飯塚病院TOP > 医療関係者の皆さまへ > 筑豊小児科医会会報 インデックス > 筑豊小児科医会会報 Vol.38
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| 日 時 | : | 2010年2月18日(木) | |||||||||||
| 場 所 | : | 田川メディカルセンター | |||||||||||
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| 日 時 | : | 2010年3月18日(木) |
| 日 時 | : | 2010年4月15日(木) |
●特別講演の要約
「インフルエンザ感染における炎症制御」
感染症治療は、微生物そのものに対する抗微生物療法だけでなく、微生物の生物活性の制御、感染に伴う宿主の過剰な免疫反応を制御するという3つの視点が大事で、総合的な観点から「きれいに治す」という概念が必要である。
新型インフルエンザ(正確にはパンデミックインフルエンザA(H1N1)2009)の感染率は2.0程度(感染率とは、1人の患者が何人に感染させるかという意味で、2.0とは1人の患者が2人に感染させるということ)で、季節型は1.0。致死率は全世界で0.4%程度(季節型は0.1%)だが、日本の死亡率は低い。海外では、50歳未満にも重症例や死亡例が多くあり、死亡例の30%は細菌性肺炎の合併がみられた。下気道から肺にかけての親和性が高く、若年者においても重篤な呼吸不全を伴う「ウイルス肺炎」の報告が相次いでおり、これは過剰な免疫反応連鎖(サイトカインストーム)が原因と言われている。また脳症やARDSは起こりうるものの、MOF(多臓器不全)は起こりにくい。病原性と抗原性は、A(H1N1)1918のいわゆるスペインかぜと類似している。毒性は、H5N1>>A(H1N1)1918=A(H1N1)2009>季節型H3(香港型)>季節型H1(ソ連型)で、特にH5N1はA(H1N1)2009の100倍の強毒性があると言われている。
昨年からの新型の感染(第1波)がパンデミックに起こったものの、抗体保有率はまだまだ低く、季節型には及ぶものではなく、第2波、3波が起こりえるのは必至である。従来の注射によるワクチン免疫による抗体は、IgG抗体が主役で、感染後の生体内ウイルスの増殖を抑制することにより、重篤化を抑制する。粘膜ワクチン(粘膜免疫)の主役はIgAで、感染そのものを防御する抗体と言われ、今後の普及が待ち望まれる。
治療に関しては、ターゲットとして、インフルエンザウイルス、細菌の2次感染、過剰な免疫反応の3つの視点を考慮に入れた治療が必要である。現存の抗ウイルス薬(タミフル、リレンザ)に加え、新たな治療薬が次々に登場予定だが、ウイルスそのものを狙った治療だけでは耐性が生じ、ウイルスとのいたちごっこである。宿主の過剰な免疫反応をコントロールする治療もまた、「きれいに治す」といった観点からも大事になってくる。
重症化の病態とは、すなわち宿主の過剰な免疫反応が関与している。IFNなどの炎症性サイトカインや酸化作用のあるフリーラジカルによる組織障害が進行し、重症化を来たす。よって抗ウイルス療法だけでなく、過剰な免疫を抑制する治療法が必要になってくる。そこでクローズアップされたのがエリスロマイシンやクラリスロマイシンなどの14員環マクロライド系薬剤(MLDS)である。MLDSは、古くて新しい薬剤(古い=抗菌活性、新しい=抗炎症作用)と言われている。呼吸器内科領域では、MLDSはびまん性汎細気管支炎(DPB)に対しては劇的な効果を示しており、その効果は抗菌活性に基づくものではなく、抗炎症作用によるものと報告されている。宿主への抗炎症、抗酸化作用としてサイトカインの分泌制御、細胞の増殖能・分化・貪食能の活性化、活性酸素生成の抑制などの効果がある。このような観点から、インフルエンザによる過剰な免疫反応の抑制効果を狙って、MLDSの使用が推奨されるようになってきた。MLDSは感染早期のIL-12を誘導することによってIFN生成を促し、ウイルスを除去することで発症を抑制する効果が期待されている。
