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筑豊小児科医会会報

筑豊小児科医会会報 Vol.37 2010年1月

筑豊小児科医会のご案内

第202回
日 時 2010年1月28日(木)18:30~  ※講演会終了後、意見交換会があります。
場 所 のがみプレジデントホテル
 
一般演題:(19:00~19:20)
「除菌療法(PAC療法)が奏功したヘリコバクターピロリ感染症の10歳女児例」
「2009年飯塚病院小児科診療報告」
 飯塚病院小児科部長 岩元 二郎
特別講演:(19:20~)
「インフルエンザ感染における炎症制御」
九州保健福祉大学薬学部感染治療学教授 佐藤 圭創先生
第203回 (第24回筑豊周産期懇話会)
日 時 2010年2月28日(木)
第204回 (平成21年度総会)
日 時 2010年3月18日(木)
 
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小児科医会報告~第201回筑豊小児科医会のまとめ~

●特別講演の要約

「喘息、アトピーをcarry overさせないために、小児科医は何ができるのか?」
(大分大学医学部 地域医療支援・小児科分野担当教授 是松聖悟先生)

○アレルギー疾患

 日本人の3人に1人は何らかのアレルギーを有しているといわれ、小児期発症のアレルギー患者の6割は、成人に達しても寛解状態に至っていないといわれている。アレルギー反応を押さえ込んでいたら、生体はアレルギーを忘れていくため、成人へとキャリーオーバーをさせないためには、小児期のアレルギー疾患の管理は重要である。


○気管支喘息

 喘息死は年間500人程度、思春期から若年成人に多く、ほとんどが突然の窒息で発症する。気道過敏性の増悪因子が罹病期間と受動喫煙で、喘息になってからの期間が長いほど、気道過敏性は亢進する。また家庭内に喫煙者がいると、いない人と比較したら20倍の気道過敏性があると言われている。喘息ガイドラインに準じた標準的な喘息治療でコントロールできない症例も存在する。IL-8の高い好中球性炎症がある場合はエリスロマイシンの少量長期投与が有効である。また特に思春期の母子関係に代表される心身症としての喘息も難治性の背景として重要である。テオフィリン関連てんかんは半身性で局所性のけいれんが多いが、静脈性血管のスパスムスによるといわれている。


○アトピー性皮膚炎

 かゆみがある、掻くという行為そのものが、アトピーの治りを阻害する最大の要因である。アトピーで、慢性的に目を掻いていると、網膜剥離を起こしやすい。スキンケアが最も重要で、保湿剤は迷わず、たっぷり塗ることが大事である。食物アレルギーに伴うアトピーに関しては、食物除去試験、誘発試験を通して抗原を確定していく。食事療法も大事だが、あまりに厳格にしすぎると、微量元素欠乏症を来たしやすい。
小児期のアレルギー疾患児を、成人期に達するまで長引かせないためには、受動喫煙を含めた家庭内の環境整備、栄養管理や自律神経、親子関係などに着目しながらの患者指導が必要である。


○新型インフルエンザについて

 軽症の喘息児が新型インフルエンザに罹患したら重症化しやすいとの報告がある。

pandemicAH1N1ウイルスは、Ⅱ型肺胞上皮細胞に関与し、サーファクタント産生を阻害する。粘液栓を形成しやすくなるため無気肺となり、鋳型気管支炎(plastic bronchitis)の胸部X線像を呈するケースが多い。粘液栓を作りやすい抗ヒスタミン剤や鎮咳剤、去痰剤吸入は使用しない方がよい。


●一般演題のまとめ

○飯塚病院小児科における新型インフルエンザ入院例 (全例迅速検査でA陽性、PCRで新型と確定)

◆9月上旬より11月末までに入院となった44症例のまとめを示します。
 男/女 29例/15例、年齢 5.8±3.6歳(6歳時が最多で10例)
 有熱期間3.3±1.4日 入院期間5.4±2.0日
 基礎疾患として喘息あり:20例(45%)、基礎疾患なし:18例(41%)
 合併症の割合
  肺炎19例/喘息12例/気管支炎3例/上気道炎3例/意識障害10例/熱性けいれん4例/ 異常言動3例/脱水2例
 検査結果(WBC&CRP)
 WBC(/ul) 9098±4128, CRP(mg/dl) 2.6±2.3
 抗インフルエンザ薬使用例 43例/44例
 抗菌剤使用なし:14例(33%)
 抗菌剤内服併用:10例(23%)
 抗菌薬静注併用:5例(12%)
 抗菌薬内服と静注共に併用:4例(33%)


