性病変です。85歳までに2人に1人が発症し1)、帯状疱疹の5-30%の方で皮疹の消失後も疼痛が残存する(帯状疱疹後神経痛)2)と言われており、鎮痛薬を飲み続けている方もいます。また、眼部帯状疱疹や顔面神経麻痺(ラムゼイ・ハント症候群)、無菌性髄膜炎/脳炎の原因にもなりうるため、是非とも予防したい疾患です。また、1度帯状疱疹を発症すると、その後8年間で6.2%の方が再発すると報告されております3)

帯状疱疹ワクチン『シングリックス』発売

 これまでは、小児の水痘ワクチンとして使われている「乾燥弱毒生水痘ワクチン(生ワクチン)」が帯状疱疹のワクチンとして使用されておりました。2020年1月より日本でも新たに不活化帯状疱疹ワクチン『シングリックス』が発売となり、3月より当院でも導入されました。この『シングリックス』は従来のワクチンと比較し、効果が高く、帯状疱疹ならびに帯状疱疹合併症の発症を防ぐことができます。CDC(米国疾病予防センター)では、帯状疱疹のワクチンとして50歳以上のすべての方への接種を推奨しています。さらに、免疫不全者や高齢の方は帯状疱疹に罹患するリスクが高くなり、合併症の発生率も有意に上がるため4)、積極的にワクチンを接種することをお薦めします。1回20,000円かつ2回接種(2ヶ月空けて)とやや高価であることが難点ですが、希望される患者さんや親族の方がいらっしゃいましたら、是非とも感染症科にご相談ください。

 さて、話題は変わりますが、徐々に気温も下がり、これからインフルエンザシーズンとなります。今年は新型コロナウイルス感染症も流行していますので、患者さんには是非インフルエンザワクチンの接種をご推奨ください。

 今年の飯塚市では、飯塚市在住の方に対して、インフルエンザワクチン接種に当たり1回2000円の助成を設けております。対象者は、高校生相当までの年齢の方、妊婦の方、65歳未満で特定の基礎疾患のある方です。指定の医療機関(飯塚市ホームページ参照)で適応されますので、患者さんにご紹介ください。また、65歳以上の方は従来通り無料です。なお、当院でも各診療科でインフルエンザワクチンの接種は可能ですが、本助成金は使用できませんのでご注意ください(年齢に関わらず1回4,950円です)。

    【参考文献】
  • 1)Infect Dis Clin Noerth Am. 2017;31:811-826.
  • 2)BMJ Open. 2014;4:e004833.
  • 3)Mayo Clin Proc. 2011;86:88-93.
  • 4)Mayo Clin Proc. 2007;82:1341.