当科について

部長よりご挨拶

井上博喜

 皆様、こんにちは。
 飯塚病院漢方診療科は平成4年4月に診療を開始し、30年以上にわたり漢方診療を続けて参りました。当科は漢方エキス製剤だけでなく、本来の漢方薬である煎じ薬も用いて、外来診療から入院診療まで行っている日本でも稀な診療部門です。検査や西洋医学的な治療を併用し、必要に応じて飯塚病院の他科と協力して、東西の医療を融和させた診療を提供しています。
 これまでの経験を活かし、漢方の有効性や有用性を全国に発信し、医学部、薬学部、看護学部などで教育や実習を担当するとともに、研修医や他科の医師への教育も行っています。また多くの漢方専門医、指導医を育成し全国各地に送り出しています。
 しかし漢方治療がどのような時に適応になるのか分からない、と思う方もいらっしゃるでしょう。西洋医学はどちらかというと分析的で「過剰なものを取り去る」ことに長けた医療と思います。一方、漢方医学は病的状態の人のバランスを整えて健康な方にシフトさせたり、自然治癒力や気力など「不足するものを補ったり」するという西洋医学とは異なる視点を持った医療と考えています。また心身一如という言葉があるように、心の問題と身体の問題を分けて考えず全人的な医療を体現していると思います。そのため漢方治療の適応は、①西洋医学的に原因・病態が不明な場合、②原因が明らかでも治療が確立していない場合、③標準的な治療で効果が不十分な場合、④副作用などで標準的な治療が困難な場合、⑤冷え性・虚弱・老齢など自然治癒力が低下している場合などが挙げられると思います。しかし、あまり難しく考えずに、冷え、倦怠感、食欲不振、加齢に伴う症状、起立性調節障害、COVID-19罹患後症状、月経痛、更年期障害、腰痛、関節痛、神経痛、頭痛など検査で異常がなくても症状がある方は、気軽にご相談ください。

 飯塚病院漢方診療科は、患者さんの治療促進、生活の質向上を最優先に考え、一人ひとりに合った治療を提供できるよう全力を尽くして参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

飯塚病院漢方診療科 部長
井上博喜