○重症肺炎症例の検討

 発熱を来たしてから24時間以内に、来院時SpO2 90%以下で呼吸障害と胸部X線上での肺炎像を呈した3例(3歳女児、6歳女児、2歳男児)を経験したが、ARDSのような最重症の肺炎に進展するケースはなく、比較的早期に軽快した。今回の新型インフルエンザの特徴として、全国における症例報告からもわかるように、季節型と異なり、短時間のうち(24時間以内)に肺炎になりやすいことが判明した。病理学的には、新型インフルエンザ(2009 AH1N1pandemic)は、肺胞Ⅱ型上皮細胞に感染を引き起こし、サーファクタントの産生が低下することにより、肺胞が虚脱し、さらに喀啖の喀出困難から酸素化が障害されてSpO2の低下を来たす。粘液栓による気管支閉塞による無気肺(plastic bronchitis)の像を呈する所見が多い。トリインフルエンザ(H5N1)も同様の感染パターンを呈するが、H1N1よりは強毒性で重症化しやすいと言われている。


(文責:岩元 二郎)
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地域連携ささえあい小児診療

2010年1月 2010年2月
1月6日(水) ひじい小児科・アレルギー科
クリニック 肘井 孝之
2月2日(火) 栗原小児科内科クリニック
栗原 潔
1月7日(木) あざかみこどもクリニック
阿座上 才紀
2月3日(水) こどもクリニックもりた
森田 潤
1月8日(金) 尾上小児科医院
尾上 嘉浩
2月4日(木) あざかみこどもクリニック
阿座上 才紀
1月12日(火) 細川小児科内科医院
細川 清
2月5日(金) 平野医院
平野 義人
1月13日(水) 宮田病院
甲斐 丈士
2月8日(月) 飯塚市立病院
  牟田 広実
1月14日(木) 津川診療所
津川 信
2月9日(火) 津川診療所
津川 信
1月18日(月) 飯塚市立病院
牟田 広実
2月10日(水) 飯塚市立病院
牟田 広実
1月19日(火) 栗原小児科内科クリニック
栗原 潔
2月12日(金) 尾上小児科医院
尾上 嘉浩
1月20日(水) やまのファミリークリニック
山野 秀文
2月16日(火) 荒木小児科
荒木 久昭
1月22日(金) たなかのぶお小児科医院
田中 信夫
2月17日(水) やまのファミリークリニック
山野 秀文
1月25日(月) 飯塚市立病院
牟田 広実
2月18日(木) 津川診療所
津川 信
1月26日(火) 大庭小児科
大庭 利道
2月22日(月) 飯塚市立病院
牟田 広実
1月27日(水) ささきこどもクリニック
佐々木 宏和
2月23日(火) 岩谷クリニック
郭 泳珀
    2月24日(水) くわの内科小児科医院
桑野 瑞恵
    2月26日(金) 大庭小児科
大庭 利道
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飯塚病院月間診療のまとめ

《2009年11月》
● 入院患者数 123人
● 外来患者数 3,075人
● 救命救急センター受診者数 2,404人
● 新生児センター入院患者数 13
● 分娩件数 50件
● 紹介件数 105件
[1]青山医院(7人)、ささきこどもクリニック(7人
[3]こどもクリニックもりた(5
[4]飯塚休日夜間急患センター(4)、宮嶋外科内科医院(4人)、
● 主要疾患数
退院患者数 108人  
肺炎・気管支炎 49   低出生体重児 8   喘息 7
痙攣及びてんかん 6   新生児呼吸障害・心血管障害 4   急性上気道感染症 3
急性胃腸炎 1   高ビリルビン血症及び黄疸 4   腸重積・腸閉塞 1
新生児感染症 1   その他 27      
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今月のTOPICS

 [武谷茂先生の第2回スキルミクスセミナー]

2回目(11月25日開催)

「お腹を診る、急性腹症への対応」~すべての子のお腹を診る、急性腹症の4疾患~

 今回のセミナー用のスライドに多数の症例の顔写真を供覧したが、すべて武谷先生ご自身が治療に関わった患者の写真である。医学教育のために撮影・使用のお許しを頂いたものばかりであり、患者とその家族への感謝の意を込められてから講義がスタートした。

