飯塚病院 心臓血管外科・大動脈疾患治療センター

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主な病気・治療について

大動脈疾患

 大動脈瘤は胸部あるいは腹部の大動脈がコブのように膨らんで、時には破裂してしまう疾患です。高齢化、生活習慣の西欧化に伴い罹患頻度は上昇し、特に男性においては死因の10位にランクするまでとなっています。
 古くは司馬 遼太郎氏、アインシュタイン氏から最近では藤田 まこと氏、米倉 斉加年氏と大動脈破裂は時折、著名人の突然死の一因として新聞を賑わしてきました。

 最大の特徴は破裂するまではほぼ無症状であることで、まれに声がかれる、飲み込みにくい、お腹に拍動性の腫瘤があるなどの症状から病院を受診、動脈瘤の診断に至ることもありますが、90%以上の症例は検診での胸写異常、他疾患でのエコー、CT検査の際に偶然見つかり診断されているのが現状です。
 破裂する確率は瘤の形状、サイズによって異なりますが、一旦破裂してしまうと痛みなどの激烈な症状を呈し、腹部でも50%、胸部に至っては80%以上の死亡率となってしまいます。
 治療法としては、手術以外で確実な破裂の予防は困難であり、大まかには腹部で約4.5~5cm、胸部で5.5~6cmに拡大した場合、全身状態を検査した上で、可能であれば手術治療を行います。もちろん破裂の危険性は瘤の形態にもよるため、非常に歪な形状の場合、比較的小さくても手術をおすすめすることもあります。
 手術方法としては開胸、開腹を行い、直接瘤を切除し、人工血管に置換する方法(人工血管置換術)と鼠径部からアプローチして開胸、開腹をせずにステントというバネの付いた人工血管を折りたたんで挿入し、瘤の部分に内挿することで瘤を血流から隔離し、破裂を防ぐ方法(大動脈ステント内挿術)があります。
 従来は図1のように瘤を人工血管に置き換える手術を行ってきました。
 しかし、高齢、合併疾患によっては手術リスクの高い症例もあり、より低侵襲化、手術リスクの軽減化を図って開発されたのが大動脈瘤ステント内挿術です。
 ステントグラフトとは人工血管と、拡張力を持った金属骨格の組み合わせです(図2)。このステントをシースと呼ばれる細長い筒に込め、鼠径部の動脈から挿入、瘤の部分をまたいで挿入し(図3)、瘤を血圧から隔離し、破裂を防ぐ治療法です。

図1、図2、図3

 当科では2006年から治療を開始し、現在、350例を突破しています。また、腹部、胸部ともステントグラフト認定施設資格、指導医資格を取得し、実施にあたっています。
 ステント内挿術は従来の手術創(図4(a))に比べて小切開で(図4(b))、手術侵襲を軽減するため、リスクの高い患者さんでも比較的安全に治療を行え、多くの症例では翌日には食事、歩行が可能です。しかし周術期合併症はまだゼロではなく、更なる改善のため研鑽を重ねています。

図4(a)、(b)

 ステント治療を開始して以来、ステント治療についてのお尋ねを多数いただきましたが解剖学的に実施困難な症例もありました。特に動脈瘤が非常に大きくなった症例では、[1]瘤に圧迫されて周囲の血管の蛇行が著しくなり(図5(a))[2]瘤が広範に進展して大事な分枝が巻き込まれて(図5(b))ステント治療困難となる率が増加します。

図5(a)、(b)

 もちろん、大動脈ステント内挿術の方が手術自体は低侵襲で、回復も早いのですが、適応できる瘤に解剖学的な制約があることや退院後長期間では追加治療がやや多いことといった問題点もあり、個々の症例によって全身状態、瘤の形状を詳しく調べた上で患者さんとも相談して治療法を選択しています。

 開胸開腹下の人工血管置換術に関しても術中合併症の軽減を目指して、術式の改良を重ねております。特に若年者で大きな合併疾患がない症例の場合は20年30年先を考え、長期遠隔成績が判明、良好な耐久性の確立している人工血管置換術をお勧めする場合もあります。
 いずれにしろ可能な選択肢をすべて患者さんにご提示の上、相談・検討、そしてその後に治療方針を決定するように努めております。

 大動脈瘤は早期発見、破裂前の治療介入こそが治療成績、予後向上の最大の鍵であり、当科では、大動脈疾患治療センターを併設し、重点分野として治療に当たっています。
 大動脈疾患治療センターの最大の特徴は、HOTLINEにより迅速に、的確に受診予約、緊急対応を行うことです。
 HOTLINEは平日昼間は専門性の高い当科の心臓大動脈疾患トリアージナース、夜間休日は当科当直医がダイレクトに対応させていただきます。

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