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望診(ぼうしん)の一つに舌診(ぜつしん)があります。「舌を出して下さい」と言ったら、「下ですか?」という方がかつておられましたが、「いえ、ベロです。しかも1枚目を」と答えるようにしています。
舌診のポイントは多いのですが、色や形、苔(こけ)の性状などで、様々なことがわかります。例を挙げると、苔の性状で胃腸の機能を診ることが出来ます。例えば苔が黄色くなっていると、胃の辺りに炎症(熱)があるかもしれないというようなことが想像されます。
60歳代の女性が腰痛と下肢の冷えで来られました。腰痛、下肢の冷え・しびれ、頻尿などを訴える場合は八味地黄丸(はちみじおうがん)がよく効くのですが、人によっては胃もたれすることがあります。中に含まれる地黄が胃にもたれると考えられています。余談ですが、漢方薬で「黄」色がつく生薬は、不快な作用を呈することがあり、私は「黄色は注意」と呼んでいます。
ところで、舌を診ると苔の生え方がわずかで、どうやら胃腸の新陳代謝が低下しているようです。八味地黄丸に胃腸の機能を高める人参湯(にんじんとう)を併せて処方したところ、胃もたれすることなく、腰痛や冷えは軽減しました。たまにブラシで、苔を落とす方がいますが、漢方医泣かせといえます。
読売新聞福岡県版(2008.08.11付) |