○自分の目で便、吐物を見る。

 実際に患者の便を、自分の目で見ることによって、ある程度診断(視診)が付くこともある。乳児の軟便(母乳と粉ミルクの違い)、便秘の便の形(習慣性便秘と急性の便秘の違い)、ロタウイルス感染症の白色水様下痢便、腸重積症の鮮血便、メッケル憩室からの下血、胃十二指腸潰瘍のコールタール状便、胆道閉鎖症の白色便など。吐物なら、食物残渣がどうか、胆汁性か(腸捻転、絞扼性イレウス)、血性か(胃粘膜障害、鼻出血誤飲、消化性潰瘍など)、気道分泌液(喘息発作の粘稠啖)などを確認する。

○お腹を上手に診る要領

 すべての子のお腹を診る習慣を付ける。コミュニケーションを良くして触診する。暖かい手でやさしく触れる。便の性状を考えながら触診する。女の子には「お腹を診察させてね」と頼む。秘境“オムツの中”、“パンツの中”も見る。患者側が持参した便や吐物を見る。

○小児プライマリ・ケアの急性腹症

 ~4つの代表疾患;便秘症、腸重積症、急性虫垂炎、アレルギー性紫斑病~

1 便秘症
 

 軽い病気で便秘を伴うと重症に見える。休日の運動不足がたたり、休み明けの月曜日は便秘の子ども(マンデー便秘症)が多い。乳児は3日便秘になりやすい。便塊だと思っても、排便後にもう一度診る。気になる便秘(甲状腺機能低下症、神経性便秘、ヒルシュスプルング病、習慣性宿便など器質性および機能性便秘)を確認する。

2 腸重積症
 

 乳幼児の急な不機嫌、激しい啼泣の第一の原因で、小児救急の代表疾患である。ホームケアのコツはイチジク浣腸。疑ったら必ず浣腸すること。そして血便が出たら、オムツに時間を記しておくとよい。経時的に見ていくと、長時間経過した例では、剥離した小腸粘膜が血便と一緒に出てくることがある。小腸粘膜がみられた場合は、手術になることもあり、外科コンサルトが必要。整復困難例は5筒性(回腸・回腸・結腸型など)が多いが、年長児の腸重積で反復する場合は、器質性疾患(悪性リンパ腫、腸管重複症、メッケル憩室など)が存在することがある。空気整復はバリウム整復に比べ、穿孔した際の合併症のリスクが低い。整復過程で、X線上、先進部の腫瘤が大きく、回盲弁を抜けない時は、5筒性か器質性のものが予想され手術も検討すること。回盲弁を越えて、空気が小腸内を駆け上がる際は、透視下のX線上、上4分の1の小腸まで空気が入れば完全に整復したと判断してよい。ロタウイルス腸炎で腸重積を合併した場合は、白色下痢便の中に鮮血便が混在する。

3 急性虫垂炎
    幼児以降の小児の急性腹症の代表疾患である急性虫垂炎は、白か黒か、または灰色か、初期診断が困難なことが多く、誤診で裁判沙汰になるケースもしばしばである。腹痛の場合は常に念頭に入れておくべき疾患である。発症から2日(48時間)経ったら、およそ6割は穿孔するといわれている。虫垂炎の原因として糞石が有名だが、乳児期の虫垂は盲腸に開口している部位が広く漏斗状になっていて糞石は閉塞しにくいが、成長するにつれ、開口部が細く狭くなる。このため糞石がたまると虫垂の内腔が閉塞してしまい、虫垂炎を起こしやすい。
4 アレルギー性紫斑病(HSP)
 

 HSPは、出血斑(紫斑)・腹痛・関節痛が3主徴として知られているが、紫斑のない時期に、腹痛が強い場合、診断が困難なことが多い。虫垂炎と誤診されるケースもある。腹痛の鑑別としてHSPを疑うポイントは、便の確認(血便、下血、便鮮血はないか)と局所性の浮腫(眼瞼、口唇、陰嚢などクインケ浮腫)がないかどうかを入念にチェックすることである。その他腹痛・嘔吐を来たす疾患として、女児で右上腹部痛、白色便をみたら総胆管拡張症。激しい側腹部痛、血尿をみたら尿管結石。下腹部痛があれば鼠径ヘルニア嵌頓か急性陰嚢症(精巣炎、精巣捻転症)を疑い、必ずパンツの中を確認すること。周期性嘔吐症の背景には、腸回転異常症(中腸軸捻転)もあり。乳児期なら呑気症、ヒルシュスプルング病、肥厚生幽門狭窄症などを鑑別にあげる。