インフルエンザに合併する肺炎で最も多いのは肺炎球菌性肺炎である。菌種別では、肺炎球菌>>黄色ブドウ球菌>インフルエンザ菌。肺炎球菌に対するMLDSの有効性も証明されている。このように過剰な免疫反応の抑制と細菌の2次感染の予防に関してもMLDSを抗ウイルス剤(タミフル、リレンザ)と併用することは意義のあることで、インフルエンザ感染の早期には、抗ウイルス効果があり、後期には免疫抑制効果がある。よってMLDSはできるだけ早く投与したほうがよいが、感染後しばらく経過してから投与しても免疫抑制効果があり、臨床的にも有用である。実際には、インフルエンザ感染時は抗ウイルス剤と併用で、気道感染合併ある場合は、たとえばCAM(クラリス)を15mg/kg分3で7~14日間程度、気道感染の合併ない時は、CAM10mg/kg分2を5日間程度投与するとよい。
インフルエンザの病態と治療に関しては、以下の3つの視点 1.インフルエンザウイルスそのものによるもの 2.細菌の2次感染によるもの 3.過剰な免疫反応によるもの を考えること。病態に合わせて的確に治療することが重要である。ウイルスだけがターゲットでなく、重症化防止のためにも、早期の抗ウイルス剤投与とMLDSの併用は臨床的有用性が高い。インフルエンザのみならず、感染した際は、ウイルスだけを見ていてはだめ。ウイルス、宿主、細菌、環境を総合的にコントロールすることが、「きれいに治す」コツである。
MLDSは古くて新しい薬、すなわち抗微生物剤から総合感染症治療薬に進化した薬である。
| 2010年2月 | 2010年3月 | ||
|---|---|---|---|
| 2月2日(火) | 栗原小児科内科クリニック 栗原 潔 |
3月1日(月) | 飯塚市立病院 牟田 広実 |
| 2月3日(水) | こどもクリニックもりた 森田 潤 |
3月4日(木) | あざかみこどもクリニック 阿座上 才紀 |
| 2月4日(木) | あざかみこどもクリニック 阿座上 才紀 |
3月9日(火) | 細川小児科内科医院 細川 清 |
| 2月5日(金) | 平野医院 平野 義人 |
3月10日(水) | 宮田病院 甲斐丈士 |
| 2月8日(月) | 飯塚市立病院 牟田 広実 |
3月12日(金) | 尾上小児科医院 尾上 嘉浩 |
| 2月9日(火) | 津川診療所 津川 信 |
3月15日(月) | 飯塚市立病院 牟田 広実 |
| 2月10日(水) | 飯塚市立病院 牟田 広実 |
3月16日(火) | 栗原小児科内科クリニック 栗原 潔 |
| 2月12日(金) | 尾上小児科医院 尾上 嘉浩 |
3月17日(水) | くわの内科小児科医院 桑野 瑞恵 |
| 2月16日(火) | 荒木小児科 荒木 久昭 |
3月19日(金) | 田中医院 田中祥視 |
| 2月17日(水) | やまのファミリークリニック 山野 秀文 |
3月23日(火) | 大庭小児科 大庭 利道 |
| 2月18日(木) | 津川診療所 津川 信 |
3月24日(水) | やまのファミリークリニック 山野 秀文 |
| 2月22日(月) | 飯塚市立病院 牟田 広実 |
3月25日(木) | 津川診療所 津川 信 |
| 2月23日(火) | 岩谷クリニック 郭 泳珀 |
3月26日(金) | たなかのぶお小児科医院 田中信夫 |
| 2月25日(木) | くわの内科小児科医院 桑野 瑞恵 |
3月30日(火) | ささきこどもクリニック 佐々木宏和 |
| 2月26日(金) | 大庭小児科 大庭 利道 |
3月31日(水) | ひじい小児科・アレルギー科 クリニック 肘井孝之 |
| ● 入院患者数 | 130人 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ● 外来患者数 | 2,465人 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ● 救命救急センター受診者数 | 1,684人 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ● 新生児センター入院患者数 | 26 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ● 分娩件数 | 65件 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ● 紹介件数 | 97件 [1]こどもクリニックもりた(10人) [2]栗原小児科内科クリニック(6人)、弥永内科小児科医院(6人) [4]飯塚休日夜間急患センター(5人)、たなかのぶお小児科(5人)、 |
