顧問あいさつ
当科は2019年4月、100年以上の歴史ある飯塚病院に新設されました。感染症は誰しもが罹患する病気ですが、日本では残念ながら専門家が不足しています。一般的に医療では、悪性腫瘍、心疾患、脳血管疾患など主にヒトの体内で起こる変化を対象としています。一方で、感染症は、病原微生物がヒトに侵入することよって生じる疾病です。即ち、外敵を意識して診療するスキルが必要です。ヒトの往来が活発となり、グローバル化が進む時代において、デング熱、麻疹、新型コロナウイルス感染症など海外から持ち込まれた感染症の国内流行も起きています。そのため、私たちには、国内のみならず、今や世界中の感染症に対応する能力も求められています。また、ここ10年間で新たにヒトに病原性を獲得した微生物の75%が動物もしくは動物産品由来と言われています。よって、ヒトのみならず、動物や環境を含めた包括的な視野を持ち、常に感染症の流行状況を把握しておく必要もあります。
私たちは、微生物検査の知識や手技を持ち合わせていますが、感染巣を取り除くというような手技は持ち合わせていません。感染症の診断で重要なことは、感染している臓器を特定し、原因となる微生物を同定することです。そのうえで、微生物ごとに適切な治療薬を選択しています。感染症の診断と治療を行う上で、私たちは、幅広い問診、全身の診察、適切な検査を実施し、絡んだ糸をほどくように緻密に、かつ治癒への道を照らすように最善の医療を心がけています。
飯塚病院感染症科では、年齢や臓器に関わらず、あらゆる感染症を診るとともに、専門的な予防策の提案を行っています。また、世界基準の医療を提供し、何よりも感染症でお困りの患者さんの病状が快方に向かうよう責任を持って診療しています。院内のみならず、地域への貢献、専門医の育成、世界への発信・・・生まれ育った地元に少しでも還元できるよう努めて参ります。