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ぺディシェアメール

 今回は小児科一般外来で経験した小児のヘリコバクターピロリ感染症の症例です。
ピロリ菌感染症は、慢性胃炎、消化性潰瘍、胃癌のみならず、難治性の鉄欠乏性貧血や慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の原因とも言われており、”除菌”治療の是非がクローズアップされています。家族内感染で、保護者の強い希望で除菌治療を行った2例を紹介します。


■症例1  10歳女児
■プロブレムリスト
#1.慢性的な腹痛、食欲不振、体重増加不良
#2.父方祖母と母方祖母がピロリ陽性の胃潰瘍の既往あり
#3.他院での検査で、便ピロリ抗原陽性
2009年9月14日

上記プロブレムを有し、本精査目的にて紹介受診。
血液検査で、CBC,生化学所見特記すべき所見なし。血清ピロリ抗体は陽性。

10月7日

胃内視鏡検査施行(消化器内科Dr.による)胃前庭部を中心に胃粘膜は顆粒状を呈し、いわゆる鳥肌状の胃炎(萎縮性胃炎) 胃粘膜生検で、ピロリ菌陽性。

10月19日~25日

家族の希望あり、除菌療法(PAC療法)施行
P:PPI(プロトンポンプ阻害剤), A:AMPC(アモキシシリン), C:CAM(クラリスロマイシン)オメプラゾール(オメプラール1mg/kg)、アモキシシリン(ワイドシリン50mg/kg)、クラリスロマイシン(クラリス20mg/kg)の3剤を分2で7日間内服した。内服中明らかな副作用なし。

12月9日

内服後およそ1ヶ月経過した時点で、除菌判定のため尿素呼気試験を実施した。
0.5‰未満にて、除菌成功と判断した。
PAC療法前後で、臨床症状(腹痛、食欲不振)は明らかに改善した。

 

 

■症例2  6歳女児

 

#1.腹部症状(腹痛、下痢、食欲不振など)は全くなし。
#2.家族性(両親と兄)のピロリ感染症
(母親と兄は1回目の除菌療法で成功、父親は4回目で除菌成功)
2009年8月19日

本児の場合、消化器症状はないものの、ピロリ菌の濃厚な家族内感染があるため、家族が検査を希望して自主来院した。血液検査で、CBC,生化学は特記すべき所見なし。血清ピロリ抗体は陽性。
尿素呼気試験で、53.4‰と陽性。

11月4日

胃内視鏡検査施行(消化器内科Dr.による)
胃前庭部~体部に萎縮性の変化。肉眼的にはピロリ感染陽性の所見。胃粘膜生検はなし。

11月6日~12日

家族の強い希望もあり、除菌療法(PAC療法)施行。(症例1と同じ用法・用量) 
内服中、明らかな副作用はなし。

12月11日

除菌判定のため、尿素呼気試験施行。
結果は、”56.5‰”(正常は2.5未満)にて、除菌失敗と判断した。

 

【アセスメント】
        
症例1.2とも家族との濃厚な接触による家族内の水平感染と思われる。
症例1は腹部症状があり、症例2は、腹部症状がないケースであったが、内視鏡検査は、両方ともピロリ菌特有の慢性胃炎の所見。除菌療法は、症例1.は成功、2.は失敗と明暗を分けた。 症例2.はCAMからメトロニダゾールに変え、PAM療法を行う予定。

 

Take Home Message

疫学的には、小児のピロリ菌感染率は10%前後。
ピロリ菌診断は、非侵襲的検査として便中抗原と13C尿素呼気試験の有用性が高いが、血清ピロリ抗体(IgG)の診断的意義は弱い。(但し感度は低いが特異度は高い)gold standardは、直接の内視鏡検査による組織診断、培養、迅速ウレアーゼテストがある。スクリーニングおよび除菌判定として小児では、非侵襲性の尿素呼気試験が優れている。

内視鏡による肉眼的臨床像は、鳥肌状の慢性胃炎が特徴的だが、病理学的には結節性のリンパ濾胞過形成による。
除菌治療の対象としては、年齢的には5歳以上としているが、保険上は消化性潰瘍と確定診断が付いているものしか適応とならないので注意が必要。
小児の除菌成功率は80%程度。失敗の原因はCAM耐性による。失敗例はCAMに変えてメトロニダゾール(10~20mg/kg)に変更(PAM療法)するとよい。

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