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| ● 主要疾患数 |
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[武谷茂先生の第3回スキルミクスセミナー]
3回目(11月25日開催)
初期印象診断とは、第一印象、直感力といった出会いの際の視診や聴診上の診断であり、ぱっと見た時のAppearanceの評価がトリアージの第一関門である。
小児の疾患には、病態特有の顔つきがある。初期診断として最も大事なのは、子どもの顔、表情をしっかり観察すること(顔つき診断)である。慣れてくると、顔つきだけで、疾患や重症度を判断しうる。顔に見られる兆候として、表情、発疹、貧血、出血、紅潮、浮腫、黄疸、チアノーゼ(先天性心疾患)、眼位異常(脳腫瘍)など、疾患に特異的な顔つきがある。眼瞼の浮腫がある時は、ネフローゼか急性糸球体腎炎(PSAGN)を疑う必要性があるが、PSAGNの急性期の浮腫は、表情に乏しく、能面様の浮腫を呈しやすい。顔面神経麻痺は泣いた時に、左右差が明瞭にて一目瞭然である。特有の顔つきとしては、先天異常(染色体異常、奇形症候群など)、川崎病、SSSS、破傷風(痙笑)、網膜芽細胞腫(猫の目)で、一発診断が付くこともある。ショックや脱水、意識障害、痙攣の顔つきも重症度を物語っていることが分かる。また心身症や虐待など、顔つきで心理状態を察することも可能である。
ものを言わない乳児の場合、どのような泣き声か、聞くことも診断の手助けになる。乳児の病的な嘔吐の際、鑑別に上がるのが腸重積と髄膜炎。腸重積の場合は、火が付いたように泣くといった表現をするが、概ね腹痛による啼泣は激しく、苦悶状顔貌を呈しているのが特徴。逆に、髄膜炎の場合、頭痛による泣き声は弱々しく連続して泣くのが特徴。咳のしかた、咳の声質も鑑別のポイントとなる。百日咳(スタッカート、レプレーゼ)、クループ症候群(犬吠様咳嗽)、喘息発作、麻疹カタル期の咳、ネコ鳴き症候群なども特徴がある。
便(便秘、下痢、下血、血便)や吐物(かぼちゃ様、コーヒー残渣様、胆汁性、気道分泌液など)、尿(血尿、ミオグロビン尿など)は、自分の目で見ることにより、診断に有用な多くの情報(クリニカルパール)がある。血便で代表的な腸重積の便も発症経過時間により、便性が異なることがある。発症から早い時間で大量の血便を認めたなら、5筒性の場合がある。経過時間が長い場合は、便の中に、腸管粘膜が混入していることもある。
| 1. | 伝染病や危急症への対応が早くなる。 |
| 2. | 患者さんの苦痛を早く緩和できる。 |
| 3. | 特殊疾患児の専門医への移送が早くなる。 |
| 4. | 不要な検査や処置を省き経費を節約できる。 |
| 5. | 医療過誤に早く気づき、トラブルが少なくなる。 |
| 6. | 看護師らが仕事に充実感をもつようになる。 |
| 7. | 経験が浅い医師の見落としを防止する。 |
自分の印象診断事例を単なる経験とせず、印象診断で何がわかり、どう検証したか、印象診断結果は医療でどう役に立ったかをフィードバックしていくことで、ひとつひとつが本ものの自分の印象診断経験となっていく。さらに、それらを仲間に伝え議論していくことで、教材的価値が生まれ、その蓄積によって臨床診断能力が向上していく。
以上で、武谷茂先生による3回連続の「スキルミクスセミナー」を要約した連載を終了いたします。小児科医局員はじめ病棟・救急外来・外来看護師、研修医、内科医(家庭医)など、毎回30名近くの熱心な受講者がありました。受講者の満足度も非常に高く、武谷先生の熱い思いがビンビンと伝わってきた講演でした。この場をお借りしまして、心よりお礼申し上げます。
昨年流行した新型インフルエンザの第1波は終息し、現在は小康状態のようです。第2波、3波に向けての対策が必要ですが、今回のペディシェアは、2009年に流行した小児における新型インフルエンザ、正確にはパンデミックインフルエンザA(H1N1)2009について検証してみたいと思います。
例年小児においては、冬季に流行する4大ウイルスがあります。
10月から11月にかけてはノロウイルス(嘔吐下痢症)、12月に入るとRSウイルス(細気管支炎)、年が明けて1月からインフルエンザの流行期、そして3月頃よりロタウイルス(嘔吐下痢症)といった定例の流行のパターンがあります。4大ウイルス、それぞれのウイルスには最盛期があり、一つのウイルスがピークのときは、他のウイルスは活動を遠慮してしまうようです。同時流行というのは少なく、一つのウイルスが終息してから、他のウイルスが勢いを増すといった、ウイルス界にも勢力図があるのではないかと思うくらいに、流行がはっきりしているのが小児のウイルス感染症の特徴です。
