飯塚病院 外科

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肝胆膵領域における腹腔鏡下手術

外科統括部長 梶山 潔

 私が研修医の頃(1990年頃)、九州大学第二外科(現消化器・総合外科)に初めて腹腔鏡下胆嚢摘出術が導入されました。本邦でも早いほうでした。消化器外科の分野では、この25年で腹腔鏡下手術が急速に普及してきています。現在では、適応症例に限りがあるものの、腹腔鏡下胃切除術、腹腔鏡下大腸切除術も標準術式になりつつあります。腹腔鏡下手術の最大のメリットは、やはり「患者さんに優しい=低侵襲」つまり患者さんへの負担が少ないということです。具体的には「創が小さい」「術後の痛みが少ない」「術後の回復が早い」などです。また、外科医の立場からは、内視鏡での映像を見ながらの手術ですので拡大視効果があり、細かな解剖が容易に把握できますし、その画面を手術にかかわるスタッフ全員で共有することができます。一方、デメリットとしては、開腹に比べると手術時間が長いこと、触覚がわかりにくいこと、カメラで見ているので死角があり観察が十分できない場合があること、大出血に対する処置が困難なことなどであり、総じて開腹手術よりも高度な手術手技が要求されます。このメリットとデメリットを踏まえ、安全に手術ができるか根治性が損なわれないか、特にこの2点を十分に考慮し、腹腔鏡下手術の適応を判断します。

 近年では、様々な手術器具の進歩とともに、肝胆膵の領域にも徐々に腹腔鏡下手術が導入されつつありますが、まだ「黎明期」とも言えます。当科でも、以前から良性疾患である巨大肝嚢胞に対しては、腹腔鏡下肝嚢胞開窓術を行ってきましたが、一昨年から肝臓癌に対しても徐々に腹腔鏡下肝切除術を導入しています。開腹手術では、大きな切開創(図1)を要しますが、完全腹腔鏡下手術では、5~12㎜の孔を4~6ヶ所くらいで行います(図2)。また、小切開を伴う用手補助下腹腔鏡下肝切除術なども行なっています。

 前述のごとく安全性と根治性という点から、腹腔鏡下肝切除術の適応は、原則的には、腫瘍の大きさが大体3㎝以下、腫瘍の部位が肝の辺縁(S2、3、4、5、6、7、8)としています(図3)。しかしながら、腫瘍径が3cmを超えても、肝外側区域に限局した腫瘍なら腹腔鏡下手術が可能な場合もあります。

 実際の手術は、まず臍または臍周囲に腹腔鏡を挿入します。腹腔内をカメラで観察し、腫瘍の状態、位置などを確認し(図4)、切除可能と判断すると、様々なエネルギーデバイス(手術器具)を用い、肝実質を切離します(図5、6)。切除肝は、臍部の傷を少し広げたり、恥骨上に小切開を加え体外に摘出します。これまでの経験からは、患者さんの術後の回復は明らかに良好です。開腹の場合、合併症がないと術後14~21日くらいで退院となりますが、腹腔鏡下手術では、7~10日くらいでの退院となります。

 腹腔鏡下肝切除術は、患者さんへの負担がかなり軽減され、確かに患者さんに優しい手術ですが、開腹手術以上に高度な技術が必要とされます。肝胆膵領域では、世界的にも腹腔鏡下手術の標準化が進んでいるところですが、腹腔鏡下手術と言えども開腹手術の延長線上にあることは十分認識しなくてはなりません。よって現時点では開腹手術が適切に行えることが、腹腔鏡下手術を行う最低条件だと考えます。腹腔鏡下手術の最中にトラブルがあれば、すぐに開腹に移行して、適切に処置を行うためです。開腹手術の経験が十分でなく腹腔鏡手術を行うことは、リスクが高くなり大事故にもつながりかねません。当科は、日本肝胆膵外科学会の高度技能修練施設A(全国111施設、福岡県5施設[当院、九大病院、久留米大学病院、九州医療センター、新古賀病院)であり、日本内視鏡外科学会技術認定医も2名在籍しています。また年間約100例の肝切除を行っており、九州有数の実績を持ちます。

 筑豊地域に適切で安全な肝胆膵外科治療を提供できるよう今後も研鑽を重ねていきたいと思います。地域の先生方におかれましては、このような疾患でお困りの患者さんがいらっしゃいましたら、いつでも当科へご相談いただければ幸いです。

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