今年は異変でした。新型インフルエンザが、4月以降日本に出現して以来、暑い時期の夏場にも流行がみられ、10月~11月が最盛期で、12月に入ってから終息傾向(第1波の終息?)を見せています。そして今は、RSウイルスが勢い付いています。RSが終息すると、例年なら次は季節型インフルエンザの登場が予測されます。新型の第2波がいつ来るのか、季節型と混在するのか、年明けの動向が注目されます。
幸い“新型”インフルエンザとは言え、弱毒型で、マスコミが大騒ぎした割には、全国的にみて重症例や死亡例は小児領域では少なく、タミフル・リレンザといった抗ウイルス薬が著効し、軽症で経過した症例が大多数でした。もちろん、うがいや手洗い、マスク、学級閉鎖等の予防・衛生の徹底、広報の効果もあったかと思いますが、やはり実際に罹患後の軽快具合をみると、抗ウイルス薬の効果は”てきめん”と判断してよいかと思います。抗ウイルス薬がなかった時代と比較すると死亡率や入院率、重症化率など激減し、医学の進歩が人類を救ったと言っても過言ではないと思います。
2009.11.18 日本小児科学会主催『新型インフルエンザを迎え撃つ』の講演の要旨です。(岡山大学小児科教授 森島恒雄、静岡県立こども病院 植田育也氏 講演から)
新型インフルエンザの重症化や死亡例の病態としては、急性脳症、重症肺炎(ARDS)、急性心筋炎、hypovolemic shockが挙げられる。
重症肺炎について季節型Flu脳症は1~2歳がピークであるのに対し、今期流行の新型Flu脳症の報告では7~8歳児にピークがある。季節型はけいれん重積による脳症が多いが、新型はけいれん自体が少なく、「熱せん妄」が初発症状として多い。季節型脳症の死亡率は97/98シーズンでは30%あったが、06/07では脳症死亡率は8%までに改善されてきている。新型での脳症死亡率も同程度(5~10%)であろう。
脳症について重症肺炎は5~6歳がピークで、発熱して1日以内に急激に呼吸困難を来たし、ウイルス性肺炎と診断されるケースが多いのが特徴。急速に悪化するが、一方回復も早いのが特徴。新型ウイルスは、Ⅱ型肺胞上皮細胞で増殖し、サーファクタント生成を阻害したり、ウイルスの増殖に伴い、サイトカイン、ケモカインが強い炎症反応を惹起し、血管内皮細胞を障害しやすいといわれている。病理学的には、鋳型気管支炎(plastic Bronchitis)の病理像を呈し、臨床的には、粘液栓を形成し、無気肺や縦隔気腫を合併するケースが多いのが特徴。
インフルエンザ脳症、肺炎、心筋炎といった最初から臓器別の縦割り治療を行うのではなく、大事なことは、呼吸・循環といったバイタルの初期評価と迅速な支持療法による初期対応こそが、予後を左右するといっても過言ではない。感染症に伴うSIRS(全身性炎症反応症候群)、いわゆる広義の"Sepsis(セプシス)”という概念が必要となってくる。多臓器障害(MOF)が進行すれば"Severe Sepsis"、さらに進んで循環不全(低血圧)を伴うと"Septic Shock"となる。”Sepsis”は、敗血症(細菌感染による血液培養陽性)のものだけをさすのではなく、ウイルス感染も含めて広義に考えるべきである。救急の基本は、常にA(気道):早期に気道確保し、リスクの回避を!→B(呼吸):早期に十分な酸素化を!→C(循環):ショックの早期認知と介入を!→D(意識):けいれんのコントロールを!→E(環境):高体温を避ける!これらのABCDEの強力な支持療法によって2次性の低酸素血症を回避できる。
ショックの認知は何と言ってもバイタルサイン(心拍数、呼吸数、末梢冷感、血圧、体温)のチェック。低血圧の前に頻脈・多呼吸・CRT(Capillary Refill Time)の延長といったSepsisの重要兆候を見逃すな。ショックの早期介入は、急速初期輸液。乳酸アシドーシスは補正の対象ではない!(アシドーシスは”治すもの”ではなく、“治るもの”である。) インフルエンザによる肺炎、脳症、心筋炎であれ何であれ、Septic shockの病態では、常に急速初期輸液(生食20ml/kg)が優先されるべきで、まずは循環状態の改善を図ることが早期介入の最大のポイントである。